第3話

街中まちなかが煌びやかな色彩に染まり出し、冷たさに空気が澄み始めた初冬。


世間のカップルたちはカウントダウンを始めた真冬の祭典に、浮かれ、騒ぎ、そして焦がれる。




『……さあ、いよいよその瞬間が近づいて参りました。もう間もなくです!』


『……3、2、1、点灯でーす!』




どこかのクリスマスツリーの点灯式の様子が、点けっぱなしになったテレビから流れる。


ふらり、と視線を向けると、最近CMでよく見かけるモデルだかアイドル上がりだかの長身痩躯の美女が、テンプレみたいな嘘くさい笑顔を浮かべて点灯する瞬間が映し出されていた。



(……くだらない)



乱れた制服を整えながらその様子を眺めていた私は、鬱陶しくなってリモコンを掴むと、電源ボタンを押してそれを強制的に視界から消す。



途端に訪れたのは、静寂という名の喧騒。



カチカチと一定に鳴る時計の秒針。


温風を送り出すエアコンの音。


窓の外からは時たま通り過ぎる車の走行音。



少しばかり絡まった思考にはその全てが、煩い。

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