第8話
「神よ、緊急の議題が一つ入りました。こちらをお願いします。」
「…これは。」
それは前回間引きをした村で異常警報が発信されたという事だった。教会に設置されている世界の眼からの映像では何故と叫んだ神職と思わしき人間が象徴にナイフを突き立てていた。
「この状況がなぜ起きたかわかりますか?」
少年は女性に問う。
「この人間は声の波長からこの村の神職、マビダであるようです。また、直近のレコーディングから、今回の間引きで家族二人を亡くしたと思われます。」
「…そんな。」
「また、彼の叫んでいた天啓についてですが、短期間の申請過多で一月後に廻されていたようです。」
彼の叫びと様子から心情を考えてしまい罪悪感が胸を押しつぶす。
「象徴の破壊は大罪です。幸い自己修復機能で直る範囲ですが、規定通りこちらを罪人として教会に手配しますか?」
「…いや、いい。やめてくれ。そのままでいい。」
「不穏分子は排除するべきと思いますが、何故?」
「…すまない。だが、これが私の決定だ。異論はしないでほしい。」
「わかりました。神の決定に従います。」
少年の贖罪であろうか、マビダに何も罰を下さなかった。だが映像の最後の方の神を殺すという言葉を彼は聞き逃していなかった。
翌日、村人達は教会に集まっていた。教会の象徴に短剣が突き刺さっていたのを子供が発見したからだ。
横にはリトルがうなだれて座っていたと言う。駆けつけた大人がリトルを問いただした。
リトルも憔悴しており俺が嘘をつかなかったからと支離滅裂な事を嘆いていたが、その言葉の端々から何となく状況を悟り村長に報告した。
村長はこのままでは不敬により村に天啓が降りない事を危惧したが、それ以上に天啓を下ろす者がいない事にも頭を悩ませる。
すぐ中央教会に新たな聖職者の派遣要請とマビダ捜索の手配を周りに話始めるが、大声が上がる。
「待ってくれ!神父は俺にやらせてくれ!」
声を上げたのはリトルだった。
「何を言っている。神職に至るのは簡単なことではない。第一お前は文字が読めないだろう。お前は捜索の方に手を貸してくれ。」
村長はそう言った。
「俺が、俺が悪いんだ。俺のせいでマビダは出て行っちまったんだ。俺が、止められなかったんだ。だから俺の責任なんだ!親友の俺があいつが戻ってくる場所を守ってやんなきゃいけないんだ!だから、だから俺にやらさせてくれ!」
普段言動が軽いリトルが泣きそうな面持ちで必死に訴えかけた。村人はざわめいた後、村長に判断をゆだねた。
「…半年間だ。それで神職者になれなかった場合、中央教会に神職者を申請する。」
「すまねぇ、ありがとう!」
反論する村人はいなかった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
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