第195話 三つの異質

『お友達シリーズ』……。


これは、触れ合える友人がいないマイバッハ君が可哀想で、俺が気を利かせて作ってあげた、頑丈なお友達だ。


こいつらを、ちょっと開いた『庭園』から、ボッシュートする形で呼び出す。


三体居て、まず第一に、流体粘菌生命体の「トロット」。


第二に、混沌の獣「ニア」。


第三に、妖精「アンティ」。


俺はこの三体を外に出した。


「『トロット』は、スライムをベースに作った魔物だ。人間の形をしてほしいとお願いしているのだが、どうにも、スライムにとって人体は分かりにくい複雑な構造体らしくてなあ。髪と顔を作ってはくれたが、あとは四足歩行するようになっちゃった」


トロット。


白いスライム。


しかし、子供の落書きのような丸い瞳と口、もちもちほっぺた、マゼンダの髪が生えている。


が、肉体の形は、それこそ子供の落書き。頭と胴体と足はあるが、人間らしい関節構造を持たず、ウネウネと動く。


歩く時は基本的に四足歩行だが、二足歩行も可能。ダンスが得意で、あと何故か歩く時に可愛い効果音が鳴る。


肉体的には、物理攻撃の一切が効かず、どんな小さなかけらからも復活できて、どんな形状にも変化できる。


意思表示をする時は、肉体の一部を変化させて白いプレートにして、そこに文字を書いて筆談で対応する。


可愛いスライム娘にしようとしたのになあ……。


「『ニア』は、あらゆる魔物の要素を配合した混成獣(キメラ)だな。肉体を変形だけでなく変質させることができるのが特徴だ。だが本人は、肉の器よりも機械的な要素の方が頑丈であると考えたらしく、肉体をカーボンチューブや流体金属に変質させて、サイボーグになっちゃった」


というかほぼもうこれロボットなんだよね。


ニア、ニアは、生体キメラなのに、機械の方がお得!みたいなことを言い始めて自己改変。ロボットになった。


ゴティックメードみたいな爪先立ちのロボットが『庭園』にいるのは本当に怖い。


しかも見た目通りに硬く、速く、強い。ビームも出せる有様。ドラゴンに匹敵する戦闘能力。喋る機能はなく、機械音声で返答?をする。警告音とかたまに出すからマジで怖い。


あとたまに子機?みたいな、ファンネル的なものを飛ばしていたり、知らんビーム砲が武具置き場に増えていたりと、機械開発が趣味らしい?


可愛い獣人にしようと思ったのになあ……。


「『アンティ』は、俺の分体として作った妖精だな。ご覧の通り、女性版のコンパチカラーの俺みたいな見た目になった。魔法も使えるし、人間と同じように喋れるのだが、なんかこう……、妖精のダメな部分も出てしまった。魅了されないようにしてくれ」


アンティは、俺のコンパチカラーの女体化キャラ。


つまり、黒髪黒肌の美女。ドレスも黒。


とてつもない美人で、魔法も使うし、頭も良いのだが、人格面が妖精らしいので良くない。


すぐに人間を誘惑するし、堕落させようとするし、良くないよ本当に。


でも、本人は良かれて思ってやっているらしいので始末が悪いよね。


可愛くなったけど、実質自分みたいなものなので、手は出せないかな……。


「こちらの三体が『お友達シリーズ』と言い、『庭園』で飼育しているドラゴ……ああいや、ペット?の友人である人工魔物達だ。息子の友人でもある」


「「「「………………」」」」


おっと……。


また、絶句されてしまったぞ。


でも、俺は止まらない。


何故なら、技術公開に躊躇いがないからだ。


それは、「僕らの進んだ文明を非文明人の方々に啓蒙しよう!」という白人仕草でも、技術を渡して命乞いをしている訳でもない。


このくらいなら渡しても痛くないのと、多分この人らじゃ理解できないから、だ。


一応、マーゴットから普通の魔導師については十分に聞いている。


その上での判断だから、問題はない。


もっと根源的な話をすると、魔力が足りないんじゃないかな?


このレベルの人工生命体を作るのに必要な魔力は、俺の全魔力の数週間分。


俺の魔力は、エルフの魔導師の数百から数千倍。つまり、人間の万倍超え。それの数週間分だから、人間十万人分の魔力を一つに集めろ!ってことになる。まあ、無理だよね。魔力って基本的には、一カ所に溜めることもできないし。


その上で更に、数千から数万の『真語』を使いこなさなきゃならない。因みに、マーゴットが使える真語は五つ。大魔導師であるギャスパール爺さんでも十一。お話にならないね。


いやもちろん、魔導師ならば、『真語』が分かっているのならば、それを儀式によって発動させることは可能だ。じゃなかったら、占いとか雨乞いとかどうしてんの?って話だしね。


『詠唱』の魔技によって真語を発声することで、瞬間的に魔法を発動できること、これを指して『魔導師』って呼ぶんだよ。


逆に言えば、モグリの魔導師崩れでも、儀式によって魔法っぽいことをできちゃう場合もある訳で、ここが様々な問題の起点となっているんだよねえ。


魔導師崩れ……魔導師としての厳しい修行に耐えきれず逃げたような奴や、知識を盗んだだけの奴が、人里離れた村で魔導師を名乗り、儀式によって魔法っぽいものを使って居座る……ってのは社会問題の一つなんだとか。


前も言ったかもしれないが、この世界の魔法、『詠唱』は訓練に訓練を重ねて、なんとかウォーズみたいにフォースの修行みたいなことを十年単位でやらなきゃできないんだが……。


儀式発動なら、うまくやればワンチャン素人でも発動しかねないんだよな。


具体的に言えば、昔の地球での自称魔法使い達がやっていた「雨乞いの儀式」は成功率は確実に0%なのだが、この世界の魔導師崩れ達がやる儀式は成功率が数%はある感じ?


だがそれでも、溺れる人は藁も掴む理論で、こんな奴らに頼る人々も多い、と。


大変だよなあ〜。でもその辺りの話は偉い人達が解決してください僕は知りませーん。


とにかく、俺のこの術式は、パクられない。


演算力が違うもんね。あんな、概念の物質化くらいの単純な術式も解析できないんでしょ?


よって、問題はないのだった。


そして、利益。


これは簡単だ。


俺の結んだ縁は、全て子供達の為になる。


俺自身、あらゆる団体に深入りするつもりはない。


俺の人生はもうメインクエストがクリア済みで、後はサブクエストを延々とやり、実績トロフィーを集めるだけだから。アルドゥイン倒した後みたいな感じ。


だが、息子は、これから生まれてくる子供達は違う。


子供達には、道を用意してやりたいのだ。たくさんの道を。


仕官したいならすればいい、魔導師やりたいならやればいい。


医者やりたいなら教えるし、領主やるなら土地をあげちゃう。


今世はアレだが、前世での俺は親に愛されて育った。いやまあ、だから、結婚の話が断れなかったんだが、それはそれとして。


愛されないで育った人間は悲惨だ。人の愛し方も、それどころか、自分の愛し方も分からないのだから。


それは、人生から面白味を失くす、最も悲しい損失だ。


だから俺は、息子を愛してやる。やりたいことをやらせて、様々な体験をさせるのだ。


俺はどうでもいい、息子のためなのだ、これは。


……それと、不正とか秘密とかって、組織ぐるみでやった方がね、バレないし、バレても揉み消されるのよね。


どこぞの名門野球部の壮絶なイジメとか、政治家の謎のパーティーとか、中々バレないでしょ?でも、個人レベルの犯罪は簡単にバレるよね?そういうこと。

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