第12話
梅雨が始まったのか、ここしばらく雨が止まない。
雨が止まないからムシムシとした、へばり付く暑さが鬱陶しさに拍車をかけて集中できない。
「という事でクーラーをつけようと思う」
鶴の一声と言うべきか、担任の先生からクーラーの解禁を言われ、クラス一同が喜んだ。勿論、暑苦しくて敵わなかった俺も喜んだ。
クーラーの稼働し始める音と共に流れ出す冷風が心地よく感じる。
「寒かったら言えよ」
「寒い奴なんていねーだろ」
1人の男がそう声に出した。
この時期で寒かったら高熱がでてる人だろうなと思う。それか極度の寒がり。
そんな快適な環境になった教室で授業を何の問題も無く進めて行った。
涼しい事で皆授業を集中してる中、声が出た。
「せ、先生……寒い……」
いた、1人いた。4時限目の途中、1人の女の子が自身の身を抱き寄せるように縮こまっていた。
「ん?そうか?じゃあ切るか?」
「おいおい!クーラー切られたらコッチは暑いって!」
クーラーを切られそうになった事で反対し始めた人が出てきた。何言ってくれてるんだコイツといった感じで睨んでる人までいる。まあ俺も切られるのは嫌だけど、それはそれで気になる。
何で寒いのかと。
「ん~……服が冷えたか?」
ありそうなのが汗で濡れた制服が冷えて想像以上に冷たくなってるか。
ただ、これが真夏であれば納得できるが梅雨入りして間もないし、体育の後でもないから、汗なんてそこまでかかないと思う。
それに言っては悪いんだが俺は廊下側の席でクーラーの真下だ。つまり冷風が来ないので涼しい風を浴びる事が出来ない。
「悪いけど木村、皆がこう言ってるから我慢してくれ」
「……は、はい」
考え事をしていたら、周りに合わせるようにと言われた木村さんは引き下がってしまった。周りからは切られなくて良かったという安堵の声と、何言ってんだコイツといった感じの侮蔑の声がひそひそと聞こえてきた。
「ふむ、気になるな」
正直なところ、気になる。俺は快適だが、木村さんは寒いと。
なぜ寒いのか?それが分かれば良いが、体質ならどうしようもないし、そもそも関りが無いからどう関わるべきか分からない。
「というか、場所的に羨ましいんだよな」
木村さんのいるところはクーラーの冷風がちょうど当たりそうな所で、暑い夏を過ごすならここって席に居座れてる事だ。
なんて考えていたら4時限目、つまり昼休憩が始まる時間のチャイムが鳴った。
「……」
居心地が悪いのか木村さんは何処かに走って行った。まあさっきまでの空気ではあまり居たくはないだろうとは思うが……。
「よー宮坂!食べようぜ」
「食べよー」
「おっす橘と東谷」
考え事をしていたら橘と東谷が尋ねに来た。考えても埒が明かないし、ご飯にするか。そう思って各々弁当を広げて食事を開始した。
ちなみに橘の弁当は自炊した物だ。前みたいなスターゲイジーパイは橘が鬱陶しいと思った時に作ってくるから早々には来ない。何よりあれ美味しいけど作るの大変らしいし。
「そうだ、橘。あの男分かるか?」
「誰だ?」
「ほら、前に文野の事を昔から云々言ってた奴」
「ああアイツ?
前回聞きそびれた内容を今日やっと橘に聞いた。興味が薄れるととことん忘れるのをどうにかしたい所。
「なんだってまた?」
「あ、文野の事が心配になった?」
心配……心配だな、あまり怒るような事をする性格じゃ無いし、嫌いでもああやって遠まわしで言って流してしまうし。
「うんまあ、少しな。怒ってただろ橘」
「宮坂が言うのなら怒ってたんだろうな」
「押し付けは良くないもんねー」
そうだな、押し付けは良くない。本当に。
押し付け、そうだ、押し付けと言えばだ。
「なあ、それとは話を変えるけど、この時期に寒がるのってあり得るか?」
昼休憩を早々に出て行った木村さんの寒がりについて2人に聞いてみた。
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