第22話
「文野が、俺のことが好き……?」
「そうよ!」
嬉しい、これほど嬉しい言葉は無いだろう。
だけど、どういう部分が好きになったのかが分からない。俺はぼんやりとだけど、いつか文野と結婚するんだよなって曖昧な感覚でいたし、横に居て当然と思っていたから、盗られるかもしれないっていう今回の出来事で自覚して思いを突き動かした。
じゃあ、文野はどういう思いで動いていたんだ……?
「ど、どういう所が好きになってくれたんだ……?」
「……あまり自分から言うのも何だから言わなかったけどさ、三大美女って知ってる?」
「ああ、何か文野もそれの1人になってたな」
「これさ、一見聞くと勝手に決めた美女じゃない?」
「そうだな」
「逆だよ。これ、口説いても落ちない堅い女扱いの意味だよ」
「……!?」
涙ながらに語られた内容に思わず声を失った。
アニメとかだと、もてはやされる美女の1人だと考えていたが、逆で落ちないから選ばれた1人って事なのか。そう聞くと美女って所が皮肉のように感じる。
「分かる?優しいから気があるんだって告白してきて、断ったら憤慨されて、それで付いた仇名なのよ?」
「そ、そんな事が……!?」
真相を知ったら、その仇名をつけた奴に対して言い様の無い怒りがこみ上げてくる。そして、それに一切興味を持たなかった自分自身に対しても怒りが込みあがる。美女と呼ばれてるねーとしか思わず、知らない所でずっと傷ついていたなんて。
「だから、メガネで広まった時、陥落させたいって人が少なからずいたのよ……」
「……知らなかったじゃ、済まされないな。ごめん、気づかなくて」
簡単に考えていたが、まさか深刻な内容になっていたなんて。メガネ云々としか思っていなかった思慮の浅さをこれでもかと突き刺されるような感覚だ。
でも、これだと気づかない俺に対してこう、八つ当たりの憎悪とか湧かなかったのだろうか?
「なあ、それだと俺に対して苛立ちを覚えなかったのか?」
「……覚えない訳じゃ無かったよ?でもね、それ以上に変わらないで居てくれたのが凄い嬉しかったの」
「変わらないで居た?」
「だってさ、三大美女と聞いても、メガネの外した姿を見ても、それで態度を変えるって事、一切しなかったでしょ?」
「文野は文野だろ?そこに何の違いがある」
「その変わらない態度が私にとっては凄く有り難かったの」
変わらない、か……。そういえば、メガネとコンタクトレンズ、どっちが良いとか聞いてきてた事がちらほらあったけど、そうか、変わってないか確かめていたのか。それで変わらないから安心して関われたと。
「困ったら助け舟出してくれてたし、何があっても変わらない味方で居てくれる存在だから、安心できるの」
感情的だった文野が、少し落ち着いてきたようだ。変わらないでいるってそんなに嬉しい事だったのか。思えば男共からガードだなんだ言われてたのを気にも留めなかったが、そうか、文野からしたら助けられていたのか。
「宮坂はずっと私の事を幼馴染として見てたけどさ、私は中学生辺りからずっと好きだったんだよ?」
「……え!?そんなに前から!?」
「そうよ、全く……」
最低2年、最長4年半の片思いをしていたというのか文野は……。
長い思いに気が付かなった自分の鈍感さが嫌になる。気づいていても違ったら嫌だなーとかあれば、まだ変わったかもしれないのに、無自覚だったからな。
「あのね、いくら仲が良くても異性と相合傘なんて聞き入れないわよ普通」
「てっきり気心知れてるから大丈夫だと」
「……それにさ、濡れてるの知ってタオルを渡すのに疑問を覚えなかった?」
「優しいから渡してるのかなって」
「その場で返してもらうわよ。持って行っても良いのなんて、好きな相手じゃ無いとしないわよ」
知らない所で思いっきり好意を向けられたのを、俺は気が付かなかったみたいだ。幼馴染だから、って思っていたが、そうか、ずっと、好意を、異性として好きとみられていたのか。
ヤバい。今更ながら両思いだと知って恥ずかしさと嬉しさが込みあがってきた。
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