第2話 あの日につながる部屋。
夕食は、近所のスーパーで買ってきた。
帰ってきて、自分の部屋に直行する。
昔だったら、この部屋で食事なんて考えられなかったけれど、今日は、賑やかだったリビングで食べる気がしなかった。
「酒が飲みたいなぁ」
真っ暗な階段を駆け降りて、キッチンで酒を物色する。すると、飲みかけのワインしかなかった。
「……最近、補充してなったしな」
俺は飲みかけのワインとグラスを持って、いま来た階段を駆け上がった。
階段を上がりきると、隣の部屋の扉が開いていた。少し前まで、あおいとあかねと3人で寝ていたその部屋は、今日は暗かった。
おれは、中を覗きたい気持ちになったが、首を横に振って自分の部屋に戻った。
部屋に戻って、弁当を食べる。
そして、ワインをつごうとして、思い出した。
「これ……、あおいと飲んだワインだ」
これを飲んだ時、リビングで一緒に映画を見たんだっけ。結局、途中で眠くなってしまって、あおいに「続きは、また一緒にみよう」って言われたんだ。
おれはテレビに電源をつけて、その映画の続きを流した。
映画はSFものだ。長い旅路を冬眠状態で過ごした主人公が、その最果てで、恋人と一緒に、未知の星を開発するというものだった。
さしずめ、未来版、西部開拓時代といったところだろうか。
あおいと一緒にみた前半部分は正直微妙だったが、後半部分はすごくよかった。
「一緒に観たかったよ」
俺は弁当を一口食べた。
今日はつまみも弁当なんかになっちゃって、なんだかあおいに申し訳ないと思った。
ワインをグラスに継ぎ足して、乾杯の動きをする。すると、どこからか、グラス同士がカツンとぶつかる音がした。
「……飲み過ぎちゃったな」
俺は、テーブルの上のゴミを片付けると、グラスを置きにキッチンに行った。グラスを洗って食器棚に戻すと、あおいのグラスがないことに気づいた。
これはペアで買ったグラスだ。あおいのは、どこにいってしまったんだろう。あいつ、知らない間に割ったのかな。
また早足で階段をのぼる。
2階につくと、暗い中、俺の部屋だけ明かりが漏れている。色々あったのに、俺の部屋だけ前と変わらなくて、ちょっと不思議だなって思った。
その日は、酒を飲んだせいか、そのまま早寝してしまった。
何時間か経った頃、なんだか息苦しくて目が覚めた。すると、コンコンと、誰もいないはずの隣の部屋から音が聞こえたのだ。
これは、隣の部屋のベッドが壁に当たる音だ。あおいが寝返りをうつとき、アカネが飛び跳ねた時、いつもこの音がしていた。
「この音、懐かしいな」
身体を起こすと、自分の目尻からツーッと涙が流れ落ちるのがわかった。
おれはテーブルにある時計を見た。
「……2時か」
その日は、その懐かしい騒音を聞きながら、いつの間にか寝ていた。
その日から、夜中の2時頃になると、いつも不思議な音が聞こえるようになった。
がらんどうの家。 おもち @omochi1111
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