第27話 隠されていた真実

暫く休憩し、アルディにも美緒が回復魔法をかけ、改めて鑑定を行った。

もちろんアルディの同意のもとでだ。


無敵に見える鑑定スキルだが実は結構レジスト出来てしまう。

本人の同意があればかなり深いところまで見られるため、美緒は使用するときは許可を取ることにしていた。


「鑑定」

「……うわ、なんか体の中にたくさん虫がいるみたい」

「……へ、変なこと言わないで!!もう……」


※※※※※


名前:アルディ・リルルフェアリル

種族:エンシャントエルフ

性別:無性(呪縛)

年齢:2010歳・成長阻害(呪縛)

職業:精霊魔術師(81/99)召喚士(23/99)

固有スキル:偽りの言霊※解呪により使用不可

保持スキル:寿命無効・言語変換・奸計※解呪により使用不可

      精霊魔法62/99・召還術12/99・基礎魔法78/99

レベル:75/99

物理:128

俊敏:147

魔力:229

法力:142

器用:102

知能:372

幸運:72


保有ポイント:22061

(呪縛により使用不可)


称号:『コーディネーター』※解呪により弱体化

『創世神の眷属』

『※※※※※※』(呪縛)

状態:『無頼漢』解呪により弱体化

『悪魔付き』※浄化済み

『正直者』(呪縛)


