ハロルド 第8章②:ハロルドの覚醒

 その時、トリアがハロルドに向き直った。

 彼女の瞳には涙が溢れているのに、決して消えることのない強い光が宿っている。


 「ハロルド。私、信じてる」

 トリアの声がまっすぐハロルドに語りかける。


 「あなたには、きっと皆を守る力がある。だって私たち、初めて三人でチームを組んだ時からずっと、あなたは街を、人を守ってきたから!」


 その言葉は、ハロルドの心の深い場所に響いた。


 そう、全ては「BE-COOL」から始まった。

 この街を守りたいという願い。

 仲間を得て、クインシーと真の友情を築き、そしてトリアを愛するようになった、これまでの記憶。


 それらが今、一つの力となって彼の中で目覚めようとしていた。


 「ああ…」

 ハロルドの体が、内側から輝き始める。


 「この感覚…まるで心の奥底から湧き出るようだ…」


 温かく、それでいて激しいエネルギーが全身を駆け巡る。

 光が彼を包み込み、新たな生命が目覚めるかのような瑞々しい力が全身を満たしていく。


 「これが…俺の力!」


 ハロルドの叫びと共に、彼の周囲に7つのビットが出現した。

 それぞれがハロルドの精神に呼応して、静かに浮遊している。


 絆、決意、希望、そして愛。

 ハロルドの内にある様々な想いが、個々のビットとなって具現化した。


 「MECHA FIREBALLメカ・ファイアボール!」


 その瞬間、7つのビットが一斉にレーザーを放った。

 ビットの攻撃は、ジャンカルロの放つ暗黒の波動を真っ二つに切り裂いていく。


 「なっ…!」

 ジャンカルロの表情が初めて崩れる。

 「これは一体…!」


 次々と放たれるレーザービームの矢が、ジャンカルロの築き上げた闇の防壁を打ち砕いていく。

 それは単なる攻撃ではない。

 ハロルドの想いの全てが込められた、魂の光とも呼ぶべき力だった。


 「守りたいんだ!」

 ハロルドの心の叫びが響く。


 「大切な人たちを、この世界を、未来を!」


 ビットはハロルドの意思と共に陣形を変え、光の盾となって仲間たちを包み込んだ。

 ジャンカルロの放つ闇の波動が、その盾の前に力を失っていく。


 「ハロルド…」

 トリアの目に涙が溢れる。

 「あなたの光、本当に温かい…」


 「凄いぞ、ハロルド!」

 クインシーが声を上げた。

 「お前の中に、こんな力が眠ってたなんて!」


 他のメンバーたちも、ビットの放つ光に力を得て、一人、また一人と立ち上がっていく。

 その姿は、まるで希望そのものが具現化したかのようだった。


 「これが…人の力だと!?」


 ジャンカルロの声が震える。

 かつて失ったはずの感情が、心の奥で蘇ろうとしているかのように。


 「ジャンカルロ!」

 ハロルドは7つのビットを従えて歩き出す。

 その足取りには迷いがない。


 「お前の作り出した闇を、この光で打ち払う!」


 ビットが集まり、光の螺旋を描きながらハロルドを守るように取り囲む。

 ハロルドの全ての想いと決意が、その歩みを支えていた。

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