華族

 華族制度は明治2年(1869)から昭和22年(1947)に廃止されるまで78年間存続し、日本の上流社会を形成していきました。

 

 江戸時代の公卿(公家)と諸侯(大名)は、版籍奉還により明治時代からは「華族」に名称を改め、公爵・伯爵・侯爵・男爵・子爵の五爵制が定められました。


 華族=超お金持ちというイメージがありますが、彼らはどうやってお金を稼いでいたのか?

 大雑把に言うと、江戸時代に治めていた藩の石高に応じた公債をもらい、それを元手に銀行業、鉄道業、海運業など見込みのありそうな事業に投資して金利を得ることで財をなしていきました。

 悠々自適な金利生活というわけです。

(特に、銀行株券の収益が大きかったようです)

 さらには、政治家や軍の幹部、官僚として働いたり、自ら事業を興してさらに所得を増やす華族もいました。


 都内(大正時代は「東京府」)に豪邸を構え、避暑地には別荘を保有。

 大正4年の調査によれば、華族は928家ありました(公爵17、侯爵37、伯爵100、子爵378、男爵396)

 1家につき雇っている使用人の平均人数は12~13人でした。

 公爵家で使用人を80人以上抱える家もあったようです。


 しかし華族であればどこの家でも裕福だったわけではありません。

 最初に手にした公債額が少ない華族は金利だけでは食べていけず、家財や先祖伝来の家宝を売りさばいても足りずに生活に困窮する家もありました。

 最終的には華族の体面を保てなくなり、爵位返上に至る家が跡を絶たなかったようです。


 上記の華族とは別に、あとから叙爵を受けて華族となる家もありました。

 国家に対して大きな勲功が認められた者に爵位が与えられました。

 財閥系の岩崎、三井、住友など、実業家にも爵位が与えられています。

 これらの財閥系の華族は、叙爵後にお金持ちになったのではなく、その前に事業を成功させてお金持ちになったからこそ爵位が与えられたのだと思います。

 

 ちなみに大正2年の高額所得者ランキングでは上位3分の1を旧大名華族が占めている状況でしたが、財閥華族の台頭により徐々に没落していきます。

 旧華族が新参者の財閥華族・勲功華族を嫌う対立構造も存在したようです。


 ざっくり計算すると、大正時代に爵位を与えられた人は総人口の5万人に1人、家族を含めると5千人に1人ぐらいです。


 成人した華族のための勉学施設としてはじまった華族会館や、イギリスの貴族学校を模範にした学習院を作って、華族は自らの知識を高め子どもを教育し積極的に文明開化を担おうとしていました。


 子どもにはみなお付きの使用人が付いていました。

 女性には女性の使用人。男性には幼少期には女性使用人がつき、生活空間が「奥」から「表」に移されると男性使用人が付きました。

 また、使用人を雇うのは子どもではなくその家の家長だからという考え方に基づき、子どもたちは使用人に対して基本的に礼儀正しく接しなければなりませんでした。(横柄な口のきき方禁止!)


 華族の家庭教育は、華族に教養や品格を持ち合わせることを望んだ華族令に影響されていました。


 武家社会の習慣がまだ残っていて、夫の死亡後に妻が愛人や妾の面倒を見る事もあったようです。

 

 ▼華族の特権で大正浪漫小説と関係ありそうなものは、以下の通りです。

 ・皇族と結婚できる権利(宮中の侍従も華族出身者が多かったようです)

 ・学習院に無試験で入学でき高等科までの進学が保証される

 ・皇族とともに公爵・侯爵は、所定の年齢になると自動的に貴族院の終身議員の地位を保証。

  (議長・副議長ポストに優先的に就任できた。ただ無報酬)

 ・伯・子・男爵も一度議員に選出されると7年間は解散なし。

  (参議院議員と同額の報酬あり)

  ※ただし現役軍人の皇族議員・公侯爵議員は軍人の政治不関与の原則により実際に議員として議事に参加することはなかった)



【参考資料】

 ウィキペディア

 伊藤真希『華族の家庭教育』(file:///C:/Users/cocke/Downloads/hakase041.pdf)


次回は軍人編です!

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