温泉とキャンプが好きな優花は神獣がいる異世界で運命の人を探します!?

花月夜れん

神獣のいる異世界

第1話 温泉と神獣

 今日も一日いい汗かいた。これならアレにつかれば最高に気持ちいいだろう。

 ふ、ふふふふ。よぶわよ! よぶわよ!!


「温泉召喚!!」


 私のスキル、「温泉召喚」。これ、私の知ってる温泉をよび出せちゃうのよね。

 まあ、よび出す際、すこーし困った事が起きるのだけれど。

 パタパタと暴れる小さな黒い獣を抱っこしながら温泉へと入っていく。このサイズなら多少暴れても抱っこはしていられる。


「いいよ! ソラ」


 あっちを向いて待っていてくれた銀色の髪の男に声をかけた。


「あぁ」


 うーん、やっぱり1日の〆はこれよね。


「あったまるー」


 働いてる時も好きだったから、休みの日なんかに時間があれば行っていた温泉。今は自分の好きな時によび出せちゃう。

 一緒に温まる仲間と楽しむ最高のひと時。

 もふもふの動物や爬虫類みたいな動物、植物を背負ったような動物、そんなふしぎな色々が温泉を堪能してる。さっきまで真っ黒だった小さな獣も汚れが落ちたようだ。ふわふわの毛皮の色はきれいな薄茶色になった。

 ――ここには、好きになった人をわざと奪う人、友達のふりして嫌な事してくる人、罪を擦り付けてくる人達はいない。次々迫ってくる締め切りや息のつまる仕事もなぁぁぁい!!


「はぁぁぁ、温泉最高っ!!」


 どうせ戻れないなら、ここで温泉スローライフ楽しんじゃおうかな。

 ちらりと銀色の髪の男の方を見る。彼はとても優しくて頼りになる。この世界で出会った人。彼ならもしかして、あのお願いも叶えてくれるかもしれない。

 いやいや、条件ぴったりなのでって、失礼だよね。あー、でもなぁ。


「ユウカ、倒れてないか?」


 後ろ姿のソラから声をかけられる。すぐに駆けつけてこれる距離だけどこちらを見ないようにずっと向こうを見てる。


「大丈夫だよ」

「そうか。ゆっくり休めよ」


 私はちょうどいい温かさのお湯に肩までつかる。


「ありがとう」


 彼に届くように返事をした。

 私がゆっくり温泉につかれるのは彼のおかげなのだ。


「あぁ」


 簡単な返事だったけど、いいなぁって思った。彼といるとホッとする。

 うん。やっぱり私ここにいたい。彼の横にいたいな――。


 それにしても、本当なんでここだったんだろう。やっぱり向こうでは無理だったのかな。

 一緒に温泉に入っているふわふわの動物の一匹に手をのばし撫でる。地球には存在しない彼らは、――神獣。

 一匹を撫でるとわれもわれもと他の子も突撃してきた。


「可愛いなぁ。もう」


 ……普通の社会人の私が、どうしてこんなところに飛ばされたのか。それは少し前にさかのぼるの。

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