落とした消しゴムを拾ってあげたら、何故か根暗ぼっち美少女に告られた。

もんすたー

第1話 告白?

「あ……えっと……その……セックス、しません……か?」


 学校内の図書館で、絶対に聞こえてはいけないような言葉が聞こえる。

 その声の正体は、俺の横で消しゴムを握り、落ち着かない様子で目を泳がせる女子。


 花園翆(はなぞのすい)。同じクラスの目立たない女子だ。

 クラスで友達などと発言したところは見たことがなく、教師に当てられても、小声で呟くのみ。


 世間一般的にいう、陰キャという存在だ。

 黒髪ロングに縁の太い黒メガネ。制服もキッチリ着ており、スカートも膝下。

 そんな関わりがなかった女子に、俺、伊那湊斗(いなみなと)はどんでもないことを言われている。


「え、せっく……え!?」


 当然ながら聞き返す俺。

 今、セックスって言ったよな?


 聞き間違いじゃないよな?

 これまで話したことも指で数えられるくらいしかないのに、いきなりこれだ。

 聞き返さるを得ない。


「ち、違く……って! ……あぅ……」


 ジタバタと手を振りながら、否定する花園さん。


「言い間違えたってこと?」


「……」


 コクリと頷く。

 どんな言い間違えだよ。と、ツッコミたい所を抑えて、


「それで、言いたかったことはなに?」


「え、あ、……つきあって……くれま……せん……か?」


 上目遣いでこちらを見ながらいう花園さん。


「付き合う? 俺とってこと?」


「ごごごめんなさい……嫌なら全然……断ってくれてだだ大丈夫です…」


「別に嫌って訳じゃないけど……」


 何故に突然告白。

 今さっきまで、隣の席だったとしても一言も会話をせずに勉強してたよな。

 この会話だって、俺が花園さんの落ちた消しゴムを拾ってあげたときに始まった会話だし。


 でもまぁ……付き合うこと自体は悪くない。むしろいい。

 目立たない彼女だが、面と向かって見ると美形だ。そこらの陽キャ女子より何倍も。


 スラっと伸びた鼻筋に、プルンとハリのある唇。前髪を整える時に微かに見えるパッチリとした目元。

 ブレザーで隠れているが、そこらのJKより遥かに大きい胸元。

 イメチェンしたら絶対にモテる。

 いわゆるダイヤの原石。


「でも花園さん? なんでその、告白を?」


 体の向きを変えると、そう聞く。

 俺と親しいわけでもないし、唯一関わりがあると言ったら、テスト期間に学校の図書館で勉強してる時に顔を合わせるくらいだ。


 いつも同じ席に座る俺の隣が、花園さんの定位置だってだけだ。


 クラスの掃除などで一緒になったとしても、「ほうきお願いできる?」「あ……はい」これだけの会話。

 長文の会話などしたことがない。


「い、いや……え……け、消しゴム……」


 と、花園さんは先程拾ってあげた消しゴムを前に出してくる。


「ん、消しゴムがどうかした?」


「拾ってくれた……から」


「え、それだけ?」


 確かに消しゴムは拾ってあげたけど、それは俺の足元に来たから拾っただけでそれ以外の理由はないけど。


「だだけじゃなくて……ふふ普段の事も含めて……で」


「そんな花園さんと関わりなかったような気がするんだけど、なんかしたかな俺」


「掃除の時とか……授業中とか……色々……優しくしてくれました」


「待って、全く身に覚えがない」


「たた例えば、前ノートを忘れた時に……見せてくれました……」


「あー、あったな確かに」


 花園さんが後ろの席だった国語の授業の時、ノート見せたことが確かにある。

 隣の席の人も見向きなんてしないし、花園さんが誰かに見せてと頼むこともできなそうだから授業終わりに見せてあげてたっけ。

 案外関わりあったな。

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