第10話
一通り藤堂さんとの昼食を堪能したところで、そろそろ昼休みの終わりも迫ってきた。
「そろそろ教室、戻ろうか」
そう言って立ち上がる俺だが、藤堂さんの方はというと、少し困った様子でこちらを見上げてくるばかり。
そんな彼女の態度に疑問を覚え、問いかける。
「どうしたの? 行かない?」
「あ、あのぉ~……」
遠慮がちに藤堂さんが口を開く。
「き、教室には別々に戻りません?」
「? なんで?」
「なんで……って、あの、理由分かりません?」
分からんけど……。
彼女の言いたいことがマジで分からなくて首を傾げると、藤堂さんはさらに困った感じの表情になる。
「あの、ほら……私なんかと一緒にいるところ他の人に見られたら、辻宮くんに迷惑かかるっていうか……」
「あー……」
「……お昼休みに辻宮くんが私に話しかけてきた時、周りの反応すごかったじゃないですか。辻宮くんみたいなカッコいい男の子が、私なんかと関わってるとか……やっぱりすごい変っていうか」
「変も何も、俺は俺の女神と一緒にいられるだけで心の底から幸せだけどな。周りとかなんか正直どうでもいい」
「女神? へ、ゲームの話?」
いや、君の話。
それはさておき。確かに昼休みに入ってすぐに藤堂さんに話しかけた時は、周囲が何やらざわめいていたような気はしていた。
「マジかよ……」とか「辻宮、正気か?」とか「あの女狐に辻宮くんが……!?」とか「辻宮くんが穢される、許せない……」とか。全部どうでもよすぎて聞き流したけど、藤堂さんの方はそうもいかなかったらしい。
「あの、私辻宮くんに迷惑かけるのはほんと、本意じゃないっていうか、一緒にいると君まで悪い噂流されちゃうと思うし、学校で会ったりするのもできれば周りの目に触れない形の方がいいんじゃないかな、とかって思ったりして……」
「ふ~む。なんだろ、なんか釈然としないなぁ、それ」
「釈然としない、って?」
「だって藤堂さんが俺の恋人でありこの先の人生の伴侶であり俺にとっての永遠の愛であることは、他の人間には関係ないことじゃん。どうこう言われる筋合いないよなぁ、って……」
「でも、それは私が……え、今辻宮くんなんか言いました? すごく聞き慣れないこと言われた気がしたんですけど」
「藤堂さんが俺の恋人でありこの先の人生の伴侶であり俺にとっての永遠の愛であることは変わらないから、モブは黙って放っとけって言った」
「…………勘違いしてるかもだけど私にそこまでの価値絶対ないよ?」
藤堂さんは自分の価値を正しく知らないようである。嘆かわしいことだ。
「あの、とにかく私が言いたいのはですね? トイレかどこかで気持ちいことゲフンゲフン時間を潰してから帰るようにするので、辻宮くんは先に教室に戻っていてくれませんか? っていうことをですね、その、言いたいわけですよ」
「……」
「あ、あの、決してトイレで変なことしたいからとかではなくてですね? あ、いや辻宮くんと一緒にいるのが嫌なわけでもないですしむしろ一緒にいるとムラムラじゃないやドキドキして嬉しいんですけど人には分相応な振る舞いというものがんっちゅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
言い訳がましいことを言い始めた藤堂さんがなんか不意にめちゃくちゃ可愛く見えたのでキスした。すげえ可愛い。好き。
ただ、この妙に自信がないというか、すぐに卑屈になっちゃう感じのところはどうにかしてあげたいなぁ。彼女のために俺ができることってなんだろう? どうしたら藤堂さんは、彼女自信の価値というか魅力というか、とにかく俺にとっては本当に最高の女性だってこと分かってくれるのだろうか。
「あ、ちゅ、んぁ♡ や、ん、ちゅ、んちゅ……ぷ、ぁあああ……♡」
なんてことを考えながらキスしていると、藤堂さんがもがくような身振りを見せたので口を話した。
するとめちゃくちゃエロい顔になっていた藤堂さんは、懇願するように呟いた。
「あにょ……♡ と、トイレ、いかへてくらはい……♡」
……この日は仕方なく、一人で教室へ戻った。
正直、今回は俺に非があったと思います。はい。
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どうもこんにちは作者です
気づいたら1000フォロワー突破していたようで、有難いやら申し訳ないやら
本業がだいぶ忙しく、空いてる時間に好き勝手に書き散らしているこんな作品をこれだけの人が読んでくれていて本当に嬉しいです
この先も気持ちの続く限りはこの作品の続きとか、塩漬けにしている他の作品の続きとかを書いていきたいと思っています。コメントも凄い励みになってます。いつもありがとうございます
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