おっさん裏切り者のホームレス魔法少女を拾う 〜裏切り者のホームレス魔法少女の能力【共有】によって勇者となったおっさんは、ダンジョンに巣食う魔王を倒す配信者になってFIREしたいそうです〜
第1話 おっさん、裏切り者のホームレス魔法少女と出会う
おっさん裏切り者のホームレス魔法少女を拾う 〜裏切り者のホームレス魔法少女の能力【共有】によって勇者となったおっさんは、ダンジョンに巣食う魔王を倒す配信者になってFIREしたいそうです〜
マロモカ
第1話 おっさん、裏切り者のホームレス魔法少女と出会う
早くFIREしたい。
「夜風が疲れた体に効くなぁ」
そんな独り言を呟きながら、いつもの散歩コースを歩いている。
すると、目の前に猫が現れた。その猫は一目こちらに目をやると、そのまま歩き出した。
追いかけてみよう。
特に行く当てもないため、猫を追いかけることにした。だが、猫を追いかけるという行為は、四十路のおっさんにとっては重労働と言って差し支えないほど過酷なものであった。
「足と腰が凄く痛い……」
猫を追いかけて、かなり遠くの川沿いの土手道まで来ていた。猫はそのまま坂を下り、橋の下に向かっている。四十路の体力は限界寸前であったが、猫の終着点はもうすぐであると確信し、悲鳴を上げる体にムチを打つ。だが数瞬後、おっさんの苦労は報われることとなった。
「あああ、可愛いいいい!」
橋の下には、猫の家族がいた。
とてもモフりたい。
でも、野良猫を触るのはあまり良くないと聞く。
それに、子猫に近づくと成猫が警戒するかもしれない。
「うーむ……」
倫理と欲望の間で葛藤する。
「おじさん、何してるんですか?」
急に橋の下の暗闇から話しかけられる。
「うぉ!?びっくりした!いえ、私は猫を見ていただけで決してやましい事はしていませんよ神に誓います」
いきなり話しかけられ、パニックと恥ずかしさで早口でまくし立てる。
「猫ですか。可愛いですよね。その子たちはここに住み着いているんですよ」
どうやら怪しい人物だとは思われていないようだった。とても安堵したが、冷静になると、今のこの状況で怪しいのはお互い様なのではという考えに至った。顔を見てみるが、暗くてよく見えなかった。声からして、若い女性であることは分かる。ますます気になってきたため、思い切って聞いてみることにした。
「へぇ、そうなんですね。本当に可愛い猫ちゃんたちですね。あと、因みになのですが、あなたはどちら様ですか?」
「……」
えっ、返答がない。
ヤバい、とても気まずい。
もしかしてナンパと勘違いされたのかもしれない。
マズい、通報されたらどうしよう……
「……ホームレスの魔法少女です」
彼女からの返答があり、再び安堵する。ホームレスならこんな時間にこんな場所にいるのも理解できるし、魔法少女なら変な奴に絡まれても安心である。
ん?ホームレスの魔法少女?
