初冬の思い出

それから何もかもが大変だった。米粒程の文字が大量に書かれた書類に沢山サインをしたり、パスポートを取らされたり、俺の才能を伸ばすための訓練もしたりした。


他にも色々したが、全ては今日のため。


全ての準備が完了した所であるホテルを訪れたのだった。


「ボウズ頼むぞ」

「大丈夫、問題はないと思う」


俺はおっさんから手渡された仮面を被る。

そして俺は重々しい装飾がされた扉を開けたのだった。


瞬間、馬鹿でかい雑音と異様な熱気が体に走り抜けていく。


このホテルはただのホテルではない。

ここはドバイの違法カジノなのだ


世界一裕福層が集まる街、ドバイ。そこは宝くじなどの公営ギャンブル以外の賭け事は禁止されている。それ故にこういった違法カジノでは莫大な金が動くのだ。国に金を納める必要がないため還元率が非常に高い。ギャンブルで稼ぐのならばここ以上の場所はそうないだろう。


豪華絢爛。この場所を表現するならその四字熟語がピッタリだ。

至る所に過剰な装飾を持った家具が備え付けられており、天井には機能よりも派手さを重視したシャンデリアが会場を輝かせていた。

至る所で湿った笑い声と怒号が聞こえる。仮面を被った客が至る所でゲームに興じており、それを複数の黒服達が監視をしていた。


なんて場所なんだ。映画でしか見たことない非日常的な雰囲気を生で感じ、心が怖気付くのを感じた。

俺はここにいていいのか?


「分かっているな?」

おっさんが俺の背中を叩いた。


……言われなくとも分かっている。俺がここにいるのは命を守る為だ。俺は自分の足を思いっきり踏みつける事で気合いを入れる。


俺は辺りを見渡して1つのテーブルに着いた。ここではお客さん同士でポーカーを行う、つまり対戦型のギャンブルが出来るのだ。


ポーカーのルール、そして必要な英語は全て覚えて来ている。元々医者になるつもりだったのだ、そんなのは朝飯前だった。


しばらく待つと俺の他にプレイヤーが3人集まった。どいつもこいつもカモが来やがったという表情をしてやがる。


__どっちがカモなのか教えてやる。


テーブルに着いた全員が同意するとディーラーがカードを配り始めた。自分以外の誰にも見えないようにカードを捲る。2ペアだ。大丈夫、悪くはない役。

他のユーザーを眺めると、どいつもこいつもポーカーフェイスを気取っているが、色は隠しきれていない。

俺よりも大きい役を持っていそうなのは1人だけだ。だから俺は自信満々に賭ける。するとソイツから自信の色がほんの少し薄れていくのが見えた。

コイツは押せば降りるな。そう確信して大量のコインをレイズする。すると1番役が高いプレイヤーがおり、何故か1番役の低いプレイヤーが勝負に乗ってきた。


……何かあるのか?いや、大丈夫だよな?

