第7話 義妹
「う~ん、あんまり反応が良くないな……」
マッチング魔道具『デスティニー』で以前ミラさんから貰ったように自分が気になった相手にスタンプを送ってみたものの、相手からお返しのスタンプを貰えずにメッセージのやり取りまでいかないということが続いていた。
「やっぱ人狼族ってのが微妙なのかな……」
人狼族は正直言ってガラが悪かったり、いわゆる脳みそ筋肉みたいな男が多い。
低賃金の肉体労働をしている割合も高いので、オレが使っている『デスティニー』にいるそれなりに稼いでいて育ちが良さそうな種族の女性からはイメージがあまり良くないのかもしれない。
「年収高い人狼族の男だと、逆になんか怪しい仕事してそうとか思われてんのか……?」
プロフィール上に公開する年収や職業は自己申告制なので、信じてもらえてない可能性もあるんだよな。
でも聖国軍の第8師団長とか馬鹿正直に載せて部下にバレるのは避けたいところ……
コンコン。
「ルイソンお兄様~! いらっしゃいますか~?」
「フランキスカか……おう、いるぞ~」
「お邪魔しますわ!」
ガチャッ! っと部屋の扉を開けて元気よく入ってきたのは、オレが養子として迎え入れられたオブシディアン家の娘、フランキスカだ。
オレが養子に入った数年後に生まれた彼女は、人狼族であるオレのことをお兄様と呼んで慕ってくれている。
ただ、最近はちょっとその慕い具合が重いというか……
「お兄様、先日の土曜はいつもよりオシャレしてお出かけなさってましたわね? もしかして……逢引きですの!?」
「いや普通に遊びに行っただけだが」
「お相手はどなた? 部下のハルバードさんではありませんよね?」
「最近知り合った人だよ」
「男性ですの?」
「……女性だけど」
「やっぱり逢引きですわ!!」
唐突に怒り出すフランキスカ。
こいつ、最近こんな感じでヤキモチ焼きがすごいんだよな……まあ、可愛い義妹ではあるんだが。
「いや、別にちょっと夕食と酒場を一緒しただけでだな」
「お酒を飲んでえっちなことしたんですわ!」
「してねえわ!」
よく分からない怒り方をしながらボフッとオレの背中に抱き着いてくるフランキスカ。
「それではお兄様、わたくしも酒場に連れて行ってくださいまし」
「フランキスカはまだ15才だろ。酒はダメだ酒は」
「む~! じゃあ結婚を前提にお付き合いしてくださいですわ! 15才になった大人のわたくしとなら何をやっても大丈夫ですのよ!」
「なにも大丈夫じゃないが」
本気なのか分からんが、この間15才の誕生日を迎えてからこうやって結婚してだのデートしてだの言ってくるようになったんだよな……
義理とはいえフランキスカは妹。齢も10個離れてるし、恋人同士になることなんて考えたこともなかったぜ。
「大体お前、休日はインロック義父さんから貴族の舞踏会とか参加するようにって最近言われてるだろ」
「貴族のお坊ちゃまとはお付き合いする気が起きませんわ。それに……」
「それに?」
「わたくしの好みはルイソンお兄様みたいなもふもふ獣人系の殿方ですから!」
さいですか。
「……貴族のパーティーにはいないのか? オレみたいなもふもふ獣人は」
「胸毛もじゃもじゃゴリラ人間しかいませんわ」
「ゴリラ人間って……」
まあ、エルフ族ならともかく、サンブレイヴ聖国の貴族家系に獣人系の亜人がいるとか聞いたことないしな。
「ねえルイソンお兄様~お酒はもういいですから、休日一緒に遊びに行きたいですわ~」
「分かった分かった、今度の土曜にハルバードと出かけるから一緒に行こう」
「何もわかってませんわ! それじゃあお兄様と二人っきりに……」
ピロン♪
「おっ?」
そんな感じでフランキスカと話していたら、『デスティニー』からスタンプの通知が届いた。
どうやら誰かからマッチング希望が届いたらしい。
「……お兄様?」
「な、なんだ?」
「今何か、通知音のようなものが……」
「き、気のせいだろ」
危ない危ない、マッチング魔道具なんか使ってるのがバレたらフランキスカに何言われるか分からんからな。
「さあフランキスカ、そろそろ夕食の時間だろう。今日はオレも外食じゃなくて一緒に食べるから」
「じゃあこのままおんぶして行ってくださいまし」
「……15才は大人なんじゃなかったのか?」
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