「傍観俱楽部」

伊賀ヒロシ

第1話 プロローグ 

「お前、本当に気持ち悪いな。」


身体に何度も感じる鈍痛が脳内細胞を鈍らせる。

軽いものもあれば体の内部まで響き渡るようなものまで。

でもそれもいつもの事。時間が過ぎれば解決する。


___寧ろ、心の中ではいつも思っている。


(お前らより俺は殴られ慣れているんだ!絶対に殴られるだけなら俺の方が耐えられるんだ!傷みの分からない馬鹿どもめ!)


自分を囲む奴らの顔は本当に楽しそうだ。

・・・大勢でやるのがそんなに面白いのか。

この臆病者ども。本当にダサい奴らめ。


(心の中だけは、こっちが強者になっている。)


「おい、チクったら更に倍だからな!」


そう言われ続けて3年耐えた。

叩かれた所に色を塗れば全身その色で埋め尽くされるはず。

金粉で塗りつくせば間違いなく呼吸困難で死んでるだろうな。


____


あいつらの笑い声が遠ざかっていく。

結局一人では何も出来ない。

集団でしか何も出来ない奴ら。

一緒にフォークダンスでも踊ってろ、と思いながら頭の中では何度も同じ言葉を奴らに投げかけている俺がいる。


(お前一人が相手だったら一捻りだからな。)


と、心では叫んでいるが、きっと相手が一人でも打ちのめされるのは間違いない。

現実逃避の世界ではチャンピオンだが現実世界ではそうもいかない。


__思うのは自由だから。俺の思考は最強なんだ___


自分にとって長くて辛い日々がやっと終わる。

高校を卒業する時が目の前までやって来た。

そうだ、お前らとはこれでおさらばなんだよ。

そして、そんな状況に見て見ぬ振りした家族ともお別れだ。

二度と会う事もないし、戻ってくるつもりもない。


___俺は東京に出て人生を180度変えてやるんだ___


昭和51年生まれ。広瀬壮介、生まれ変わって人生を謳歌したいと思います。

そう心に誓って茨城から出てきた18の俺・・・のはずだった・・・。





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