「この橋の下に住んでいます。立ち話もなんですし、そこに椅子があるので使って下さい」
「あっ、お気遣いありがとうございます」
流れるように話をする場を設けられてしまったが、聞きたいことが沢山あったため、そのまま身を任せることにした。少女の家は、段ボールを地面に敷いて領地を示しただけのものであったが、まだ使える椅子や毛布などがあったため、辛うじて生活はできるレベルであった。
「暗くて申し訳ないです。少し事情があって明かりはつけていなくて……」
少女は申し訳なさそうに話す。確かに、この橋の下に来たときも、明かりの一つすら灯していなかった。まあ、色々とあるのだろうと思うことした。とりあえず「お構いなく」と言おうとしたが、少女が続けて決意に満ちた声で言う。
「だけど、おじさんなら大丈夫だと信じました!なので明かりをつけますね!顔を見ても決して大声を出したりしないでくださいね……」
何だか訳アリのようだった。
ホームレス、魔法少女、訳アリ……危ない香りしかしない。
そもそも何で流れに身を任せてしまったのだろうか、今すぐ帰りたい。
しかし、訳アリホームレス魔法少女は、使い古されたランタンに明かりを灯してしまう。
もうどうとでもなれと思い、訳アリホームレス魔法少女の顔を見る。
「えっ!?」
見たことのある顔だった。と言うより、ネットニュースから新聞、駅や交番の張り紙に至るまで、様々な媒体で拡散されている顔であった。長いピンク色の髪にThe魔法少女のような出で立ち、間違いない。
「裏切り者の魔法少女!?」
少し大きな声を出してしまう。
「おじさん、声大きいです。近所の人にバレちゃいますから……」
訳アリホームレス魔法少女からジョブチェンジをした裏切り者のホームレス魔法少女に注意をされるが、大声で叫んでいないだけ感謝してほしい。だが、話している相手が巷で話題の
「大きな声を出してしまったのはすみませんでした。ですが、私はもうお暇させて頂きますね。あなたのことは誰にも言いませんのでご安心ください。それでは」
これでいい。
相手のことは刺激せず、自分は無害アピール。
そしてこのまま一切関わることなく家に帰る。
我ながら完璧な作戦だ。
よし、帰ろ…
手を掴まれた。
「待ってください、もう少しお話しましょうよ!」
「ごめんなさい、無理です、ここで見たことは忘れますので帰らせてください!」
手を振り解こうとするが、力が強くて無理だった。流石魔法少女。
「私が裏切り者の魔法少女って言われるようになったのには、色々と理由があるんです!それを聞いてほしいんですよ!気になりませんか?」
「それ私が聞いても意味なくないですか?あと、その話が本当かどうか調べようがないと思うのですが!」
再び手を振り解こうとする。しかし 、今度は簡単に振りほどくことができた。どうやら力を抜いてくれたようで、少し気になったので表情を確認してみた。
泣いていた……
えっ、泣かせちゃった。
ヤバい、流石に御尋ね者だとしても女の子泣かすのはマズい。
と言うか、相手は裏切り者の魔法少女なのだから、私の命が危ないかもしれない。
ヤバい、マジでヤバいかもしれない。
そんなことを考えていたら、彼女が弱々しい声で話し始めた。
「だって、もうおじさんぐらいしか……私の話を聞いてくれそうな人いないんですよ……」
その表情はとても
こんな顔を年下の女性にされて、話すら聞かずに回れ右できるほどの胆力を菊池裕和は持ち合わせていなかった。たとえ相手が裏切り者の二つ名を冠する魔法少女であったとしても。
逃げたら命が危うく、関わったら何が起こるか分からない、そんなお先真っ暗な二択なら、少なくとも目の前の少女の表情ぐらいは和らげたい。
おっさんは決心する。
「分かりました。私で良ければ話ぐらいならお聞きしますよ」
「本当ですか!ありがとうございます!やっぱりおじさんは良い人だと思ったんですよ!
先程のまでの消え入りそうな表情は何処へやら。満面の笑みに弾むような声色、数瞬前の彼女とはまるで別人のようであった。
そんな彼女を見て、おっさんはやっと自分のとった選択が彼女に誘導されていたことに気がつく。
嵌められた!
そう心で叫んだが、もう後の祭りであった。
「分かりましたから、もう逃げませんから腕を引っ張らないでください!聞きますから、確か貴方が何故裏切り者と呼ばれるようになったかでしたっけ?」
「往生際が良くてよろしい!そうです、私が裏切り者の魔法少女と呼ばれるようになった理由を聞いてほしいんです!まあ、とりあえず座りましょうか」
おっさん裏切り者のホームレス魔法少女を拾う 〜裏切り者のホームレス魔法少女の能力【共有】によって勇者となったおっさんは、ダンジョンに巣食う魔王を倒す配信者になってFIREしたいそうです〜 マロモカ @nyuno1228
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