自分の能力に不安がよぎった、この勝負に負ければ本当に何もかもがなくなってしまう。そう考えると降りた方がいいかもしれない。

迷っていると背中から「信じろ」という声が聞こえてきた。単純な言葉だが勇気をくれる。


「コール」


いよいよショーダウン。相手はエースの1ペア、そして俺はジャックとクイーンの2ペア。


俺の勝ちだ。


他のプレイヤーは俺を子供だと思って上機嫌に賭けたコインを渡す。しかも祝福の言葉までおまけしてくれた。


まだまだ俺の事を舐めていてくれるみたいだ。やりやすくて助かる。さぁ骨の髄までしゃぶりつくしてやろう。


__そして伝説の夜が始まったのだった。



~~~



「ガッハッハッ!ボウズお前は凄いな!ボロ勝ちじゃないか!」


「あーー緊張したーー」


あれからカジノで連戦連勝。圧倒的な報酬を手に入れてそのまま宿に帰って来たのだった。流石に自分たちだけでは危ないのでボディガードを雇い、今は部屋の前で警備してもらっている。


今日、俺たちの計画は成功した。


報酬の半分は現金で貰い、もう半分はおっさんの隠し口座に振り込まれるらしい。全て含めると日本円でどれくらいの価値があるのだろう。分からないがきっと見たことも無い金額になるはずだ。



「金だ!これが勝利ということだボウズ!お前はやる男だと思っていた」

おっさんは心底楽しそうにそう言った。値段を聞くだけで卒倒しそうなワインを浴びるように飲み、上機嫌で俺の事を様々な言葉で褒め称える。正しく勝利の美酒なのだろう。


「お前は救いだ!きっと天が情けをくれたに違いない!これで、これで、やっと、やっと娘を救える未来が見えた!運命なんぞ金の力で蹴散らしてやる!」


思わず口角が上がるのを感じた。体から興奮がいつになっても抜けない。俺は勝ったのだ。一晩で大量の金を稼いだのだ。


「おっさん、これでお金の問題は解決?」


「いいや、まだだ!金は多ければ多い程いい!だからボウズ、これからももっともっと稼ぐぞ!」


「……そうなのか」


それならば少女が助かるまで俺はこのおっさんと一緒に金を稼ぎ続けようか。それで困ることは何も無いだろう。


「おっさん、次はどこに行くんだ?」


「そうだなぁ今回は流石に目立ちすぎた。次はロサンゼルスに行くぞ。あそこは規模がでかいからなあまり目立たないだろう」


俺がそれに相槌を打とうとした時である。突然、パンッといった乾いた破裂音が二つ続いて鳴った。

もしかして銃声?おっさんも同じ結論に至ったのか顔が真顔に変わっている。


2人して顔を見合わせていると、部屋の扉が開け放たれた。

そこに居たのはおっさんが雇ったボディガードだ。

早口の英語で何かを叫んでいるが聞き取る事が出来ない。


おっさんはすぐさま立ち上がり、ベランダの窓を開けた。


その瞬間、破裂音がもうひとつ鳴り響く。それと同時にボディガードが倒れ込む。扉の奥からやって来たのは黒い覆面を被った男。

その見た目だけで間違いなく強盗だと確信できた。


ヤバい。俺は何をしたらいい?何も出来ずに突っ立っていると覆面男は俺にも分かるシンプルな英語を喋った。


「where is the money(金はどこだ?)」


金、そうだ金だ。

金なら覆面男の足元のバックに入っている。そう思い立った時、俺はバックに向かって走り出していた。


このままだと少女を救うための金が取られる。それはダメだ。何をしてもあの金は奪わせない。

俺には特別な力がある、俺ならきっと__


瞬間、体が持ち上げられるのを感じた。体が反対方向に引っ張られる。何事だと、振り返るとおっさんが俺を抱えていた。


おっさんが何やら英語を叫ぶ。それを聞いた覆面男が足元のバックを開けた。


何してるんだおっさん!?そう言おうとしたが、次の瞬間にはベランダに連れて行かれ、布で出来た袋のようなものに落とされた。

いや、これは袋じゃない。学校の避難訓練で使ったことがある。確かこれは救助袋と呼ばれるものだったか。緊急時に滑り台のように脱出出来る避難器具だ。


俺はぐちゃぐちゃになりつつも滑り落ちる。地面に着くと直ぐにおっさんも降りてきて俺を抱き抱えて走り出した。


「ボウズ!無事か!?怪我はないか!?」

「で、でもお金が……」


