第4話
カップルも、イルミネーションも、クリスマスも、全てが私には、いや、私たちには無縁だ。
密かに逢瀬を繰り返す私たちのこの関係には、名前もなければ、愛情なんてカケラもないのだから。
言うなればそれは、1本の細い釣糸で繋がった脆く、柔い、不確かな結びつき。
私が捕まえようと強く竿を引けば簡単に糸は切れてしまうし、あの男が逃げようと身を翻せばいつでも糸は外れてしまう。
ただ、ジ、と。刺激を与えないように身を任せるだけ。
やっと手に入れたこのチャンスを、自らの言動で易々と手放すつもりはない。
元より、この関係を壊すつもりなど私には微塵もないのだから。
「……
ふいに背後から呼ばれた名前に、思考の波に呑まれていた私は、は、と意識を浮上させる。
一瞬、動揺しかけるもすぐさまいつも通りの冷静さを貼りつけた無表情を繕い、後ろにいる男をそっと振り返る。
「そろそろ帰れよ?」
その男もまた、感情の読み取れない落ち着き払った態度で部屋の入口に背を預けながら言う。
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