オニヤンマの話
かもめ7440
第1話
トンボの割りに大きな身体を持っているこの生き物は、
数えきれないほどの種類が存在する生物界で、
一際強い存在感を放っている。
左右の複眼は頭部中央でわずかに接している、
生体の複眼は鮮やかな緑色だが、標本にすると黒褐色に変色する。
体色は黒だが、胸の前に「ハ」の字模様、胸の側面に二本の斜め帯、
腹の節ごとに一本の細い横縞と、身体の各所に黄色の模様が入る。
あとなんかよくわからないけど、
サンダーバードって言いたくなるかも知れない。
日本の夏の象徴ともいえるトンボの中でも、
『鬼トンボ』と称されるオニヤンマは、
数々のチート能力を持つ昆虫界最強とも名高い存在だ。
興味のない人にとっては全然関係ないことだけど、
学名の種名"sieboldii" は、日本の生物研究に功績を残した、
フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトに対する献名である。
結構数のファンもいると思うのだが、
生物標本、またはそれに付随した絵図は、
当時ほとんど知られていなかった日本の生物について、
重要な研究資料となり、模式標本となったものも多い。
ドイツの医師・博物学者。出島の三学者の一人だ。
全然関係ない話ついでにするけど、
女性の母性って不思議だよね、
負傷したトンボを見ていて、
そいつがもう飛べないだろうってわかっているんだけど、
放っておけなくて、家でピンセットで試行錯誤して、
蟻を餌にして与えたってね・・・。
なんかそれを考えていたらオーガニック粉ミルクのことを考えてね、
あれ、普通のやつと比べて三倍ぐらいするんだよね、通常出回っていない、
国産ないんだ、
インターネットでのオンラインショッピングや専門店。
なんかそれを考えていたら、頭の中にサバイバルゲーマーみたいな、
完全武装軍用ボートな光景が流れてきて、世の中って要するに、
ミリタリーバランスだみたいなアホなことを考えてさ・・。
さて、一体何の話をしているんだろ―――うね。
いや、知覚が作用する世界というやつだ。
とんぼの眼が、眼鏡や、拡大鏡や、
フレームレートになっているかも知れない。
心の異常な軽やかさの中で、何処から何処へ流れてゆくともしれない、
イメージの言葉の中に裸の枝のような姿をした生き物がいる。
さて、オニヤンマには三つの要素が挙げられる。
一つ目は「驚異的な飛行能力」だ。
オニヤンマは時速七〇キロ以上で飛行する。
さらに瞠目すべき点は、そのスピードで複雑な飛行が可能ということだ。
オニヤンマの翅は四枚あるが、それら一枚ごとに筋肉がついていて、
それぞれ別々に動かすことが出来る。
これによって空中で静止したり、急激な方向転換ができる。
ホバリングや急旋回が自由自在で、縦横無尽に移動できるハンター。
適切なギアチェンジに失敗してエンストすることはない。
この高速で正確な飛行技術によって獲物に気付かれることなく接近し、
瞬時に捕まえてしまう。
そういえば、古生代後期のトンボは翼幅最大約七〇センチも、
あったってね、バッサバッサと生きた獲物を求めて、
空を飛んでいたんじゃなかろうか?
トリケラトプスのような悲しい感じではないことを祈ろう。
で、そこに眼をつけた米アリゾナ州立大の、
ジョン・ヴァンデンブルックス博士率いる研究チームが、
古生代の環境をラボで再現し、巨大なトンボの生育に成功した、と。
ようは、空気中の酸素含有率を三一パーセントまで上げ、
(古生代の環境と想定される状態。
ちなみに今は約二〇パーセント、)
その中で丹精込めて育ててあげたら、
普通のとんぼより一五パーセント大きくなった、と。
でも、一番苦労したのは空気の状態再現じゃなく、
餌をやって大きく育てることだったらしい。
生きた獲物しか食べないからね。
それにしても、誰得の話なんだろうね、これ。
続ける。酸素濃度が高くなると少しの火花でも、
大きく燃え上がるけど、
小型の昆虫は肺を持たないが、体表にあいた小さな孔を通して、
細胞内に酸素を行き渡らせる。この仕組みは、
昆虫があまり大きくなければうまく機能する。
だから大半の昆虫は小さいわけだけれども、
酸素濃度が高いエネルギッシュな時代には簡単に酸素が取り込めるので、
巨大な昆虫が生存可能になり、鴉ほどの大きさのトンボに似た生物や、
一メートル近くのムカデ、タイヤ幅のクモが存在していた、
と考えられている。
排泄物の話というのがある。
食料資源開発協会会長でトイレ学者の李家正文は、
「神話は日月の糞から派生したようなものです」
だから―――だから・・・・・・。
「ウンコを感じることは神話時代とともに生きることだ」
と奨励する。
流そう。
で、二つ目は、「複眼による視野の広さ」だ。
その視野は二七〇度もあると言われ、
獲物の索敵能力も圧倒的というわけだ。
オニヤンマの眼は、小さな二万個の眼の集まりになっている。
