最近、息子の様子がおかしい

第1話 最初の違和感

　最近、六歳になる息子アーサーの様子がおかしい。馬車で事故を起こして頭を打って以来、まるで人が変わったかのように振る舞っている。

　最初に違和感を持ったのは、息子が目が覚めて数日が経った時の事だった。私は息子が大好きだった青リンゴのジュースを飲ませようとおぼんを持って行くと、楽しげな声が聞こえてきた。

　一体誰と話をしているのだろうと隙間を開けて覗いてみると、誰もいなかった。大げさに身振り手振りをしながら大声で独り言を呟いていた。もしかして妖精でも見えているのかなと思ったが、表情に違和感を覚えた。

　何といえばいいのだろう。少し陰（かげ）りが見えるのだ。事故の前の息子は全ての事に純粋な眼差しで手当り次第に指差して聞いていたが、今見ている彼には欲が見えた。お腹空いたとか眠いとかの単純な欲求ではなく、腹を黒く染めるような欲が……。

　でも、気のせいだろうと思って、普通に息子に接していた。けど、またしても新たな違和感が私に襲い掛かってきた。