ブラジル 3
そして私はその集落の長に案内されながら中に入る。その集落は木でできた高床式のような住居が五、六ほどあるだけで、坂に沿う様に作られており、皆犬を飼っていた。
その犬はよそ者の私に吠え、そして家人に怒られて吠えるの止めるという、一連の手順を全家庭分繰り返す。最後にその集落の一番上の、ちょっとした広場のような場所に案内される。
そこの広場でテントを張らせてもらう事となった。私は礼を言い、そこにあった白いプラスチックの椅子に三十分ほど腰かけた後、テントを荷物から出す。
そして同時に荷物を広げ悩む。はっきり言って余計な物が多い。使わない道具が無ければ腱を切る事もなかったのではないか。まずは携行物の軽量化が必要だろう。
どうしたものかと考えていると、集落の子供達が漫画のように塀からこちらを覗いてみている。
彼らに笑顔を向けると子供達は寄ってきた。異邦人、それも肌の色すら違う私が珍しいのだろう。子供達は快活な男の子と、太った女の子と、痩せて綺麗な女の子の三人だった。
男の子は太った女の子が好きなようでちょっかいをかけつつも、集落の周りを案内してくれた。太った女の子はちょっかいに反応しながらも一緒に回った。痩せた綺麗な子は少し引っ込み思案ながらも、なぜか私に食べ物やお菓子をちょいちょいプレゼントしてくれた。
案内をしてくれた後、男の子は弓矢を持ってきて弓の打ち方を教えてくれた。弓に詳しく無いが、大きさからして短弓と呼ばれる物であろう。私は弓を全く知らなかったが、男の子に撃ち方を教わるとうまく撃てた。
漫画みたいに弓を横にしないのかと聞くと、そんなのしないと首を振る。案内するときはかっこつけて木の棒を振り回したりと見た限りの子供相応な様子だったが、弓を撃つ事にかっこつけないのは大事な事だからだろうか。
子供達に何日居るのかと聞かれたが、流石の疲労からか一日と答えられず、二日と答えた。一応ここの長にも一日、二日と答えたからたぶん平気のはずだ。
そして日が暮れると、その男の子の家族が家に招待してくれた。高床式の家の中に入ると、いきなり居間で奥にテレビが一つあり、子供が六人ぐらい居た。
招待してくれた方はタクシーの仕事をしている男性で、子供の親かと思ったがなんと兄弟だと言う。何人兄弟だと聞くと、記憶も定かではないが確か十二人兄弟だという。
驚く私に日本はどうなのかと聞かれ、多くても三人だと答えると逆に向こうも驚いていた。
そしてその居間のテレビで映画を見る。とはいえその家は居間しかないようなもので、横に掛布団などが転がっており、あるのはそれと床とテレビだけだ。
その映画のヒロインはなぜか首に「安」の字が書いてあり、あの字の意味は何だと聞かれたので、話す為に持ってきた電子辞書で安いって意味というと本当にそうなのかという話になった。
そのまま夜も更け、彼らと別れる。家々に飼われている犬は昼こそ皆私に吠えたが、夜になった今は目が合っても静かな為にきちんと分別が出来るのかと感心しながら坂を上り、テントで服を着替えて寝る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます