騎士団長をクビにされた俺が学校の先生になったら何故かハーレムが出来上がっていた
一ノ瀬和人
1章 騎士団長と3人の花嫁候補
第1話 クビになった騎士団長
「クリス・ウッドワード。今日この時この限りで、王立クロムウェル王国近衛騎士団団長の任を解く!」
「はぁ!? いきなり人を呼び出しておいて、何寝ぼけたことを言ってるんだよ!?」
「言葉の通りだ。この前行われた会議の結果、クリスには近衛騎士団団長を辞めてもらうことになった」
俺は城の中にある王の間で、この国の国王であるアイリス・E・クロムウェルを前にして大声で怒鳴ってしまう。
でも俺がそんな風に声を荒げてしまうのも仕方のない話だ。
この世界で最強の一角と言われている王立クロムウェル王国近衛騎士団。その中で最高位の役職である団長を何の理由もなく辞めろと言われたらみんな俺と同じ反応するだろう。
それぐらい近衛騎士団の団長をクビになるということはこの国にとって重大な事柄だった。
『聞きましたか? 王様がクリス様を騎士団長の座から降ろすんですって!?』
『アイリス様は何を考えているんだ!? 今クリス様を解任したら、騎士団そのものが瓦解しかねないぞ!?』
いきなり団長を辞めさせられて困惑しているのは俺だけではない。
突然の騎士団長の解任劇を側で見ていた王様直属の従者達は俺以上に困惑していた。
「おい、
「冗談ではない。わしは本気だ」
「あんたに本気だと言われても信じられるわけないだろう!! あの騎士団をこの世界で1番強くする為、この2年間俺は必死に頑張ってきたんだ!!」
「もちろんそれはわしも知っている。クリスがこの国の治安を守る為、あの腐りきった騎士団を立て直してくれたことには感謝をしている」
「それなら尚更おかしいだろう!! 何で俺が団長を辞めさせられないといけないんだよ!!」
「あまり大声で騒ぐんでない。これは宰相のアレンと何度も相談して決めたことだ。私の独断で決めたわけではない」
「アレンだと!? 何故ここであいつの名前が出てくるんだよ!!」
王様が名前を呼んだアレンという男はこの国の宰相を務めるアレン・エレオノールのことだ。
アレンとは小さい頃からの幼馴染で俺が親友だと思っている唯一の人であった。
「(その親友が俺を辞めさせるためにあのじじいに口添えをしただと!? 一体この国で何が起きてるんだ!?)」
アレンは7年前この王宮で勇者に選ばれ、この世界を滅ぼそうとしていた魔王を討伐する旅に出た。
幼馴染だった俺は1人で旅に出るあいつの事が心配だったので無理を言ってついて行き、この世界を滅ぼそうとしていた魔王を倒してこの国へと戻ってきた。
「(あの旅の道中では色々なことがあったけど、無事この国に戻ってくることが出来たんだよな)」
魔王を倒す旅をしている途中、何度死にかけたかわからない。
それこそ体中傷だらけになりながら、死ぬような思いをして俺達は魔王を倒した。
「(それから俺はこの国の騎士団長となり、アレンはこの国の宰相になったんだ)」
それからの2年間、お互い仕事に忙殺され会う回数は激減したけど俺達の仲は変わらなかった。
会えばお互いの近況や悩み相談をしながら、朝まで酒を酌み交わしながら将来のことについて語り合った。
そのぐらい仲がいいあいつが俺を辞めさせるような事を提案するなんてありえない。絶対にこれは何かの間違いだ。
「おい
「クリスには悪いがアレンと話す事は出来ない」
「それは何故だ?」
「アレンは今他の大臣達と会議中で、とてもこちらに来れる状況じゃない」
「そんなこと言ってる場合か!! 大臣達との会議よりもこの話の方が100倍重要だろう!! 四の五の言わず今すぐ連れてこい!!」
目の前で仕事を失いかけているのにも関わらずその理由すら教えてもらえないなんて、どう考えてもおかしい。
きっとこれは俺に対して反感を持ってる貴族が何かしたに違いない。
そうでなければ俺が騎士団長を解任されることなんてありえないだろう。
「落ち着けクリス!? アレンが今出席している会議は今年の予算を決めるための重要な会議で‥‥‥」
「そんなことはどうでもいい!! いいから早くこの場にアレンを‥‥‥」
「僕のことを呼んだ?」
声のする方に向かって振り向くと俺の親友であるアレン・エレオノールがうゆっくりと王の間へと入ってくる。
一緒に旅をしていた時とは違い眼鏡をかけているが、その美しさは変わらない。
光が反射する程のサラサラで綺麗な茶色の髪に女性のような端正の顔立ちをしている。
「(この顔は間違いない。俺と一緒に魔王討伐の旅へと出かけたアレンだ)」
彼が俺の方へと近づいてくる度にその予感が核心へと変わる。
それと同時に親友に裏切られたという絶望が俺の心を侵食しいく。
「おぉ! アレン!? 良い所に来てくれた!」
「アイリス王。お疲れさまです」
「そんなことよりも会議は終わったのか? 今日はこの国の大臣達を集めて、今年度の予算を決めていたのだろう?」
「その会議はちょうど今終わった所です」
「もう会議が終わったのか!? まだ始まって30分も経ってないのに。やけに早いな」
「そうなんですよ。こんなに早く会議が終わったのは会議に出席していた大臣達のおかげです!
