資料 有馬悠斗のアンケート


有馬 悠斗 アンケート内容


理想の世界  : フォールランドストーリー

なりたい人物 : アル



 まず、はっきりと宣言しよう。

 このゲームは全てが素晴らしいが、特に世界観とキャラクターは、過去のあらゆるゲームの中でナンバーワンだ。


 世界観は剣と魔法のよくあるファンタジー世界で、シナリオも非常にオーソドックス。

 人に説明して納得してもらえるような、センセーショナルな部分、キャッチーな部分には乏しいとは言える。



 ――だが、王道というのは、一番優れているからこその、「王」道なのだ。



 確かに物語の一つ一つは「テンプレ」と呼ばれるような、予想可能なものが多かったかもしれない。

 過去の作品を紐解いていけば、同じような展開をしている部分も多かったかもしれない。


 それでも、たとえ陳腐と言われようが普遍的なテーマを正面から取り扱い、そこを演出とストーリーの力でぶち抜いていったからこそ、このゲームには「名作」と呼ばれる資格があるのである。


 それに、要所要所で「よくある」展開や設定が目立つだけであって、もちろんこの作品独自の要素やほかで見られない設定なども無数にある。

 それよりも、物語は盛り上がりや起伏に富んでいるのに話の展開やキャラの言動に不自然なところがなく、最後まで没入感を損なうことなく物語を描き切ったことに、賞賛の言葉を送るべきだと思う。



 そう、このゲーム、ギャルゲから真面目な戦略SLGまで幅広く手掛ける老舗会社が全力で作っただけはあって、とにかく完成度が凄まじい。

 ストーリーの要素はさることながら、恋愛をメインにしたゲームであるにもかかわらず、本来は添え物であるはずの戦闘や探索の要素についても「これが世界一ファクトリーの本気か!!」と戦慄させられるほどのボリュームと優れたゲーム性を誇っていて、歯ごたえのあるゲームを好む人にこそ、このゲームはオススメ出来るのだ。


 もちろん、あまりにも戦闘部分にガチに作りすぎたため、ゲームバランスについて賛否両論があるのは知っている。

 個人的には「最初は絶望的なほど敵が強く見えるものの、全てを使い、何度も全滅を繰り返したら必ず光明が見える」という絶妙なバランスは、もはや世界一ファクトリーの誇る世界一の職人芸とすら思っているのだが、ゲームデザインが完全に全滅してから対策を考えるものになっているため、普段あまりそういうゲームをやらない層には奇異に映るのも理解出来る。


 けれど、実際にプレイしてみれば、リプレイ機能が優秀なおかげでそんなものは大したストレスにつながらないと分かるはずだ。

 ボスで死んだらボスとの戦闘の開始時ではなく、ボスとの戦闘の「直前」に戻ることが出来て、そこでアイテムや装備の入れ替えが出来るため、素直に、すぐにやり直しを楽しめる。

 こういった細かい配慮がゲームをより面白くする、という好例だろう。


 それでもどうしてもきついと思ったら、難易度変更すればいいだけの話。

 「世界一のゲームはノーマルがハード」なんて格言がある通り、意地を張らずにイージーを選べば全滅回数は激減するはずだ。



 それに、その攻略の難しさも、厳しい世界観に裏打ちされていると考えると、没入感を煽る小道具となるのがにくいところ。

 ということで、もう一つの作品の柱であるキャラクターの魅力は、何よりキャラクターたちがそこに「生きて」いること、これに尽きる。


 物語の操り人形にされて、不自然な言動を繰り返したり、キャラ付けのためにありえないキャラ造形にされているキャラは一人もいない。

 彼らはそれぞれの過去とそれぞれの主義主張を持っていて、それが物語の中でうまく調和されているからこそ、プレイヤーはなんの不安もなくストーリーに入り込むことが出来るのだ。


 主人公、ヒロイン、脇役、敵役、ネタ役、どのキャラも本当に最高で、ゲームをクリアした頃には全てのキャラクターを好きになってしまっていた。

 各キャラクターの掘り下げについては……長くなるので言及は避けるが、とあるヒロインのルートは最高だったので絶対やるべき、とだけは言っておく。



 ただ、魅力的なキャラクター、ヒロインが多い中でも、何と言っても一番輝いていたのは、「なりたい人物」にも挙げたアル。

 アルのことを一番好きになれたのは、今思えば彼が「最初から最強な主人公」などではなく、「プレイヤーと一緒に最強になっていく」タイプのキャラクターだったからだろう。


 主人公が実は勇者の血筋だと判明して……なんてのはよくある展開だし、この作品にもその要素はあったけれど、それはアルの本質とは無関係。

 実際、アルはその恵まれた血筋とは裏腹に、本編開始時の十五歳の時には「落ちこぼれ」だった。

 優秀な者たちが集う学園の中で、碌に魔法も使えない彼はステータス的にも物語的にも「弱者」だったのだ。



 だが、だからこそ成長した時が映えるし、育ててやりたいという気概も湧く。



 ――「最弱」から「最強」になる。



 言葉にすれば陳腐なそれを、ゲームのUIを、コントローラーを通して、ほかならぬ自分自身の手で成し遂げられるからこそ、アルというキャラクターは「特別」なのだ。



 その道のりは決して平坦ではなかったけれど、だからこそ数多の初見殺しを駆け抜け、少しでも効率的な成長を模索してアルを極限まで鍛え上げ、五周目にやっと魔王を一対一で討ち果たすことが出来た時は、数えきれないほど泣いた。


 いや、難易度自体は正直周回前提でもきついというあたおかレベルだったけれど、アルの出自を含めて全ての要素が芸術的にピタリとハマっていて、「ああ、全てはこの時のためにあったんだ」「アルだからこそ、魔王を倒すことが出来たんだな」と素直に腑に落ちる、控えめに言って最高のゲーム体験になった。


 落ちこぼれと言われていた彼が、自分(プレイヤー)の手腕によって少しずつ努力を重ねていき、最後までとってつけたような覚醒イベントや神様の干渉など全くなしに、最終的には世界を滅ぼしてしまう魔王を倒すという偉業を成し遂げた。

 これ以上に泣けるエンディングが、ほかにあるだろうか?


 逆境を、勇気と根性で覆す。

 彼こそが俺にとっての最高のキャラクターであり、最高の主人公なのだ!

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