第40話

「やぁ。大人になったくるみの演技、楽しみにしてるよ」


「深谷監督とまたご一緒できて嬉しいです。よろしくお願いします」



小学生の時、初めての映画撮影でお世話になってから、何度か深谷監督作品には出させていただいている。


第二のお父さんって感じで親しくさせていただいているから、深谷監督も気安く私のことを "くるみ" と呼んでくれる。



顔合わせや衣装合わせの時から、変わらず温かく迎えてくれる。



温和な性格で親しみやすい優しさを滲ませているけれど、演技には人一倍厳しくて妥協を許さない。


深谷監督の現場では全員がお互いにリスペクトを持ってプロの仕事をするから、作品にも愛情が込もっているし、説得力が生まれる。



役者も作品に息を吹き込む1人。


作品を作るのに、主役は決して役者だけではない。


だから私は全身全霊を懸けて演じる。



「時田くんも期待してるよ」


「深谷監督の作品に携われて光栄です。よろしくお願い致します」


「では、リハーサルお願いしまーす」




―――さぁ、舞台は整った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る