【情報】

アルディは元々別の世界の人間。2000年前創造神ルーダラルダにより召喚される。

無理やり連れてこられたことにより神に反逆、罰としていくつかのカルマを植え付けらた。

生殖行動の不可・生殺与奪権のはく奪・成長阻害。

植え付けられた彼は永遠の命としてこの星の調整のみ許された。


虚無神の眷属である悪魔により精神を歪まされていた。

この世界でのゲームマスター顕現により無頼漢が発動、傍若無人に振舞う。


ゲームマスターの解呪によりメイン称号『コーディネーター』弱体化。その反動でサブ称号『※※※※※※』の権能が上昇中。


創造神リンネにより正直者を付与。



※隔絶解呪により本来の姿に修復可能。



※※※※※



私は鑑定結果を見て居た堪れなくなってしまった。

やっぱりアルディはどう見ても被害者だった。

2000年前も。

そして今現在も。

何より今の私では分からない情報が多すぎる。


うすうす感じていた事だけど、神様はきっとすべてが正しい訳じゃない。

なんていうか絶対多数の正義、みたいに思えてしまう。

そして決して全能ではない。


「ねえアルディ」

「なあに?」


「もう一つの称号って何?」

「はあ。……まあ、見えるよね。うー、でも許可ないと言えないんだよなあ」

「??許可?誰の?」

「ルーダラルダ様」


リンネはじっとアルディの言葉を聞いて……

涙を流す。


「っ!?……リンネ?」

「……さい」

「っ!?」


「ごめんなさい。美緒……ごめんなさい、ごめんなさい……ぐすっ、ごめん、なさい……うああ、うああああああああああああ……」


突然泣き崩れるリンネに、皆が固まってしまっていた。

アルディは上を向き表情を隠していたが……

肩が小刻みに震えていたんだ。


…………



※※※※※



「落ち着いた?」

「……うん」


突然泣き出したリンネとアルディ。

慌てたエルノールが気を利かせてくれて今はギルド本部でもかなり厳重な特別貴賓室に転移してきていた。


何故かエルノールの脳裏に、ここに来るように促されたらしい。

私も初めてきた。

そしてエルノールですらここの存在は秘匿されていた。


何より驚いたのは私の情報にこの部屋の存在が無い事だ。

ゲームマスターである私に秘匿された場所。


きっと何かがある。

そんな予感に私は包まれていた。


「はあ。やっぱりね。……全く。あるじも人が悪すぎだよね」

「主?」


口を開いたアルディがやれやれといった感じで腕を頭の後ろで組んだ。

そして大きなため息一つ。


「ねえ、リンネ。もう良くない?これってそういう事だよ?」


???……話が見えない。

私は突然知らない世界に紛れ込んだような、足元がぐらつくような不安に駆られた。


転移して3か月以上が経過している。

だけど不安はなかった。

全部知っていたから。


でも……アルディの言葉とリンネの態度……

全く見当すらつかない。


恐い。


突然背中にやさしく温かい手が添えられる。

不安が霧散していく。


「あ……」


エルノールがいたわるように、クリアブルーの瞳が私を見つめてくれていた。


「大丈夫です。私が付いています」

「っ!?……うん!」


そうだ。

私は一人じゃない。

エルノールが、リアが、ミネアが、ルルーナが、そしてリンネが。みんながいる。


大丈夫だ。


私は大きく深呼吸をする。

もう先ほどの不安は嘘のように無くなっていた。


「リンネ、教えてくれる?……私は大丈夫だから。ねっ」

「……うん。ごめんね美緒。全部話す。きっと私は許されない。でも美緒は、貴女は聞かなきゃいけない事だ。……ごめんね……美緒」



※※※※※



そして明かされる真実。


私は絶対に許さない。


この世界、いやすべての元凶――――


虚無神ブラグツリー。


私にゲームを与え、お父さんとお母さんを殺した、黒木優斗を―――――

そしてすべての始まりである創世神アークディーツ、双子の兄である黒木大地を本来中立である『ミディエイタ―』(調停者)をそそのかし封印したコイツを。


真の『ゲームマスター』の事を。




そして始まる。

全てを覆す、唯一無二の『ゲームマスター』になるための、本当の物語が。


美緒は決意を固めていく。



※※※※※



私はすべてを知り、リンネとアルディを『隔絶解呪』で彼女たちの真の姿を取り戻していた。

もう彼女たちを縛るカセは存在しない。


そして新たな情報が私の頭に流れ込んでいた。


この場所。

創世神アークディーツと創造神ルーダラルダが虚無神ブラグツリーを欺くために用意した聖域だった。


だからこそ、まだ『不完全な私』でもリンネたちを取り戻せた。


リンネは今15歳くらいの超絶美少女。

スタイルも私より3歳も年下のくせにやばいくらい実っている。

むう。


アルディは悔しいけどメチャクチャイケメンで25歳くらい。


……彼のアレも復活したらしい。

私にちょん切られないように心してほしいものだ。



※※※※※



解呪後も下を向きうつむいたままのリンネを私は見つめた。


「ねえ、リンネはさ……私の事嫌い?」

「っ!?…好きっ……大好きだよっ!……ずっとあなたの頑張る姿見てたもの……でも……私は……そんな美緒に嘘をついていた。……本当の事隠していた……」


私はリンネを抱きしめた。

リンネは体を震わせ、まるで小さな子供の様に不安げな顔で私を見つめる。


「私もリンネが大好き。……そりゃあ、ちょっとはショックだったよ?でもしょうがないじゃん。リンネ、凄く苦しんだんでしょ。呪われていたんでしょ?……そんな状況でも私を導いてくれた。……だからさ、今度こそ本当に約束。協力して?……私絶対にお仕置きしちゃうんだから。ねっ」


「う、あ……美緒……」


「もう、そんな顔しない。無敵の神様でしょ?」


「っ!?……ふふっ。そうだね。私とアルディの『本当の呪縛』を解呪しちゃう今の美緒なら大丈夫だね……隣にいても良いの?」

「あったり前でしょ?私リンネが居ないなら、この世界嫌いになりそう。私の大好きな世界を嫌いにさせないで?だからずっと一緒。私が全部救うんだから」


そんな私たちにエルノールが優しい笑みで想いを告げる。


「美緒さま。私もずっと御傍で貴女に仕えたいのですが…よろしいでしょうか」


私はにっこり微笑んで大きく頷いた。


「私の『憧れ』のエルノールにそんなこと言われると照れちゃうけど……これからもよろしくお願いします。……私、あなたが大好きです。エルノール。ずっと私を助けて」

「っ!?ああ、あああっ!……私は幸せ者です。はい。ずっとお守りいたします」


涙を流し喜ぶエルノールに私は思わず首を傾げた。


「うあ、大げさだよ?エルノールも大好きだし、ザッカートも大好き。リアだってルルーナもミネアも、ロッジノもサンテスも。みーんな大好き。だからみんなで頑張ろうねっ!!」


ぴしりと固まるエルノール。


その様子にアルディがリンネに視線を向けた。


「うわー。えげつなっ!?……リンネ、美緒ちゃんやばいね」

「うん。流石にあれはないよね……エルノール可哀そう。……ところであんたどうするの?これから」

「えっ?僕も一緒じゃないの?この流れ、そういう事だと思ったけど?」


リンネはふっと花がほころぶような笑みを浮かべる。


「さあね。美緒に聞けば?あんたの事、すっごく怒ってたからね」

「ぐうっ、ね、ねえ、リンネ、助けてくれるよね?ねっ、ねっ」

「どうしよっかなー」

「リンネー」


アルディの叫び声に美緒は首をかしげるのであった。

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