第2話 謎のメッセージ

 連休明けの金曜日、俺は土曜日の生配信の内容を考えながら帰宅していた。

 さすがに移動魔法系は何回かやって飽きられそうだ。そろそろ、別の何か面白いものか、あるいはコラボが必要な感じがあるなぁ。

 家に帰って、早速チャンネルを開く。


 お、イサムからメッセージが来ている。

 何だろ、とりあえずイサムが女だと知らずに、前世からやっていた(女子にとっては)失礼な言動はきちんと謝っておいたから、問題ないとは思うのだが?


『件名:イサムは預かりました』


 何だ、これは?

 イサムからのメッセージなのに、イサムを預かった?

 そんな意味不明なことをするような奴ではないのだが。

 もしかして、単純なパスワードを使っていて乗っ取られたのか?

 アイツならやりそうだなぁ。


 いぶかしみながらメッセージを開いてみると、そこには物騒なことが書かれてあった。

『不心得者のイサムは預かりました。彼女がどうなっているか確認したいなら下のURLを確認しなさい』

 と、何かしらのリンクが貼ってある。


 うーむ、やはりイサムの奴、アカウントを乗っ取られたんじゃないだろうか?

 これ、俺が「どうしたんだ?」とうっかりリンクを踏んだらウィルスに感染して、俺の友人達に同じメッセージが飛ぶんじゃないだろうか。

 まあ、気にはなるから一応セイコに聞いてみよう。


『セイジだけど、イサムから変なメッセージが届かなかったか?』


 いつもなら3分も待てば返事が来るが、今日は中々来ない。

 週末だしどこかで遊んでいるのかもしれないな、と思った途端、返事が来た。


『件名:セイコも預かりました』


 な、何……?

 もしかして、セイコも感染してしまったのか?

 いや、しかし、イサムの時は「イサムは」だが、今回は「セイコも」と変化している。

 まあ、最初に感染したのがイサムで、2番目がセイコだから「も」となったのかもしれない。

 どうしたものだろうか、室地さんに聞いてみようかな。しかし、女神が機嫌を損ねているからちょっと話しづらいんだよな。

 ベンケイに聞いてみるか、と思ったら、『件名:ベンケイも預かりました』と来た。


「……」


 これ、もしかして、俺のアカウントが乗っ取られていて変な状態になっているのか……?

 一応電話番号を聞いているから、セイコに確認してみよう。

 ……この電話は電波の届かないところにあるか電源を切っている……。


 さすがに由々しき事態となってきた。

 リンクを踏むのは怖いが、確認してみよう。


「こ、これは……!?」


 そこはどこかの寺のようだった。長い廊下がずっと続いている。

 そこを雑巾がけする3人の男女。

 イサムに、セイコに、ベンケイだ。

 3人とも半泣きで雑巾がけをしている。

「……これは、どうしたらいいんだ?」


 傍目から見ると、3人とも良い心がけをしていてお寺の雑巾がけをしているように見える。

 しばらくすると場面が変わった。

 おぉ、3人が座禅して、後ろを僧侶2人が警策きょうさくを持って歩いている。

 イサムもセイコもベンケイも煩悩ぼんのうの塊のような存在だから、僧侶が3歩も歩くと肩をポンと叩かれ、「ハッ!」と打ち付けられている。

 うーん、この動画だけを見ていると、彼ら3人の精神が直されて良さそうな気もするが。


 そう思ったのは一瞬だけだった。

 直後に3人から同じメッセージが来た。


『件名:次は貴方です、賢者セイジ』

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