「どういうことだ?」
「理由はわからないんですが、僕が決めた予算案に大臣達が1人も反対せず、首を縦に振ってくれたおかげで会議が早く終わりました! みんなものわかりがいい人で助かります!」
嘘つけ。その会議がスムーズに行くように全部アレンが仕組んだんだろう。
あいつのことだ。きっとこの会議が開かれる前に大臣1人1人に対して根回しをしていたに違いない。
きっと俺には予想もつかない方法であの大臣達を黙らせたんだろう。
にこやかに笑うアレンに対して顔色が真っ青になった大臣達が予算案の書かれている紙に承諾のサインをする姿が容易に想像ついた。
「おい、アレン!! お前に1つ聞きたいことがある!!」
「何?」
「さっき
「うん、本当だよ! アイリス王は何も間違ったことは言ってないよ」
俺はアレンの性格を知っている。こいつは嘘をつくような奴じゃない。
これが何かのドッキリだと思いたいけど、そうではないことがはっきりとわかった。
「(アレンが嘘をついてないというのなら、俺のことを解任する理由がなんなのか余計に気になってくる)」
魔王討伐の旅が終わった後、何の仕事をしようか悩んでいる俺のことを心配したアレンが王様に直訴してまで俺を騎士団長にしてくれた。
それなのにどうして俺を推薦してくれた人の手でその役職を解任されないといけないんだよ!!
最近若手も育ってきて、やっと騎士団の立て直しが軌道に乗ってきたのに。
志半ばで離れるなんて後悔してもしきれない。
「アレン!! これはどういうことなんだ!! 俺を騎士団長の座から降ろすなら、その理由をちゃんと説明しろ!!」
「落ち着いてよ、クリス!? これには山よりも高く、海よりも深い理由があるんだ!?」
「ならさっさとその理由を話せ!! お前が言い出したことじゃなかったら、俺はこの場で暴れていたぞ!!」
アレンが言い出した事なので怒りを抑えているが、これが他の奴だったらとっくのとうに手を挙げていただろう。
今の俺はそのぐらい怒っている。理由もなく騎士団長を辞めさせられるなんて納得できない。
「わかった、わかったよ!? 今からちゃんとその理由を説明するから!? とりあえず一旦落ち着こう!?」
「チッ」
「ありがとう。クリスのこういう素直な所が僕は好きだよ!」
俺が矛を収めるとアレンは屈託ない笑みを見せる。
こういう無邪気なところがあるから、俺はアレンの事を憎めないんだよな。
アレンが時折見せる少年のような笑顔を見ていると、先程までの怒りが自然と収まってしまう。
圧倒的な武力だけでなく、人を落ちつかせる癒しのオーラ。それが人たらしでもあるアレンの武器でもあった。
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本日より投稿を始めました! しばらくは1日2話投稿をします
続きは夜の19時に投稿する予定なので楽しみにしてください!
最後になりますが、拙作をご覧いただきありがとうございます。
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