第11話 どうにか一件落着
「これで安心ですぅ!」
セイラが神に祈りを捧げると、確かに重傷を負っていた忍者達のケガはみるみる癒えていく。
と、同時に俺の頭は少しひんやりとしていく。
場所については指定できるらしいので後頭部周辺の、一番ショックの少ないあたりにしたが、悲しみは尽きない。
「こいつはどうすればいいんだ?」
と、イサムがマシンガンを突き付けているのは白目を向いて泡を吹いている女神だ。
もちろん、気を失っている間にセイコがタオルを引っこ抜いたので俺達の勝ちだ。
「俺はこいつのせいでミジンコなんかに転生させられたんだ。正直、このまま撃ち殺したいんだが」
「まぁまあ、その件については女神に悪意があったわけではないし」
というか、80パーセント以上、イサム達のせいだと思うのだが。
しかし、コイツ、女の子だったのか。
ここまで荒っぽい女子がいていいのだろうか?
よくよく聞くと、ここ日本での名前は由砂勇と書いてユサ・イサミらしい。
できれば勇実とか勇美にしてほしかった。
おっと、色々なことがありすぎて生配信中だということを忘れていた。
とりあえず勝利宣言をしよう。
「者共、ここまで見た通り、我々の勝利だ!」
「勝利ですぅ」
「いよっしゃあー!」
視聴者の反応は、というと……
『要は乱入勇者が忍者を全員撃ち落として勝利したと』
『面白い展開ではあったが、魔法が全然出てなくないか?』
『確かに魔法がない』
『そもそも、コイツ今回何もしていないぞ』
そういえば、そうだった。相手は全員イサムが倒してしまったからな……
しかし、今更何の魔法を使うんだ?
おっ、そうだ。移動魔法で東京に行って、東京の風景を映せばかなりの反応が得られるんじゃないか?
いや、ただ、人の多い東京で携帯を撮っていたら身バレするかもしれない。
「ハハハ! 今回は聖女の神の力を見せたということで勘弁してくれたまえ。次回の配信では、このようなトラブルのないところで、より面白い魔法を披露しよう」
『何か誤魔化そうとしているな』
『まあ、今回はさすがに色々ありすぎた』
『面白いは面白いから、今回は見逃してやるか』
視聴者も納得したようだ。
『というより、勇者や聖女の方が面白いんじゃないか』
『確かに、セイコ突撃隊長を連れて他チャンネルともやりあってほしいな』
『科学を崇高せよチャンネルとかちょうどいいんじゃないか?』
おい、ちょっと待て。
これ以上、俺をトラブルに巻き込むのはやめてくれ。
というか、セイコやイサムの方が面白いって。
それはまあ、見ている分にはあの2人の方が面白いかもしれないが、こんなのが身近にいたら、胃がいくつあっても足りんぞ。
かくして、ベンケイの襲来は無事に解決した。
何だかんだでベンケイは配信者としては筋が通っている。セイコが「敗者は当然土下座するもんですぅ!」と言うと、素直に「済まなかったで、御座候」と土下座パフォーマンスもしてきた。
『さすがにベンケイさんは潔い』
『今度は勝てるように頑張れ』
ということで、負けたけれども、ベンケイの登録者数も増えたようだ。
もちろん、俺の方は更に増えて7万人をこえた。
「大賢者と愉快な仲間が毎回ギャグバトルを繰り広げるドタバタチャンネル」という俺の意図とは異なる不本意な紹介も増えてきているのだが……
セイコとイサムもそれぞれ目立った一方で。
「はァ!? 何でアタシが土下座しないといけないのよ? アタシは女神なのよ!? 今回はアンタ達の卑劣な手に引っかかって失敗しただけだし! 覚えていなさい!」
女神はベンケイと異なり、器の小さいところを見せてしまって、エンタメ的な形で登録者を獲得することはならなかったようだ。
通の間では、「方針に迷走している」という風にチャンネルを紹介されるようになったようだが、まあ、これは自業自得だろう。
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