異世界詩客

水白 建人

chapter 1 ~Poet~

No.1

 たまごさきか、にわとりさきか。

 ゆうきゅうときぼうばくこたえだ。

 だれもがとおわすれ、れられぬがゆえ。

 ――まるでしゃすえだな。

 かいはあった。てんせいだなどと、わたしはもうはなわらえない。

 きょうかいたるせんをまたいでなおつづきのじんせいあゆまされている、つばさなきにんぎょうごときには。

ぶりちゃ~ん? こっちてくれよぶ~りやちゃ~ん?」

 ほうがくいんせいたちのこえだ。こざかしいアルトゥールもいっしょのようだ。

 とさないとも。わたしにはレンガづくりのいえいえひもなわき、かわいたせんたくものまねばならないせきがある。

 そういしだたみらしてくれるな。むねはずむ。

ぶりぁ! きょこそてめえのみつあばいてやる!」

 アルトゥールはわめきやまない。

「なにいそいそなんかやってんだ、ええ? せいさんぶりやがってよお?」

ぶりなだけに、ですか~?」

 そうったほうがくいんせいのひとりにアルトゥールがこぶしはなった。

「だっせえんだよ! とさかにくるぜ!」

 アルトゥールはやまあこがれでもあるのだろうか、まんがったあかがみをざっとなでげてさらにしんをつけてきた。

がくいんせいでもねえてめえがなんでほう使つかえんだよ!? いいげんおしえろ! じょか!?」

「……わたしじょとはそうさくなぐさものだよ」

 ついくちひらいてしまった。

 あるじははぎみにはられたくないありさまだ。かのじょごとも、わたしがんでさざめくほうがくいんせいたちにけずおとらずたくましくてね。

 さて、どうしたものか。

 わたしぜいかえしたばかりに、アルトゥールのしたさきあぶららしてしまったらしい。

「へへ、じょじゃねえか。つってもこの国ウィンクルムにんげんでもねえだろ? 『ぶり』なんてひがしくせえまえくにじゅうほんだなひっくりかえそうがかいだろうぜ」

「アルトゥール。ごとだよ。くにじゅうほんだなからほこりをかぶってはばからない、そんなおとこきみはなれるのか?」

ほんぐらいおれだってむぜ」

さかちからはじめることだ」

「おいおいおい!? しれっとまどめてんじゃ――」

 ときに、わたしあるじひろわれた。

 にわとりんだたまごのごときじつだ。

 たまごにわとりてんつならばへいがあるといわざるをえない。

 うわさをすればかげす。わたしかわいたせんたくものれたかごをってかいろうたところ、アルトゥールとおなせいふくあるじとばったりたいめんした。

「っと、ただいませつげっ

おもてぐちからかえったのか? からまれずに?」

かれらならしんせつとおしてくれたけど」

 こざかしい。

せつげっはちょっとしんぱいしすぎじゃない?」

あるじじょうといえどオミナスほうこくまいきょにいとまがない。ひとりきりのたくはもうよすんだ」

「だってともだちみちにつきあってくれないし」

さいじゅうおうにすぎる。……じつに、たのもしくおもせいのろわしいな……」

 あるじこの国ウィンクルムほうがくいんらぬものなきりんだ。みぎそんけいひだりしっにぎりながらきょうほんにつぶすことをおぼえず、しんほうまなつづけている。

 いずれ菖蒲あやめ杜若かきつばた――このかいではつうじまいか。

 それでもわたしおもう。

 あるじはやがておおくのかがやけるのうせいとどかせる。いずれにせよ、あまねくたみりょうすくしょうらいめぐまれたにんげんだと。

 せいさえこうべをれよう。

 いや、アルトゥールにはつか。

「それってもうかわいてる?」

 あるじわたしつかごにゆびす。

「あああるじ。ちょうどしまうところだった」

「じゃあうえはだいちまいってくよ」

つんだあるじ、かごにはわたしの――」

「だめなの?」

 わたしほほまれた。

 なでまわすずかぜにもて、あいならぬ、されどもあましゅんかんだった。

「ぼくはきみそうしたい。ぼくときみつよくなれるみつだもん」

あるじ……」

「わがままなほうがあるじってかんじするでしょ? ね、せつげっ?」

 ずべからざるすいふくを。

 わたしせ、のぞみをすませたあるじしつもどくつおととどけた。

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