02. 甘いのは歌声と自分自身

第21話

「おはよー、胡桃。なに聴いてるの?」


清佳さやか、おはよう」



事務所の片隅のソファーに座り込んでいた私は、ワイヤレスイヤホンを外して上から覗き込んできた同じ事務所に所属する遠藤清佳に答える。


私よりひとつ年上の子役仲間で、La・princesseラ・プランセスのリーダーをしているしっかり者。



La・princesseは昨年デビューした6人組の女性アイドルグループ。


自分で言うのもなんだけど、私、山崎くるみと並んでうちの事務所の看板アーティスト。


本当は私もメンバーとしてグループを組む予定だったけれど、いつの間にかプロジェクトの過程でソロが決まっていた。



そこに今年デビューの売り出し中バンド、Greatidiotを加えて3大看板というわけ。




「グレイディのデモ。コーラスに私の声を入れたいんだって」


「くるみの?」


「そう」


「それって、……誰が?」



声を潜めた清佳の疑問に、胸の底に重たいものが沈んでいく。


長くこの事務所にいる彼女は、私たちのことをよく知っている。

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