ギアナイツ・クロニクル

序章：戦争の始まり

ティラノアの悲劇 ①

ティラノア暦 3120年5月

　ティラノア連邦は、多様な文化と豊かな歴史を誇る国であり、その街並みはこれを物語っている。中央広場では、市民が議論を交わし、議会堂では代表議員たちが国の未来を議論している。広場を囲む建物群には、最新の技術を駆使した施設や歴史的な建造物が並び、過去と未来が交錯する光景が広がっていた。

惑星ティラノアは、豊富な資源を持つ惑星であり、その資源を巡る争奪と利益の独占が激しくなっていた。ティラノアだけでなく他の惑星間でも、資源を巡る戦争や対立が絶えず、各組織が自らの利益を追求するために競い合っていた。

　戦争による混乱がティラノア全体に広がる中、平和の回復を目指す努力も続けられていた。各国の対立が激化し、人々の生活は日々の不安に包まれていたが、それでも平和と共存を望む声は消えることがなかった。

　ティラノア連邦議会のダミリド議長は、貿易都市シルバーホルムでの重要な会議に出席していた。議長が議会堂に到着する際、数体のギアナイツが護衛として随行している。

　ギアナイツはシャープなラインと未来的なフォルムを持つ人型ロボットで、各関節や装甲部分には精巧な歯車が露出しており、その動きが視覚的に確認できる。頭部のデザインは騎士の兜を連想させ、メタリックなシルバーを基調とし、ゴールドやブルーのアクセントがある。各部にはLEDライトが組み込まれ、特に目の部分は鋭く光るデザインで威圧感と威厳を演出していた。

　その頃、制御センターでは天候管理衛星ステラリスの軌道が突然ずれ始めたことが発覚していた。技術者たちは状況を把握し、対応に追われていた。

「何事だ！」

「アレックス司令、ステラリスの軌道が外れています！」

　通信士が緊急報告を行う。

「ステラリスがシルバーホルムに向かって墜落中！」

「墜落まで残り四時間もありません！」

　通信士が青ざめた顔で応える。

「全システムに問題発生！制御が効きません！」

　技術者が焦燥感を隠せない声で報告する。

「すぐにシルバーホルムの住民に緊急避難命令を発令しろ！」

　アレックスが即座に命令を下す。

「住民を安全な場所に誘導しろ！ステラリスが地上に向かっている！」

　ステラリスが大気圏に突入し、その摩擦で白熱し始めた。まるで彗星のように、炎の尾を引いて夜空を切り裂くように降下してくる。地上では、不吉な光を見上げる人々が次第に増え、恐怖と混乱が広がっていく。

「見て！あれ！」

「落ちてきてないかい？」

　ある青年と近くにいた老婦人が驚愕の表情を浮かべる。

「お母さん、怖いよ！」

　小さな子供が母親のスカートにしがみつく。

その瞬間、市民の携帯端末が一斉に鳴り出した。

ジリリリリ―― ！

と緊急アラームが響き渡り、画面には「緊急避難指示」が表示されている。

「衛星ステラリスがシルバーホルムに向かって墜落中！」

「皆さん落ち着いて避難してください！」

　市民たちは叫び声を上げながら逃げ惑う。

「家族を探して！急いで！」

　母親が子供たちに叫ぶ。

「こっちへ！こっちへ逃げるんだ！」

　ティラノアの軍人が必死に人々を誘導する。

　　　　　　　　　　　　　　＊　　＊　　＊

　その混乱の中、黒マントをまとった謎の人物が市民たちの混乱を冷ややかに見つめている。彼の目は冷酷で、人々の悲鳴が喜びをもたらしているようだった。

「見ろ、我々の計画が成功した。全ては我々の思い通りだ」

　謎の人物が不気味に笑うと、部下が敬礼しながら答える。

「はい、全てはあの男の指示通りに進んでいます」

　謎の人物は少しうなずき、腕時計型の通信装置を操作して、冷たい声で命令を下す。

「あぁ……全部隊に通告する。衛星の墜落までの残り時間は四時間。計画通りに行動せよ。」

「は！」

　通信装置から部下たちの声が次々と返ってくる。

「ミサイル発射用意」

　謎の人物が命令を下すと、部下たちは迅速に動き始める。操作パネルの前に座る技術者が報告する。謎の人物は邪悪な笑みを浮かべ、「撃て」と冷酷に命令を下す。

部下たちが同時に指示を繰り返し、ミサイルが発射される。夜空を切り裂く閃光とともに、ミサイルは目標に向かって飛び去っていった。

「着弾確認。目標を破壊しました」

　通信士が冷静に報告の後、謎の人物が力強く命令する。

「よし、次のステップに移る。ギアナイツ部隊、俺に続け！」

「は！」

　部隊は一斉に返事をし、黒いギアナイツに乗り込む。その姿はまるで現代の騎士団のようであり、その威圧感は一目瞭然だった。

「ギアナイツ部隊、ターゲットに向かって進軍せよ！」

　謎の人物が冷酷な命令を下すと、黒いギアナイツが一斉に動き出す。その巨体が地面を踏みしめる度に、周囲の建物が揺れ、恐怖と混乱が広がっていく。

「住民を発見。処理する。」

　ギアナイツが無感情に報告する。

「やれ」

　謎の人物が命令を下すと、ギアナイツのレーザーライフルが一斉に火を吹き、目標を次々と破壊していく。その光景はまさに戦場そのものであり、ティラノアの街は地獄絵図と化していた。

「これからはノクターンの時代だ」