縫い目という縫い目に刺繍をされてきたような、眼。
現状維持派や惰性派とは違う革命派。
これにより遠近距離を問わずバッチリ認識できるようになっている。
たとえばテッカマンがワルダスターの宇宙船と間違えて、
無実の宇宙船を撃沈してしまうというすさまじい内容も。
さらに複眼は動きを察知することに特化しているから、
獲物の微細な動きも見逃さない生存戦略の一部。
時にはその大きな眼を見せて敵を威嚇することもある。
百ます計算のプレッシャーとストレスだね。
三つ目は「圧倒的な顎の強さ」だ。
顎の力すさまじく、捕えた獲物を簡単に噛み砕くことができる。
これにより他の昆虫だけではなく、蛙や小鳥を捕えることもある。
オニヤンマの顎は鋭い歯が並んでいて強力な筋肉に支えられている。
全然関係ないんだけど僕は宮川匡代とかいう少女漫画のヒトが、
好きで、買っている内に、途中で、何故か顎が出っ張って来るのね、
リアリティの問題なのかわからないんだけど、僕はそれで、
このヒトの本をまったく読めなくなった。
それは漫才における顎の記号論として提出するべきことかも知れない。
ともあれ、これによって獲物を確実に捕えて、
素早く捕食することが可能。
さらに獲物を捕らえた後に、顎を使って獲物の体液を吸い出すこともできる。
それによって短時間で多くのエネルギーが摂取できるようになっている。
人間の指でも出血を伴う噛み傷を作るから扱いには気を付けなけばいけない。
ちなみに同じく最強の昆虫と名高い、
最強の毒を持ったスズメバチにも、勝つことができる。
なんか『グラップラー刃牙』的というか、
どっかの地下に凄い武闘場があって、そこで世界最強が争われていて、
アントニオ猪木が、ジャイアント馬場がっていう感じだけど―――。
昔、『空手バカ一代』原理主義というのがあって・・・。
そこはまあ、レクチャービデオよろしく軽く流そうか。
で、一〇〇パーセント勝てるというわけではないが、
背後にさえ回れば毒の針に刺されることもない。
フィジカルだけで圧倒するところにオニヤンマの強さがある。
自然界で生き延びるために最適なカスタマイズをした構造をしている。
これに注目した商品が「おにやんま君」だ。
殺虫剤や、忌避剤は未使用、帽子やシャツ、
バッグに身に着けるだけで効果がある。
虫嫌いな人が触るぐらい嫌というレビューがあり、
効果のありなしは商品の定めみたいなものだが、
気軽に試せる。
公園、キャンプなどに需要がありそうだ。
ただ、ちょっと大きいので普段使いにはどうかという意見もある。
こんなオニヤンマなのだが、弱点がある。
素早い動きは察知しやすいが、
ゆっくりとした動きは察知しにくく、子供に簡単に捕まえられたり、
何しろ、蝙蝠や鳥には簡単に捕食される。
世の中ってそんなに上手いようには出来ていない、
たとえばIQが高くても、答えを出すのに人の何倍も時間がかかる例がある。
物事の表面やイメージに騙されず、最適解を導き出したいところだ。
また縄張り意識の強いオニヤンマの習性を利用した、
とても簡単な方法がある。コロンブスの卵ってやつだね。
準備するのは、一メートルくらいのミシン糸や木綿糸を一本。
直径一センチから一.五センチのなるべく丸い小石を二個。
アメの包装紙など小石を包める大きさの薄い紙や布を二枚。
錘となる小石を薄い紙や布で包んで、糸の両端に結ぶ。
これで完了だ。
オニヤンマは巡回コースを持っているので、そこで待ち伏せし、
オニヤンマの眼の前に放り投げる。
ぐるぐると回転して飛ぶ小石を縄張りの侵入者と勘違いした、
オニヤンマは、自分から仕掛けに向かって飛びかかっていく。
すると仕掛けの糸が身体に絡まるので、
地上に落ちたところを難なく捕まえることができる。
あと、トンボ類は家庭で使用する扇風機などの回転体に、
しばしば反応して接近するものだが、前述した要領のものを、
ぐるぐる回して採集する方法もある。
また暑いところが苦手で、裏を返せばオニヤンマは涼しい場所を好み、
日陰や小川の近くで生息していることが多い。
また都市部にも出現し、人々を驚かせることもある。
こんなに大きなトンボは滅多にいないからだ。
大柄にもかかわらず飛行中の体温は他のヤンマ類と同じか、
若干低めで四〇度前後。
ちなみに草木に止まって休む時は、
普通のトンボのように腹を水平方向に持ち上げて止まることはなく、
(昔よく杭の上でそうしているトンボがいた、)
他のヤンマ類同様に脚の爪を草木に引っかけて、
大きな身体をぶらさげる体勢をとる。
あと、寿命も成虫から一か月や二か月で想像以上に短い。
幼虫期間は三年から五年というから、
線香花火みたいに儚い命の燃焼というのを感じるだろう。
オニヤンマの話 かもめ7440 @kamome7440
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