第7話 尿中β2ミクログロブリンについて
先日、外来に来ていた女性患者。
「母が二言目には『私が産んでやったんだ』みたいな事を言うのよ」
なるほど、そういう考え方もあるわけか。
とりあえずアドバイスをしておこう。
「それ、正確には『楽しい事をしていたら赤ん坊が出来ちまった』という事じゃないんですか?」
件の女性。
「そうよね! 今度から母にはそう言い返してやるわ」
なんでも母親が18歳の時に産んだ子供らしい。
さて、他の医師の外来患者を引き継ぐと謎の処方や検査がされている事がある。
今回は尿中β2ミクログロブリン(以下、尿中β2MG)だ。
尿中β2MG?
何それ?
耳にした事はあるが、正確には「何の事やら?」状態だ。
オレ、ただの脳外科医だからね。
「でも総診外来やってるじゃん」と非難されるかもしれない。
でもね、皆が自分の興味だけ追及しているから仕方なく隙間患者を引き受けているだけだし。
隙間患者の押し付け合いはやめようよ。
さて、β2MGは大部分が近位尿細管で吸収され、尿中にはほとんど検出されない。
逆にこれが検出される場合には近位尿細管の障害が疑われる。
この変化は血清Creや尿タンパクよりも鋭敏なのだそうだ。
この検査が有効となる疾患として、以下のものがある。
・薬剤性腎障害:アミノグリコシド、NSAIDsなど
・代謝性疾患:糖尿病、高尿酸血症
・自己免疫性疾患:シェーグレン、サルコイドーシス
・腎疾患:腎盂腎炎、間質性腎炎
・金属中毒:カドミウム、水銀
一方、高血圧による腎障害の場合、糸球体の方が近位尿細管よりも先にダメージを受けるので、早期検出には別の検査の方が有効。
・尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)(スポット尿)による微量アルブミン量の測定(30~300mg/gCr)
・eGFRと血清シスタチンCを併用して腎機能低下の進行を評価。
さらに高血圧性腎障害が進行すれば近位尿細管の評価も必要になる。
・尿中β2MGや尿中NAG(N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ)を測定して尿細管障害の有無を確認。
オレもまだまだ理解しているとは言い難い。
今度から腎機能低下の疑われる患者の尿中β2MGやシスタチンCを調べてみるか。
何事も習うより慣れよ、とも言うし。
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