スゴイ奴等が集まった!
崔 梨遙(再)
1話完結:2000字
僕は何度か転職しているが、昔、僕が勤めていた会社の中に、おもしろい会社があった。今、振り返っても、ちょっと変わった社風だったように思う。おもしろいことが幾つもあった。書けない話も多いのだが、書ける範囲でちょっと書きたくなった。その会社の雰囲気だけ、伝えられたら嬉しい。
僕の隣の席の男の子、A君がマスクもせずに咳をしていた。なかなか咳は止まらなかった。A君の目の前の咳の女性スタッフBさんが次第に不機嫌になっていき、やがてキレた。
「あんたな-! 咳は2メートルも飛んで来るんやでー!」
すると、A君が真顔で言った。
「いやいや、5メートル!」
「余計にアカンやないかーい!」
それでもA君は引き下がらなかった。
「5メートル。間違いない」
こうして、A君とBさんは馬が合わず、仲が悪くなる一方だった。
こんなこともあった。僕達若手が営業で攻めあぐねている企業へのアプローチ方法を、上司が一緒に考えてくれる機会が毎週あって、これは嬉しく、ありがたかった。
ありがたかったのだが、ここでエピソードが1つ。僕等はプレゼンを略してプレと言っていたのだが、若手のE君(C,Dの活躍を先に書いてしまったのでEになっているにで、気にしないでください)が、いつも“プレイ”と言うのだ。僕も気になっていたのだが、或る時、課長が言った。
「あのなぁ、“プレ”やぞ! “プレイ”とちゃうねん。お前のプレイに興味は無いわ!」
そして、或る時、飲み会でC君の新しい恋人のことが話題になった。C君の恋人はDちゃん。
「Dちゃん、めっちゃかわいいやんか、良かったなぁ、C君」
すると、C君は言った。
「いやいや、Dはマグロやで。抱いてても盛り上がらへんで」
“えー! C君、こんな男女会わせて7~8人で飲んでる場で、それは言うたらアカンやろう? だって、Dさんも同じ会社にいるのだから!”
それから、会社でDさんを見る度に、
“この娘(こ)、マグロなんだよなぁ”と思うようになってしまったではないか。勘弁してほしい。だが、Dさんには悪いが、陰でマグロと言われてるけど、Dさんがかわいそうとは思っていなかった。夜の営みについて他人に語るのはどうか? と思うが、そんなC君を選んだのはDさんなのだ。Dさんに責任があると思う。
また、或る時、BさんがFさんと3Pしたということを、Bさんが武勇伝のように語っている所を見た。みんな興味津々といった感じで聞いていた。話す方にも、聞く方にも問題があると思った。とりあえず、僕は引いた。話を聞きたくなかったので撤退したのだ。しかし、既に遅く、BさんやFさんを見る度に“3Pする女性達”だと思ってしまう僕がいた。
また、或る時は、Gさんが、
「半年ぶりに(営みを)したら、血が出たわぁ。やっぱり、あんまり日にちをあけたらアカンなぁ、定期的に営みをしておかないとねー!」
などと言い出した。聞きたくない。それから、僕はGさんを見る度に“あ! 血が出た人だ”と思ってしまった。
また、H君は、こう言っていた。
「俺、彼女が出来たらお尻を開拓するねん」
“もう、やめてくれー! もう聞きたくない-!”
これからH君の彼女を見たら、“あ! お尻を開拓されてる女性だ!”と思ってしまうではないか!
まだある。I君に至っては、付き合うと必ず儀式をするらしい。それは、これから付き合う女性に、風呂場で頭から小便をかけるというものだ。
I君の彼女を見たら、“この女性も小便をかけられてるんやなぁ”と思ってしまう。やめてくれ。やめてほしい。やめてください。
こんな感じの会社だった。とにかくみんなが性に対してオープン。僕は、最後までこのノリにはついていけなかった。まあ、みんな営業はすごく出来る人だったから、バランスがとれているのかもしれないが。
余談だが、僕の教育係は主任だった。“その主任が教育担当になると必ず辞める”という評判の主任だった。最初に僕が言われたのは、
「俺は若手の教育をするのが嫌やねん! それだけは最初に言っておく!」
だった。教育担当者が教育を放棄する。やっぱりこの会社にはついていけないと思った瞬間だった。その主任も、仕事ではかなりやり手だった。
とにかく、個性的な会社、個性的な社風だった。でも、みんな営業力はスゴイ。みんな仕事は出来るのだ。スゴイ営業マンが集まったスゴイ会社だったと思う。それでも、僕は最後まで社風(ノリ)に合わずに過ごした。今となっては、良い会社の良い思い出だ。
余談だが、僕が辞めるとき、何人かの女性スタッフが、“崔君とは、もっと話してみたかった”と言ってくれたのがめちゃくちゃ嬉しかった。僕は女性が好きだから。書き忘れていたが、その会社の女性陣は美人が多かったのだ。まあ、僕が若いのに既にバツイチだったので、女性陣の興味をひいただけかもしれないが。
スゴイ奴等が集まった! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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