第19話 命を再燃の鼓動 ③

 その時、女子高生の背後からビームライフルの光線が放たれた。さらに多数のビーム攻撃が、落下した瓦礫を粉々に打ち砕く。


 「きゃあ!」


 「何が起こった?」


 崩れた天井の隙間から見えるのは、瞑色の空。ショッピングセンター内の光源は非常口のライトだけで、薄暗い中に6本のサーチライトが差し込んだ。金属製のブーツが床を踏みしめる音が響く。


 「今先、危ないどころだったな」


 やってきた武装スーツを着ている人たちを見て陽太は言う。


 「UCBD重装特務隊の人ですか……」


 少女は少し安心げな顔を浮いて言う。


 「良かった、助けに来ましたよね?」


UCBDグーリーバ重装特務隊の6人が現れ、その中の一人、隊長らしい男性が内線通話で報告を始めた。


「こちら389番隊Bチーム。ゴラーテルトンγと接触の兆候あり。瓦礫に下敷きになった人物を発見、状況を確認中。」


「03、確認を頼む。他の者はゴラーテルトンを警戒しろ。」


「了解。」


 隊長は部下を率い、4人の隊員は常にライフルを構えながら周囲に警戒を怠らない。その中の若い隊員が、二人の人影に近づいて声をかけた。


「君たち、大丈夫か?」


女子高生は即座にその隊員に叫ぶ。


「助けてください!彼が瓦礫の下敷きになっています!」


「これは瓦礫の量的に救助に時間がかかりそうだな…。シャドマイラの襲撃が収束しない限り、救急班はここまで来られないだろう。」


一瞬考え込んだ隊員は、女子高生に優しく尋ねる。


「君、どこか怪我をしていないか?」


彼女は小さく首を振る。


「私なら大丈夫です。」


「そうか、ならば君は先に避難しなさい。彼の救助は私たちに任せろ。」


「でも……」


「君は先に行くんだ。UCBDの私たちが付いているから大丈夫だ。」


「せめて、君の名前を教えて。」


「…日野陽太です。」


「その名、よく覚えておくわ。私の名は愛川凛音あいかわりんね。縁があればまたどこかで会いましょう。」


「……はい、また会いましょう。」


陽太は凛音を早く安全な場所に行かせるため、深く考えずに頷く。


「あの…彼は私の命の恩人です。無理なお願いかもしれませんが、どうか必ず彼を助けてください。」


「ああ、できる限り力を尽くす。さあ、行ってくれ。」


「よろしくお願いします!」


凛音は隊員に敬礼をしてから踵を返し、小走りで避難場所へと向かう。


他の隊員は去って行った凛音の姿を見て文句を吐く。


「まったく…とんでもないわがままなお嬢さんだな。俺たちはシャドマイラ退治で手一杯なのに、怪我人をいちいち助けていたらキリがない。」


「俺たちの最終目的は、人命を守ることだ。一人でも救える命があれば、見捨てるわけにはいかない。」


「しかし…。」


若い隊員が再び陽太に近づき、丁寧に尋ねる。


「君、脚の感覚はあるか?」


「はい…。痺れと痛みは感じます…。」


「脚が骨折している可能性が高いな。瓦礫を撤去した後も、担架での搬送が必要だ。」


陽太は意を決して話し出す。


「あの…もし、僕の救助がシャドマイラ退治の妨げになるようでしたら…放っておいてください。意識ははっきりしていますし、僕一人を救うために町の被害が広がることは避けたいんです。」


その言葉に隊員は驚き、意外な思いを抱きながらも微笑む。


「高校生の君がそんな立派なことを言うとはな…。だが、まだ諦めるには早いぞ、日野君。」


そう言うと、隊員はライフルを収納し、瓦礫を粉砕するための特殊装備を装着して作業を始めた。その時——。


ドシン…ドシン…ドシン…。


象の足の6倍はあろうかという巨獣の爪がこちらを向ける。暗闇の中、巨大な黒影がそびえ立ち、その首をどれだけ伸ばして見上げても、ゴラーテルトンγの頭頂部が視界に入らない。6、7メートルの高さに位置する胸部には、禍々しい赤い光を放つコブのような突起が目立っている。


「出てきたなぁ! シャドマイラ!!」


巨体を目の当たりにした重装特務隊員たちは一瞬の逡巡もなく、ビームライフルを構え、発砲を開始した。


「ギャオオオオオオ!!!!!」


背を向けて地面に伏せる陽太にはゴラーテルトンγの姿が見えず、ただ身を縮めて両手で頭を覆うばかりだ。陽太を救おうとする隊員も、すぐさまライフルを手に取り、加勢する。


「くそ……こんな巨大なゴラーテルトン、俺は初めて見た!」


「撃て! 砲火を止めるな、撃ち続けろ!!」


ゴラーテルトンγの胸部に爆発が起こるが、前足で防御するような仕草を見せたため、ダメージは軽減されてしまった。

さらに咆哮を上げたゴラーテルトンγは、怒り狂ったチンパンジーのように自らの胸を何度も叩き始める。


「あんなにビームを浴びせたのに、全く効いてないだと!?」

「こいつ……進化してさらに頑丈になったのか!」


その時、ゴラーテルトンγが右手を高く掲げたのを見て、隊長が即座に指示を下した。


「衝撃が来る! 散開しろ!!」


嫌悪する虫を叩き潰そうとするかのように、ゴラーテルトンγは思い切り地面を叩きつけた。


ドンッ!!


特務隊員たちは素早く跳び退き、衝撃に備えた姿勢を取る。しかし、その凄まじい一撃で地面は耐えきれず、ひび割れが広がっていく。


「くそ、なんて威力だ……!」


散開した隊員たちは再びビームライフルで攻撃を開始した。しかし、その巨体にはまだ衰弱の様子が見られない。


「隊長! このままでは埒が明かない……」


隊長は内線を通じて司令部に支援を要請する。


「こちら389番隊Bチーム、ゴラーテルトンγと交戦中。支援を要請する!」


「了解、全力で支援を送る。野郎ども、支援が来るまで進行を阻止するぞ!」


隊員たちは攻撃を続けながらも、その圧倒的な威力を前に恐怖と焦燥感を隠し切れなかった。

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