第21話

「文野」

「どうしたの?」

「今日、一緒に帰ろう」

「?うん」


真偽を確かめたくて文野を下校に誘いに行った。それに対して文野は何となくOKを出した感じだ。

まだ間に合うだろうか……?下校時間までそんな纏わりつく不安を抱えながら過ごしたもんだから、授業なんてまるで頭に入ってない。

そんな状態で逸る気持ちを抑えながら文野が来るのを待った。


「ごめん、待った?」

「大丈夫、寄り道していくが良いか?」

「う、うん……何かいつになく怖いよ?」

「あ、わ、悪い」


いつもと違うのを悟らせた事で文野を不安にさせてしまった。本当に情けねぇ。でも、次なんて無い可能性もあるんだ、今動かないと。

そう思って、前に文野に連れて貰った昔なじみの公園まで寄り道した。


「あれ、ここ公園じゃん」

「そ、前に来た昔なじみの公園」


椅子が設置されてる所まで行って、文野の方に振り向く。

怖い。なんて言われるのか分からない恐怖がある。だけど動かないともっと怖いものが訪れる。なら、今動かないといけない。


「話がある」


火蓋は切って落とされた。自分から逃げ道を塞いだ事によって、もう逃げられない感覚だが、逃げたら終わりだ。


「噂についてなんだけど」

「えー噂って、相手はいとこだよ?宮坂にも伝えてるじゃん」

「そうだけど、文野はいとこの事をどう思ってるのかなって」

「仲の良いいとこでしか無いよ?」

「だけど、いとこ同士って結婚できるんだろ!」

「え!?なんで飛躍してんの!?」


文野はいとこの事をどう見てるのか知らないが、良くも悪くも無い感じだ。

だけど逸る気持ちが思わず話を飛躍させてしまった。だけど、可能性が無いわけじゃないんだろうと思うと気が気でない。


「ちょ、ちょっとストップ!なんで結婚にまで飛躍したの!?」

「いとこなら問題無いと思ったら、結婚できると知ったから。今も交流があるって事は悪く思ってないんだろ!」

「え、あ、ん?……あー、ちゃんと言うべきだったか」


今の文野の言葉がきっかけになったのか、心臓の鼓動が嫌になるくらい聞こえてくる。もしかして、俺は気づくのが遅かったとか、そういう話なのだろうか?


「えっとね、いとこには恋人がいるよ?」

「その相手が文野なのか?」

「違う……そっか、見た目は男の子だもんね」

「……見た目は、男の子?」

「私のいとこって女の子だよ?」

「はあぁあぁぁぁぁぁぁ!?」

「まあ証拠が無いと分からないか、ほら」


そう言われて見せられたのは文野といとこが一緒に写ってる姿だ。噂と違わぬショートヘアーに高身長と男そのもので、文野が嘘をついてると思った。


「たぶん噂の本人はコレ、でも」


次に写されたのは水着姿だ。

だがその姿は誰がどう見ても女の子と言わざるを得ない。どうやって隠したんだと言いたくなる程度の双丘の持ち主だった。


「普段はさらしを巻いて隠してるのよね、大きいのがコンプレックスって」


さらしで隠してたとか、知ってる人がいないと絶対に勘違いする。

じゃあなんだ?俺が慌てたのって、まるで意味が無かったとか、そういう事なんだろうか?そう思ったら気が抜けて座り込んでしまった。


「良かった……!」

「今日は宮坂らしくないよ、どうしたの?」


文野は俺の今の様子を見て心配をかけさせてしまっている。

俺らしくない、か。だけど、こんなにも安心してしまったんだ。

どうしようも無く俺は文野に惚れこんでるんだと嫌でも気づく。


「お前に彼氏がいるんじゃと思ったら気が気で無かったんだよ」

「私もいとこが女の子なのを言わなかったのも悪いけど……ちょっと、噂の方を信じたって言うの!?」

「悪いか!思った以上に俺、文野の事が好きなんだよ!!」


開き直りのヤケクソな情けない告白なのは自分自信でも分かってる。

いとこは女の子だった。でも、次は奪われるのかもしれないと思ってしまった以上、動いて変えるしかない。思いを吐かないと落ち着いてられない。


「え……?」

「このまま文野と結婚して、他愛ない話をして一生を閉じる人生を送るんだよなーってとしか考えてなかったんだよ!」

「冗談とか、嘘じゃ――」

「冗談も嘘もこんな事言えるか!横にいるのが当然だった文野が居なくなるかもしれないと思ったら居ても立っても居られないんだ!悪いか!」


ただ嘆くように、叫んでる様にしか思えないくらい思いの丈を大声で言った。


「……夢じゃ、無い」


文野が自身の頬をつねって夢では無い事を確認してる。そしたら突然涙を流した。


「良かった、初恋が叶った……!」

「……初恋?」

「私も宮坂の事が好きなの!悪い!?」

「……え」


聞き間違いじゃ無ければ、文野は俺の事が好きだと言ってくれた。

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