第42話




「カット!」




カットの声がかかり、何度か深谷監督から細かいニュアンスの指示を貰い、数テイク撮り直しをする。


オッケーが出たら、今度は別アングルから全く同じシーンの撮影を何度か行う。


それの繰り返し。



深谷監督は撮影の時、必ず役者のことを役名で呼ぶ。


だから私たち役者も役に没入できる。




「ひかる、振り返る時は顔だけで体は自然とついてくる程度で」


「暁斗、動きはほんの一瞬、止まったか止まってないか」




今回、私が主演を務めるのは桜井はな原作の少女漫画〈ふたりで恋を犯しましょう〉の実写映画。


揃いのデザインの制服を身に纏った私たち――ひかると暁斗は、同じ高校に通う高校3年生でひとつ屋根の下に暮らす。


親の再婚で家族になった姉と弟の恋愛を描く。



深谷監督といえば、社会派やヒューマンドラマのジャンルを主に手がけている監督だが、意外なことに今回初めて少女漫画原作映画のメガホンを取ることになった。


ありがちなストーリーではあるけれど、大人と子供の狭間、不安定に揺らぐ年代特有の苦悩を深谷監督なら上手く引き出すことができるだろう。




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