勇者のオマケ!?~チートキャラは巻き込まれ召喚された私でした。勇者がグチグチうざいのでパーティー抜けます~

夢・風魔

第1話:勇者パーティーなんか抜けてやる

 うざ……。


「勇者である僕よりも先に敵を倒すなんて、何を考えているんだ!」

「そうよっ。アキラ様の活躍の場を奪うなんて、オマケのくせに生意気よっ」


 勇者()がいつまで経ってもガクブルしているから、埒があかないんでしょ。

 文句言うなら震えてないで動けっての。


「君は勘違いをしているのではないか? 剣が使えて魔法が使えて、回復魔法も使えるとはいえ、君は万能ではなく、器用貧乏なのだぞ?」


 回復魔法だけじゃなくって、支援魔法も一通り使えるけどね。


「そうですわ。なんでもできると思っていたら、大間違いですわよ」

御剣みつるぎくん。君はこの僕――勇者のオマケで召喚されただけに過ぎない。仲間との和を乱さず、大人しく僕を立てることに徹すればいいのだ」


 はぁ……今日だけで何度目よ。ほんっと鬱陶しい。

 元の世界に戻るためとはいえ、こいつらとパーティーを組まされるとか……不幸でしかない。


「聞いているのか! 勇者召喚に巻き込まれて不憫だったから、同じパーティーに入れてやったというのに。まったく、女のクセに出しゃばりめ。彼女らを見習え! つつましく、常に僕の支援に徹している。魅力ある女とは、彼女らのような女のことを言うのだぞ」

「……あ、そ。魅力なくて結構」

「ちょ、ちょっと、その言い方はなんですか!? アキラ様に謝罪なさいっ」

「アキラ様と同郷だからって、調子に乗ってるのよ」

「モンスターに特攻するしか能のない脳筋のクセにっ」


 なんであの三人はあんなのを妄信的に信頼しているんだろう。

 一応、各分野で才能があるヤツって紹介されたんだけどさ。


 私とあの男――佐々間ささまアキラが突然この世界に召喚されてから三カ月。

 この世界を脅かす存在、魔王を倒すために行われた勇者召喚で私たちは召喚された。


 鑑定結果であいつは勇者、私は巻き込まれたオマケ。

 あいつは元々承認欲求の塊みたいな奴だったから、二つ返事で魔王討伐を請け負ったけど――あんた、この三カ月で倒したモンスターって、スライムとゴブリンだけじゃん!

 他は全部私が倒してんだよ。あいつが戦わないから、仕方なく私が戦ってんじゃん!


 あー、やだやだ。もう嫌だ。我慢の限界。


「この僕の――勇者パーティーに居続けたいなら」

「抜ける」

「この僕にしたが――ん?」

「クソみたいなあんたのパーティーなんか、こっちから願い下げなんだよ! 抜けてやる! じゃあねっ」


 言ってやった。あぁ、スッキリした。

 最初からこうしていればよかったんだ。


「な、なんだと! ちょっとかわいい顔をしているからって、調子に乗るのもいい加減にしたまえっ」


 元の世界に戻る方法は、魔王が隠し持つ魔導書に書かれている――なんて国王が言ってたけど、それもなんか怪しいな。


「アキラ様になんてことを!?」


 魔王を倒せないどころか、その居城にすら行ったことがないっていう奴らがなんで魔王が持ってる魔導書の内容を知ってるんだって話。


「一度痛い目に会わないと、わからないようですわね」


 でも召喚魔法があるなら、戻す魔法があったっておかしくない。


「そうね。私たちが分からせてあげようじゃないの」


 きっとどこかにあるはず。

 元の世界――日本に帰る方法が。

 おばーちゃん、待っててね。私、ちゃんと帰るから!


「聞いているのかっ、御剣!!」


 前方から飛来してきたガーゴイルの攻撃を躱し、その後ろから追従してきたもう一匹に向かって跳躍。

 その石頭を足場にしてもう一度跳躍。

 ダンジョンの出口に向かって歩き出す。


 後ろでは女たちの悲鳴と、それよりも大きな声で叫ぶ生徒会長――勇者()アキラの情けなーい悲鳴が聞こえた。


 


********************

新作です。今回はスローライフから離れて冒険物にしてみました。

かわいいではなく、口の悪い女の子が主人公です。

暇つぶしになれば幸いです。

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