「バカ!金よりも命だろうが!」

「__ッ!」


偽りの色が全くないその言葉が、真っ直ぐに自分の胸に突き刺さる。


おっさんの真剣な表情を見て俺は気がついた。俺はこのおっさんに命を救われたのだと。


なんだよおっさん。ちくしょう、あんなクソ野郎なのに……


かっこいいじゃんか。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あの後、何がどうなったか余り覚えていない。全てを任せていたらいつの間にかおっさんの家に戻って来ていた。


「ギャンブルはリスクを考えると割に合わん」


おっさんは吐き捨てる様にそう言った。


「じゃあ、どうするって言うんだ」


「……元々ギャンブルなんぞで資産を作ろうとしていたのが間違えていたのだ。邪道な方法はもう取らん。真っ直ぐ正しい方法で稼ぐぞ」


「正しい方法?」


「私の会社の利益をあげるのだ。元よりそのつもりだったしな」


「おっさん、社長だったのか」


「今までなんだと思ってたんだ?」


「悪い事をしているお金持ち」


「まぁ少しは合っているのかもしれんな……」


「で、俺はどうしたらいい?もうお払い箱か?」


「いいや、お前にうちの会社を手伝って貰うぞ。お前は有能だ」


「はは」


ストレートな褒め言葉に乾いた喜びを感じた。俺はまだ活躍できる。俺にもできることがある。それだけでまだ頑張れる気がした。


「私の会社を手伝うということは、もうただの学生には戻れないぞ。お前の青春を貰う。いいか?」


「俺の青春はこの家で眠ってるんだよ」


「洒落た返事じゃないか」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~


それからの日常は一変した。

中学校にも行かずにひたすらおっさんを手伝っていた。

おっさんの会社は名前は聞いた事はないがその業界ではかなり大きい会社らしい。

そこでの俺の仕事は"人材登用"だ。

おっさん曰く、人間は嘘をつく生き物だ。イエスがイエスを意味せず、自信はありませんが不可能ですを意味しない。

世の中には言葉が足りなくて自分の実力を十分に伝えきれない人がいる。世の中の人々は「実力を伝えきれないのも含めて本人の実力だ」と言うが、それは間違っている。それは見る側の目が足りていないだけだ。

そして俺の色の力ならば見る目は足りている。

緊張して何も喋れなかった大学生も、上司をぶん殴って会社に追われた人も俺には必要な人だと分かった。

俺はそんな何か問題があると言われる人達に会って必要な人材をどんどん発見していったのだった。


会社の力は人の力だ。それがおっさんの会社のポリシーらしい。良い人材が集まったこの会社は大きく成長していった。


中学校で卒業式が行われる頃には会社は驚くほど成長し、俺はその会社の非公認の幹部のような立場になっていた。


今は通信高校に籍だけを置いて、そのままおっさんの右腕として働いている。







そして俺の18歳の誕生日。

おっさんにある料亭の個室に呼び出された。


「おっさんに誕生日を祝う気持ちがあるとは思わなかったよ」


「相変わらず皮肉が得意だなボウズ」


挨拶代わりの軽口を叩き合い、俺たちは少し笑った。俺達の関係も変わったものだ。今では確かな絆さえ感じる。


おっさんが日本酒をどこからか取り出し、それを杯に注ぎ込む。


「今でも愛しているのか?」


「じゃなきゃ誰がおめーなんかを手伝うかよ」


「なるほどな、分かりやすい」


おっさんは機嫌良さそうに笑った。そして並々と酒が注がれた盃を俺に渡す。


「飲め」


「はぁ?俺が何歳になるか知ってるよな?」


「いいから飲め」


有無を言わさぬ圧力。俺は雰囲気が変わったのを肌で感じた。

俺は震える手で盃を受け取り、ゆっくりと口に運び一気に飲み込んだ。

衝撃的な味だ。今まで味わったことの無いツーンとした匂いが鼻を抜ける。俺は涙目になりつつも毒薬のようなその液体を飲み込む。


「愛しているか?」

さっきと同じ質問。だが重みが違う。俺は心を正して言葉を発する。


「色褪せることなく、ずっと愛している」


「……そうか、お前はいいな」

おっさんは小声でそう呟いた。


