リバイバルコード:生命の再定義

まさか からだ

第1話 身体AI家電の時代

 昼下がり、主人公ルナは自宅のクリーニング機能を活性化させるため、丹田に意識を集中させた。吸い込む息は深く、胸部のフィルターが稼働し始める音が微かに聞こえる。「今日も快調だな」と、ルナは満足げに微笑んだ。


 この世界では、人々の身体は生まれた時から「家電」として機能するよう設計されている。肺は空気清浄機、胃は除湿機、手足は高度なツールとして調整可能。身体機能を活用した「セルフメンテナンス」は、日常生活の重要な一部となっていた。


 ルナは身体AI家電のスペシャリストとして、個々人の健康を最適化するアドバイスを提供していた。診断の際には、相手の手首をチェックする。「強・中・弱」の設定が適切かを確かめるためだ。手首が硬い場合はフィルター機能が低下している可能性があり、スムーズな動作を妨げる。


 ルナの施術を受けた人々は口を揃えて言う。「あなたのおかげで身体の調子が戻ったわ!」その度に、彼女の胸には温かい誇りが灯る。




 その日は穏やかな日常が流れているように見えた。しかし、街中に漂う妙な緊張感が、ルナの敏感なセンサーをざわつかせた。広場で配られるパンフレットに目をやると、赤字でこう書かれている。


 警告:新型ウイルスが身体AIをハッキングしています!


 彼女は眉をひそめ、思わずその場に立ち止まった。周囲の人々のざわめきが耳に入る。「最近、隣の家の子どもが突然倒れたらしい」「どうやら身体機能が一時的にシャットダウンするらしいよ」など、噂話が飛び交っていた。




 ルナが広場を歩いていると、近くのカフェから悲鳴が聞こえた。「誰か助けて!」慌てて駆けつけると、そこには意識を失った男性が倒れていた。彼の胸部からは異常な蒸気が立ち上り、身体はピクリとも動かない。近くにいた人々が言った。「彼の身体のエアコンが突然暴走して、全身が冷え切ったみたいだ」


 ルナはその場で男性の手首をチェックし、スイッチの状態を確認した。明らかに不自然な信号パターンが読み取れた。彼女は冷静に彼を横たえ、応急処置を施すと、近くの救護センターに搬送するよう指示した。


 「ただの故障じゃない。これは…外部からの干渉?」彼女は疑念を抱き始めた。

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