第11話
今日は橘が言った、弁当を持って来るなと言った日だ。言い換えればふるい落としの日でもある。
改めて説明すると、橘はクラスの委員長で自炊してるので家事能力も高い男だ。
そこにルックスも良いとなれば我先にと群がる女の子はいて当然と思う。
「てことで持ってきたぞ宮坂と東谷」
「待ってました!」
「今日はデカいって事はあれか」
「そろそろ梅雨だろ?蒸し暑さで汗をかくし、丁度いい奴だ」
季節に合わせて作ってくる橘の気概にますます女の子は群がるだろう。だけどそれを散らす程に持って来る自炊料理がある。家が学校から近いから出来る芸当だと思う。
「何を作って来たんだろう?」
「ケーキとか!?」
橘の手料理が見たいと集まった外野の女の子が、橘の作った料理をキャーキャー予想してるが、正直これを当てられるとは思えない。
既にふるいにかけられたであろう女の子はしかめっ面で橘が出そうとしてる料理を見る前に退散していった。
「今日のお昼はコレ!」
「……え?」
「何……あれ……?」
周りの期待の声は静まり返った。そりゃそうだろう。
保冷バッグから取り出されたのは、魚を上に向けて突き刺さったようなパイが現れた事で今度は困惑の声が聞こえてきた。
英国料理の1つであるスターゲイジーパイなんて誰が予想できようか。そもそも料理名を知らない可能性の方が高いな。
言ってしまえば橘はメシマズ系なのだ。
ただ変なアレンジをするとか、時短の意味をはき違えたメシマズと違い、一般受けをしない物を好んで作ってくるタイプの、メシの見た目がマズいだ。
と言っても見た目がアレなだけで英国の正式な料理だし、俺はこういう料理もあるのかという興味と、東谷はうんうんこういうのを作るのも良いよねってスタンスなのでこういうのを気にしない。
「毎度思うが塩気が利いて良いなコレ」
「夏本番の塩気を取りつつ食うならこれかも」
「作った甲斐があるもんだ」
俺と東谷からの誉め言葉を素直に受け取る橘。
ぶっちゃけ橘の作る料理は美味しいので見た目でギャーギャー言わなければ普通に良い彼氏に出来そうな存在である。
それに好んで作ってくるだけで、普通の料理も持って来るし。
「えー……なにあれ……」
「あれ食わされるの?それはちょっと……」
「ねえ、あれ調べたらマズい料理らしいよ……?」
ただ女の子達からしたらドン引きで先ほど外野に居た子達が散っていき、誰も残らなかった。今回も全員アウトだったか。
俺と東谷は気にしないが、周りはそうもいかない。いやまあ勝手に期待して勝手に幻滅してるだけなのだが、橘にとってはこれが手っ取り早いんだとか。
「うーん、今回もいなかったか」
「なんだってまたスターゲイジーパイ?」
「見た目の評価だけで決めて避けさせるからね、これ」
「まあ見た目はやばいもんね」
そう、見た目は本当にヤバい。
荒れた海を表す為に魚をパイに突き刺さった様な感じにしてるが、知らなければ適当に突っ込んだと思われるだろうし、レビューだけ見て不味い物と決めつけたら作ってきたコレも不味いと判断してしまうのだろう。
が、そこは橘が食いやすいようにしてるから至って普通に美味しいスターゲイジーパイになっている。
食わず嫌いで橘を逃してる女の子は多数だ。そこは俺には関係無いからどうでも良いけど。
「君ら2人、どっちかが女の子だったらゾッコンだったろうになぁ」
「やめてくれ寒気する」
「流石に男はNG」
「酷い……」
俺と東谷から総スカンをくらって橘がちょっと落ち込んだ。
急にそんな事言われても、それはそれで、これはこれだ。余り興味を持てない事が多いが、流石に男を好きになるのは友情までだ。それ以上は勘弁願いたい。
なんて思いつつも、3人がかりで食べればあっと言う間に終わった。
「ごちそうさまでした」
「ごちそーさん」
「はいお粗末様」
取り決め事の1つに、作ってきてくれたら食材費を払うと決めてる。と言っても一々勘定するのも面倒なので500円ほどだが。
「今回はダメだったけど、次逃げない子がいると良いね」
「だね。まあその内なんとかなるでしょ」
「俺は他の料理が気になる……」
正直、橘の見た目がまずい料理はそこそこある。作る勇気は無いが食べたい興味はあるので、また開いて欲しい所だ。
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