仲秋の思い出

少女と付き合った。その事実が今更になって自分に突き刺さってくる。

意味もなくシャドーボクシングをしたくなってくる。

体を動かしていないと喜びでどうにかなってしまいそうだ。


ただ「少女は死ぬ」、その言葉を思い出すと、舞い上がった足を強引に地面に引っ張られる様な感覚がした。


「なんでだよ……」


誰に聞かせるでもない声がついこぼれてしまった。

深く考えれば考えるほど絶望が胸を燻る。頭がパーになってしまいそうだ。


考えたくない、だけど考えなければ……

矛盾する思考、そして感情の荒波に揉まれながらも必死に考えてたどり着いた答えは_____



「俺が医者になろう」


医者のオジサンは、将来的に薬での治療が出来ると言った。ならば俺がそれを手伝ってやろう。いや、手伝うじゃない。俺が作るんだ!俺が少女を救う薬を作るんだ!


その答えに辿り居たら、じっとはしてられない。医者のオジサンが言っていた少女の病気についての論文を探そう。



しばらく時間がたった。

インターネット上で例の論文らしきものを見つけることができたが、それを意味することが全く分からない。しかも、この論文は英語で書かれているため、読むのも一苦労だ。


意気込みだけで解決できないだろうというのは分かっていた。

ただあまりにもこれは……


いや、こういうのは順番が大切だ。まずは基礎からじっくり……

ああ、医学の免許をとるには大学に行かないとか……そっちの方面の勉強も並行して……


そう、俺ならできる。出来るはずなんだ。出来ないと、駄目なんだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



遂に!遂にあの人と付き合えましたよ!

幸せで頭がどうにかなってしまいそうです!


だいたい何年思い続けたと思っているんですか!!

まったく、本当に遅すぎですよ。本当に……


もっとはやく付き合えたら良かったのに……


なんで、私は死ぬんです?なんで私にタイムリミットがあるんです?

どうしてなんですか……?

ああ、折角幸せなのに……幸せなのに頭がどうにかなってしまいそうです。


むせ返りそうな絶望を心に無理やりしまい込んでっと……


どうせ死ぬのなら、悔いのないように精一杯生きましょう!!

死ぬまで生きましょう!!

死ぬまでは一瞬たりとも死んでやりませんよ!!毎日を楽しく!太く!生きてみせましょう!


これこそが私の運命に対する反逆です!!

なんです!!!







「………………死にたくないなぁ」

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