第14話 二次試験開始!①
二次試験でも俺が舞花と共に試験を受けられるわけではない。そもそも妹と意識が共有されるってどんなSF作品だよって話でもある。
一次面接合格通知を受け取ったその日からシーズンカードの猛勉強が再開された。試験内容が筆記と記載されている点から対戦の練度ではなく、基本的な対戦やカードの知識に重点を置いて教えることにした。ユーチューブにはいくつかカードの説明動画を上げていたので俺が仕事で教えられない時は俺や他のわかりやすい解説をしている動画を進めた。
あっという間に日々は過ぎていき、試験日当日となった。
「…………で」
(…………)
「なんでまた兄貴が私の中にいるのよ!」
(いやー、お兄ちゃんにもわからないな!)
日曜日の朝、俺の意識は再び妹と一体になっていた。
「こ、これなら私が必死になって学ぶ必要はなかったんじゃ……」
(いつでも俺がこうなるとは限らないし、シズドルの一員になればシーズンカードの知識は必須になるから無駄にはなってないと思うぞ)
「そ、それもそうね……」
先週の日曜日は普通に俺の意識は俺本体の体にちゃんと存在していた。相変わらずこの事象が起きる原因はわからない。今回は体を動かす権利は妹のままだった。
「こんな兄貴でもいないよりはマシか……」
それは誉め言葉として受け取ってもよろしいのでしょうか……
「キモ兄貴」
どうやら舞花と同化していると内心まで読み取られてしまうらしい。今後は思考にも気を付けないといけないようだ。
「行くわよ」
起き上がり、身支度を整えた舞花は家を出て試験会場を目指した。
〇
(奇跡だな……)
会場にいた試験官に説明をして断られたときはもうダメかと思った。しかし、なぜか突然態度を変えて会場へと招き入れた。
(試験時間は変えてもらえないのか)
遅刻しても試験を受けさせてもらえるだけマシだとしよう。
「よし、やるわよ!」
舞花は席に座るとペンを持って早速問題を解き始めた。
「第一問 シーズンカード最初の手札の枚数を記載せよ」
「七枚ね!」
「第二問 シーズンカードの初期ライフはいくつか」
「五ね!」
「第三門 シーズンカードで特殊な条件を除き、勝利する条件を述べよ」
「相手のライフを0にする、相手フィールドのキャラクターカードが0になる、相手の最初のドロー時にデッキ枚数が0枚になるね」
これまでの勉強の成果が伴い、妹はサクサクと問題を解いていく。心の中のお兄ちゃんが口出す必要は今のところなさそうだった。
(しかし……本当にシーズンカードの問題しかないな)
紙面に広がる問題に一通り目を通してみたがすべてがシーズンカードに関する問題しかなかった。最初のページの内容はシーズンカードの基礎中の基礎問題ばかりである。アイドルの選抜試験だからなのかあまりにも簡単すぎる。十年シーズンカードをやっていた俺が教えた妹ならこの程度朝飯前だろう。
「第七問 前衛に設置したキャラクターは通常時に後衛を攻撃することができる〇か×」
「×ね」
合っている。特殊な効果を持つカードを除いて攻撃出来るキャラクターは前衛に設置したキャラクターのみ。そして前衛に設置したキャラクターは相手の前衛のキャラクターにだけ攻撃可能である。
「第八問 一ターンに一枚しか使うことができないカードの種類を答えよ」
「トランプカードね」
トランプカード、通称TRは一ターンに一枚しか使うことができないかわりに強力な効果を持っている。具体的なカードの効果でいうと山札から五枚ドローしたり、相手の後衛に設置されているカードを前衛と入れ替えたり出来る。
ちなみにカードの種類は大きく分けて三種類。フィールドに出すことが可能なキャラクターカード。一ターンに一度しか使えない代わりに強力な効果を持つトランプカード。トランプカードほど強力な効果はない代わりに一ターンに何枚でも使えるコモンカードがある。
「第十四問 カードの左上に記載されている数字について説明せよ」
「自分の経過した番よりも記載されている数字が低いカードのみ、自身のターンに使用することができる。」
通称コストと呼ばれているものであり、舞花の回答で問題ない。シーズンカードではターンが経過するにつれて強力な効果を持つカードを出すことができる。
「第一五問 シーズンカードにおけるアペンドについて説明せよ」
「自分の番に一度、プレイヤーはアペンドターンを宣言できる。 宣言した時のみ自身のフィールドにいるキャラクターカードの下側に手札から好きな枚数キャラクターカードをつける事ができる。 次の自分の最初の番に前のアペンドターンにつけたカードを全てトラッシュに送る……こんなところかしら」
妹は自然とトラッシュという単語を使っていたがこれはキャラクターが倒されたり、コモンやトランプ等の使ったカードを置く場所のことを指している。今まで触れていなかったカードゲームの用語を自然に使いこなせるのは流石現役高校生である……これは昔から不思議なんだけど勉強や仕事で覚えないといけないことは覚えるのに時間がかかるけど好きなものを覚えるときはなぜかすぐに頭に入ってくるんだよな。
(はっ……もしかして舞花もシーズンカードを好きになってくれたのか?)
「うっさい、糞兄貴。気が散る! ……アイドルになる為に覚えただけよ!」
俺にしか聞こえないような小さな声で反論していた。理由はどうあれ、お兄ちゃんは共通の話題を持つことができて嬉しいよ……
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