元大賢者は現代日本で魔法を配信する

川野遥

プロローグ1・そして世界は滅亡した

 ここは剣と魔法の世界・ファンタジア。

 その世界の果てにある魔王城。

 その城の最奥部で、魔王と儂ら勇者パーティーの最後の戦いが繰り広げられていた。


 勇者イサムと魔王ダイマオーの長きに渡る戦いに遂に決着がつく。


 おっと、自己紹介が遅れてしまったのう。

 わしは大賢者セイジ。この世界のあらゆる物事に精通している大魔法使いじゃ。

 今は勇者イサムとともに、魔王を倒すパーティーに参加しているのだ。


「イサムよ! 今日こそ、貴様を倒してくれる! この全てを取り込む! スーパー・ブラックホールの力で!」


 ダイマオーは魔界の力の粋を尽くした絶大兵器を用意しておった。

 全てを闇の底に取り込む恐怖の穴だ。


「この世界もろとも、貴様を吸い込んでくれるわ!」


 強烈な重力が地面を、いや、大気そのものをも吸い込まんとする。

 そのままでいれば、たちまち吸い込まれ、闇の底へと沈んでいくだろう。


 そこで儂の飛翔魔法の出番じゃ!

「舞い上がるのだ! イサム、キシ・タツナ、そしてセイコ!」

 儂ら4人は空中に舞い上がり、しばしスーパー・ブラックホールの力を逃れる。


 その間に、勇者イサムが背中に背負った長さ8メートルはあろうかという大口径の銃を構えた。

「ワハハハハ! ぶち殺してやるぜ! ダイマオー! 肉片の一片すら残さずに!」

 本当に勇者かという物騒なセリフを吐いて、銃の照準を合わせた。


「こいつが受け止められるかぁ!? この3連発スーパーノヴァを!」


 イサムの奥義スーパーノヴァ!

 星々を爆発させ、何光年もの距離に及ぶ世界を破壊するという、文字通りの究極奥義だ。


「イサムちゃーん! 支援しますぅ! 絶滅の光!」

「このデュカリオーン・ランスで、魔王を倒します!」

 聖女のセイコと、竜騎士のキシ・タツナもそれぞれの奥義を放つ。


 あまりの眩さに全ての生物の視力から脳機能全てを破壊・消滅するセイコの必殺技・絶滅の光!

 そして、世界を覆いつくす大津波を起こすというキシ・タツナのデュカリオーン・ランスによる一撃!


 どちらも受けて生きている者は、一人もいない!


「セイジ! おまえも手伝え!」

 イサムがこちらに叫んでくる。

 そうか、儂も何か大魔法を……


 いや、ちょっと待て。

 こいつら……

 全員がここまで大技を繰り出してしまって、この世界は大丈夫なのか?


 気づいた時は遅かった。


 勇者と魔王、相容れぬ者達の意地と憎悪の衝突は……

 ……ファンタジアを完膚なきまでに破壊し、すべては終焉を迎えた。



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