ネコ代行サービス 〜初日〜


またしても就職難にみまわれて、キスだけがうまいという誤解と戦っているうちに、


あれよあれよという間に、世の中の全ての仕事がAIに奪われてしまい、途方に暮れていた働き盛りの僕は、来る日も来る日も酒浸りの怠惰な日々を送っていた。


怠惰な日々を送れば送るほどAIとの差は開くばかりで、ますます就職が遠のいていくという悪循環を重ねる日々の中で、あるとき僕は“これじゃあイカン”と、ふと目覚め、一念発起して、職業訓練を受け、粘り強い就職活動の末に、『ネコ代行サービス』の職を得ることができた。


この仕事は専門性が強く、ネコっぽい人じゃないとなかなか採用されない仕事だ。


主に、『家ネコ』さんからの依頼に応える。


てっきり僕は、飼い主さんからの依頼が主だと思っていたので、少し意外だった。


仕事内容を大雑把にわかりやすく言うと、例えば、家ネコさんが飼い主さんの相手をするのがめんどくさくなった時なんかに僕を呼び、僕が猫として飼い主さんのお相手をするというシステムで、初めての家ネコさんでも安心してご利用いただける。




🐈  🐈  🐈  🐈




ほとんど教官全員が元ノラという恐ろしく厳しい研修を終え、やっと今日は僕の初仕事の日だ。安きに流れずに高邁な理想を持ってこれからの職務にあたってゆきたい。


やはり少し緊張する。向かう途中で、立ち止まり、空を見上げた。


とてもいい天気で、ネコ代行日和だ。


僕はネコのように伸びをして、また歩き出す。


現地に到着。


シンプルでスタイリッシュな外観の素敵な一戸建てのおうちだ。


きっとおしゃれな家ネコさんが今回のご依頼さんなのだろう。


深呼吸をしてから、チャイムを鳴らす。


しばらくして、飼い主さんが玄関先に出てきた。奥様だ。


「あのー、僕は、これこれこういうものです……」と、研修で習った通りにご挨拶。


それを聞いて、少し顔色を変えた飼い主さんは、いったん家の中へ引っ込んだ。


そして


すぐに


警察のひとが来た。







                    つづく

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