序章⑥:赤子の救出

15年の年月が経ち、エニグマはついにセレスティアの人工転生計画を実行に移した。儀式は厳重な警戒の中で行われ、一人の赤子にクララの魂が宿された。その赤子こそが「トリア」である。


教会はトリアを厳重に監視し、彼女を対ABYSS用の人間兵器として育成するための準備を進めていた。トリアは特殊施設に隔離され、外界との接触を一切断たれていた。


シルヴェスターはこの状況を見て、時間がないことを悟る。彼は自分の元弟子であり、信頼できる盟友であるマキシマスとその妻キャシディに協力を求めた。


彼らはエニグマを離れて孤児院を経営し、親を失った子供たちを救うために活動していたが、同時にシルヴェスターと協力して、トリアを匿うための準備も進めていた。


深夜、シルヴェスターは密かにトリアの元へ向かった。警備をかいくぐり、赤子のトリアを抱きかかえると、彼は教会から脱出した。追手が迫る中、彼は暗闇を必死に駆け抜けた。


冷たい夜風が彼の頬を刺す。シルヴェスターはトリアをしっかりと抱き抱え、彼女を守ることだけを考えて走った。背後には追手の足音や攻撃魔法の閃光が迫っていたが、彼は決して立ち止まらなかった。

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