「……」

俺はそれに聞き返すことも返事することもしなかった。ただただおっさんの覚悟が出来るのを待った。

しばらくして、おっさんは自分の分の盃をゆっくりと持ち上げる。そして、何もかもを忘れさせるような豪快さで一気に飲みきった。


「……お義父さんと呼ぶことを認める」


「は?」


「もし娘とお前が結婚することがあったとしても、それを祝福してやるってことだ」


「えっと……それって……」


俺が言葉に迷っていると、おっさんの顔色がドンドン赤くなって行くのが見えた。それはお酒のせいでないことは俺には簡単に分かった。なんだよ自分で言って恥ずかしかったのかよ。


「はは、慣れない事をするんじゃねぇよ」


「うるさい!とにかく認めるって言えば認める!」


そういって、おっさん酒をもう一杯飲みきった。

それから俺たちは少女の思い出を一晩中語り合った。

お義父さんと呼ぶにはまだ早いけど、まぁいずれそう呼ぶこともあるかもしれないな。


ははは、本当に本当に幸せな夢だ。



~~


そして次の日。

衝撃的な連絡がおっさんから届いた。


「ドナーが見つかった!?」


「ああ!そうだ!これで娘は助かるぞ!」

興奮気味でおっさんがそう報告する。


「お金は大丈夫なのかよ!?」


「当初の予定以上に会社が成長したんだ!十分に決まっている!順番抜かしの費用、凄腕の医者を雇う金、そして心臓の購入費、全て万全だ!」


「ということは?」


「ああ、もうすぐ会えるぞ!」


「……よかった」


俺は膝から崩れ落ちた。心の底から安心すると人間は力が抜けるのだなと人体の不思議を体感する


「とにかく、コールドスリープから起こすぞ。ゆっくり起こしていくから5日はかかる。手続きは全てこっちでやるからな、お前は娘が目覚めた時になんて言うかでも考えておけ」


「はは……そうするよ……」


俺は力なく笑った。

そっか……助かるのか……もうすぐ会えるんだな……よかった……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



少女の目覚めの日の3日前。

俺はいつもの様におっさんの家を訪れていた。


玄関を開けようと自分がドアノブに手を伸ばそうとすると、誰かが家から出てきた。


「ん?ああ、あの子の彼氏か。久しぶり!」


確かこの人は少女がコールドスリープする現場にいた黒い服装の女性。この人はコールドスリープの業者か何かなのだろうか?それにしては口調が砕けすぎている気もするが……


「久しぶりです」

俺は短くそう返事をした。すると黒い服装の女性は俺の目を覗き込むように顔を近づける。

……不気味なほどに美人だと思った。


「君、いい成長したね〜。君の将来が楽しみだ。じゃあねー」


そう言って帰っていった。

なんだろう何故だか嫌な予感がする。


慌てて家に入ると、おっさんが憔悴しきった表情でただずんでいた。


「……何かあったのか?」


「…………」

おっさんは何も答えない。


「今更秘密は無しだろ」

俺がそういうとおっさんは深い絶望を含んだ目で俺を見た。その目は「私を許してくれ」と語っているように思えた。


「話してくれ」


「あの子の体力を考えるともう一度コールドスリープを行うことはできない。もう元には戻れない……だからこそ……いや、だからこのタイミングなのか?まるで悪魔の罠みたいだ……」


「……何が起きたんだ?」


「ドナーの取り合いが発生した」


「……どういうことだ?」


「私たちの他に今すぐ心臓を欲しがっている人が現れたんだ……しかも相手は私以上の資産家らしい……私がもう契約したというのに突然現れて倍以上の値段でドナーを奪い取ろうとしている……こんなバカな話があるか……」


その言葉以上におっさんの心が、表情が、どれほど危機的状況なのか教えてくれた。


「つまり、金が必要という事か?」


「……そうだな。金があれば更に奪い返せるかもな」


「なーんだ、簡単なことじゃないか。いっぱい金を借りればいいだけじゃないか!」

おっさんを安心させようと必要以上に明るい声を出す。


「相手も命がかかって居る。向こうも必死なんだぞ」


「それでも何かしなきゃダメだろうが!」


