10年も前のこと.

第1話

あれは10年前の、私がまだ6才だった頃。




夏川きらり。


私がまだ小学一年生の愛も恋も酸いも甘いも知らない、純新無垢で子供だった頃の話。



「お母さん、もうすぐ着く?」


「そうね、まだあと少し…かな。」


「本当に遠いんだね。」




私はお母さんと一緒に電車に揺られていた。

田舎の、二両編成の、それでも席はガラガラの電車に。




「わぁっ!見て、船!カモメ!」





木々の間から見えてくるキラキラした海辺の景色に私は興奮した。



お気に入りの白いワンピースに向日葵のついた麦わら帽子を被って、誕生日に貰った斜め掛けのバッグを持って私達は今おばあちゃん家に向かっている。



「お姉ちゃん達、もう着いてる?」



「お父さんとお姉ちゃんはとっくに着いてるわよ。早く会いたいね。」




「うん!」






夏休み、お姉ちゃんとお父さんは一足先におばあちゃん家へ。

お母さんっ子の私はお母さんの仕事が終わるまで待っていたから、何日か遅れて行くことに。

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