第15話 スキル『超兵創造』
秘密基地で生活し始めて、早くも半月が経った。
おれたちの生活は安定しつつある。仲間たちが意欲的に働いてくれているお陰だ。
最初のうちは反発のあった勉強の時間も、文句は少なくなってきた。読み書きや、簡単な計算ができることが、便利なことに気づいてきたのだろう。知ることの楽しさに目覚めてくれたなら嬉しいものだ。
特にクラリスは、勉強時間外でもよく質問をしてくるようになった。雑談のような問いかけが多いが、あらゆることは学問に通じるから良し、である。
「しかし、すまんな、クラリス。それは専門外だ。愛や恋に関しては、よくわからん」
「そっかー……」
「Fランクで答えられるやつはいないかもしれんな」
劣等な子孫を残させないためという名目で、Fランク民は子どもを作ることを禁じられている。そこに繋がる恋愛も禁止だ。Fランク同士はもちろん、Fランクが上位ランクに恋い焦がれたり、上位がFランクを手籠めにすることも禁止されている。
この禁を犯せば、男女もランクも問わず、生殖器を切除される刑が課せられるという。
それゆえ、Fランク民は恋愛知識がほぼない。
「ウィル様なら、前世があるから知ってると思ったんだけど」
「生物学的なことなら分かるのだがな」
「そっかぁ……」
肩を落とすクラリスだが、なにか思いついたらしく、すぐ顔を上げた。青い瞳でまっすぐにジッと見つめてくる。
「じゃあ、わたし研究してみる。ウィル様にも、手伝って欲しいけど……いい?」
「いいだろう。だが、おれたちには本業があるからな。その合間となっても構わないな?」
「うんっ、えへへ。ありがとう、ウィル様」
そんなところで、おれはその本業の研究に戻る。
おれたちの生活は安定しつつあるが、まだまだ足りない物が多い。
例えば、武器や防具だ。
保安班や食料調達班には、収容所の仕事で使っていた道具や、木で作った弓矢などで武装させているが、武具としての性能は低い。
もし万が一、この秘密基地が追っ手に見つかったとき、防衛するには心許ない。
それに医薬品もない。
今は幸いなことにみんな健康を維持しているが、今後、怪我や病気となったときに、医薬品がなくては困る。
クラリスなら治療魔法も使えるが、その効果は、魔力の質に比例する。おれたちの質の低い魔力では大した効力は発揮できない。
魔力の質が低くても効く治療魔法を研究させているが、まだ未完成だ。
一応、食料調達班が薬草くらいは見つけてきてくれるが、数が少ないし、そのままでは効果も薄い。精製して
こういった課題に役立つのが、おれのスキルだ。おれは『
そのひとつが『
前世で様々な兵器を創り出してきたことに由来するスキルだろう。
今持っている知識、技術で作れる兵器なら、その場ですぐに創り出せる能力だ。
つまり前世の記憶を引き継いでいるおれは、レーザー兵器でも、
……素材さえあれば。
当然のことながら、無からは何も作れない。
そして残念なことに、必要となるほぼすべての素材がこの世界にはない。
数々の超兵器を起動させる高出力なエネルギー源も、武装や装甲に使う超硬金属も、巨大ロボットを稼働可能な重量に抑えるための軽量超合金も、この異世界に存在しないのだ。
もしかしたら探せば見つかるかもしれないが、少なくとも今この場にない。
本当に無念である。
今のところは、この世界特有の素材や技術を『
そうしていつか、代替素材や代替技術を確立できたときこそ、前世の兵器の再現が可能になるだろう。
「とはいえ、研究するにも素材不足だな……」
今は機械的な兵器の製造は保留とし、生物的な兵器を一から研究している。具体的には、機械部品の代わりに、動物の骨や筋組織、神経、三半規管などを部品に用いる生体ロボットとでも言うべき兵器だ。
食料調達班が持ち帰った動物の部品を試しているが、いかんせん種類も数も足りておらず、良い結果が出ていない。
それに、
成果物がないわけでもないが……。
「仕方ない……。探索の範囲を広げてもらうか」
時期尚早とは思うが、このままでは進歩もない。
おれは翌朝、食料調達班の班長を呼び出し、新たな素材の収集を指示した。
「ただし無理はするな。安全が最優先だ。いいな?」
「わかってるよ、ウィル様。みんなのために必要なんだろ? 任せとけって!」
「それからこれを持っていけ」
「ん? 模様の付いた、木の札?」
「おれの作った
「へええ! そりゃすげえ!」
「すごいものか。威力は使用者の魔力の質に影響を受ける。撃てる回数も、魔力量次第。誰が使っても同じ性能でない物を、兵器とは言えん……」
「いやいや充分すげえでしょ!」
「こんな物しか渡せず心苦しいが、上手く使ってくれ」
こうして出発した食料調達班だったが、数時間後、逃げ帰ってくることになる。
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※
次回、逃げ帰った食料調達班を追って、ゴブリンが秘密基地に侵入します。人間の中でも特に弱いFランクだからとゴブリンに侮られるウィルたちですが……。
『第16話 新武装、その名は魔法銃』
ご期待いただけておりましたら、
ぜひ表紙ページ( https://kakuyomu.jp/works/16818093089420586441 )から
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