十七音の真相

夜野あさがお

プロローグ 

流れ星が消えるまでの間に読める文学を知っているかい?

向かいの席に座った男はそう切り出した。

知らない、私は素っ気ない返事をして、素っ気ない顔をその男に向けた。文学なんてどうでもいい。いや、文学に限らず、そのときの自分はすべてがどうでもいいと思っていたのだ。

そうか、男は困ったような微笑を浮かべた。目の前の少女に掛ける言葉を探しているようにも見える。

どうでもよかった。私にとってはそれらすべてが上っ面で、表面上の善意で、よしんばそれが心から自分を案じた行動だったとしても、無駄な事に思えた。幾千の言葉を並べても、幾万の思慮を重ねても、あの人は二度と戻らない。あの人は、それこそ一筋の流れ星のように、忽然と姿を消してしまったのだ。私を残して。

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