「そうだな……なんとかしなければ……」

そう呟くがおっさんは動こうとしない。


「……俺は行くぞ。どれぐらい金があればいい?」


「……」

おっさんは返事をしない。ただただ何かを考え込んでいる。


「そこで突っ立ってろ」


そんなおっさんに見切りをつけて走り出す。俺だって人脈が沢山できたんだ。片っ端から電話したら誰かはお金を貸してくれるだろう。もうそれしか方法はない。命が掛かっているんだ。

絶対に金を集める。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



少女が目覚めるまであと1日。

各所に取り合って金を借りる約束を取り付けて来た。だが、思ったよりも金額が少ない。

やはり俺じゃ信頼が足りない、おっさんじゃなければ。

もうおっさんを説得するしかない。そう覚悟しておっさんの部屋をノックする。


「入っていいぞ」

そう返事が来たので1度深呼吸して扉を開ける。

部屋を覗き込むと、おっさんは重々しい顔をして、机に座り込んでいた。


「……お金はどうだった?」

おっさんが試すような口調でそう尋ねる。


「アンタじゃないとダメだとよ」


「だろうな」

おっさんは少し笑ってそう答えた。


「だろうなって……そっちはどうなんだよ?まさか何もしてないってことはないよな?」


「これを見ろ」

おっさんはそういって写真を1枚取り出し机の上に乗せた。

そこに写っていたのは、見たこともない女の子の笑顔。


「誰なんだ?」


「向こうの資産家の娘だ。この子も今すぐ心臓が必要な病気だとさ」


「そうか、この子が……」

この子もドナーを必要としているのだろう、そう思うと運命の無情さを感じずにはいられない。

顔さえ知らなければこんな同情するような気持ちもなかったのだろうか。


「……色々考えたがやはりこれしか方法はない」

そういっておっさんが机の上に黒々とした物体を置いた。それは本来、日本では決して存在してはいけない物__


「な、なんだよそれ」

おっさんは拳銃を握りしめた。


「これでこの娘を殺す」

言い放ったその言葉には、反論させないとする圧力がこもっていた。


「……そんな事が許されると思ってるのか?」


「思っている訳なかろう。だが……」


「もっと他に方法はあるはずだろ!」


「ならば私に教えてくれ!どんな方法があると言うのだ!?」


「……それは」


「そう、ないのだ!!本当にこれしか方法がない!」


「それは流石に早まりすぎだ!まだ他に何か方法があるはず」


「そういってチャンスを逃すのか!?」


「人を殺すチャンスの事か?」


「人を生かすチャンスの事だ!」


「ならば人を殺すな!」


「どっちみち同じ事をするつもりだった!私たちが心臓を手に入れれば結果は同じだ!やっていることは何も変わっていない!」


「詭弁だ!」


「私はあの子を救うためならなんでもする。お前も同じ気持ちだと思っていたのだがな」


「違う……俺だってなんでもするつもりだ……なんだってしてやる!でも、これだけは……ダメだ!ダメなんだ……アンタがそれをやったら終わりなんだ……」


「感情ではなく、理性で考えろ。今回の心臓が手に入らなければ私の娘が死ぬ。そして、心臓を手に入れたならば向こうの娘が死ぬ。最初からそういう仕組みなんだ!そして先に殺そうとしたのは向こうだ!」


「……それでも!」


「私はなんでもする」

おっさんは力強くそう言い切った。


俺にはおっさんを説得する事ができないのか?

おっさんは自分が捕まろうが、どうなろうが助けようとする覚悟をしてしまっている。

俺はどうしたらいい。どうしたらおっさんを止める事が出来る?どうしたら少女を助ける事が出来る?



突如家が大きく揺れ始めた。

__地震だ。かなり大きい。

まるで子供が飛び跳ねて遊んでいるベッドの様に床が震える。

あちらこちらで様々な破壊音が鳴り響く。恐らく家具が倒れたのだろう。


「……これも偶然なのか?」

激しい揺れで俺が崩れ落ちる中、おっさんは動じることなくそう呟いた。

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