ワールド・ジェイル

遊者

第1話 旅立ち

俺の名前はブレイク。出身は平凡な街で、不自由なく暮らしている。しかし、このまま親のすねをしゃぶりながら、生きていくのは、なんか申し訳ないから、明日この街を出ようと思っている。


このことは親に内緒にしておく予定だったが、シコシコ一人立ちの準備しているところを見られてしまった。


俺が出るということは、すんなりと受け入れてくれた。それもそのはずで俺も今年で成人だからだ。折角だし、最後にこの街を見ておくか。


別に、もう帰ってこないーとかそんなんじゃないからな!?勘違いすんなよ!今は、ただひたすらに、大通りを歩いている。この何も目的地が決まってないというのが好きなんだ。


分かるだろ?こう心の底からワクワクするというかなんというか,,,ロマン,,,そうロマンだよ。果てのない旅をしてますって感じがするからな。というか、この町は本当に何もないし変わっていないな。


少しの嬉しさと、悲しさが俺の心を埋める。って何考えてんだよ俺は。これから街を出るって決意して準備していたじゃないか。今更弱気になるのはやめよう。


明日のことは明日の俺に任せておくか。よし、飯にするか。朝から何も食べていないし、もう赤色の目玉が俺のことを見ている。今日は何を食べようか。この街に居るのは最後だからな。


ここでしか食べられないものにしよう。となれば思い出のあるあそこか,,,そうして俺は、夕日を背に腹を鳴らし、鼻歌を歌い、ご飯の待っているところに向かった。


「「お帰り~」」結局は家の飯が食いたくなるんだよな。こう落ち着くっていうか、安心するっていうか、好みなんだよ。照れるからあまり言いたくはないけどな。


「ただいま~。今日のご飯は何~?」いつもの調子で言う。あんまり親を心配させたくないからな。


「あんたの好きなものだよ」母さんがそう言って、食卓に食器を並べていく。本当に俺の好物しか並べられていない。キノコのシチューに、オークのステーキ。マンドラゴラのサラダ。


「あんたがもう家に来ないんじゃないかって考えたらさ、好きなもので送ってやりたいでしょ」その言葉に涙が出そうになる。


「もし、今日、家に食べに来なくても並べてたよ。あんたがいると思えるからね」母さんが泣きそうになりながら言う。


対して父さんは心配していない。それどころか「SEXしてから、顔を見せろ」何て言ってくる。


今すぐにこの町を出たい。


「そういえば、あんたがここから出ていくことはみんな知っているの?」ご飯を食べていると母さんが聞いてきた。


「誰にも伝えていない。でも、立派になったら戻ってくるよ」親指を立て歯を出して、爽やかに笑う。心配させないように。


「童貞だから、伝えられないんだよ」カッカと笑いながら、父さんが弄ってくる。


「ど、どど、童貞じゃないしーー!?あんま舐めんなよ!?」おっと、図星だから取り乱してしまった。でも、暖かいな。この街を出るにはふさわしい、賑やかな食卓だった。


「今日はもう寝るよ。明日早くに出るから、見送りはいらない」そう言って、自室に足を進める。今日の夜は眠れそうにないな。だってワクワクが止まらん!!!


成人しているとはいえ、俺だって男だ。未知との出会い。これはたまらない。冒険者は、誰だって憧れるものだろう。それに、明日俺はなるんだ。胸の高鳴りが抑えられない!


積み上げるは、富と名声。見上げるは、頂点。追いかけるは、モンスターの痕跡と女の尻。考えるだけで最高だ。


迷宮に、潜って?助けを求める美人な冒険者に出会って?助けてあげたら好意を持たれちゃって!?あぁ、たまらん。非常にたまらん!!


こんなことを考えているから、俺の息子が、タケノコニョッキのこんにちはをしている。早く鎮めて、今日は寝よう。


一発抜いた後、賢者になった俺はふと、窓から見える、外を見る。どこまでも続いている果てしない空。それを燃やすかのように光を放つ星々。孤独に浮いている、青い月。これから旅をしていく中で、どんな景色が、どんな出会いがあるかは分からない。


だた、一つだけ分かることがある。後悔は残らない。根拠はないが、そう思える。はっ!これが賢者の力,,,恐るべし。


「お休み」一人だけの部屋で呟く。そして、目を閉じる。明日から、いいことの連続でありますように。そんなことを考えながら俺は眠りについた。


チュンチュンと鳥が鳴く。その音で目が覚める。時計に目をやると五時。早朝だ。天気は快晴で気分が良い。


あとは、音を立てないように、家を出るだけ。荷物を背負い、部屋を出る。静かに、音を立てないように歩く。階段を下りれば、玄関だ。行ってきます。心の中で両親に言う。


「「行ってらっしゃい」」


後ろから生まれてから、ずっと聞いてきた、声がした。


今振り返ったら、出るのをやめてしまう。俺は男だ。決めたら最後までやり抜く。


「行ってきます」振り返らないで言った。何とか家を出れた。あとは門から、この町を離れるだけだ。


大通りを歩いていく。この時間は、店も開いていないし、人も歩いていない。いつもはこんな時間には、起きていないから、新鮮だ。


立派になる。そう意気込むと、感じ方も違う。細かいところまで、目が行くようになる。いつも見ている光景が、違うように見える。もしかしたら、幸せはこういうところに埋まっているのかもしれない。


あっ、今の主人公って感じが出ていいな。


こんなことを考えていると門が見えた。あそこを抜ければ、未知の世界が広がっている。少しだけ怖いだが、それをはねのける好奇心が、足を動かしている。


「門番さん。お疲れ様です」一応挨拶はしておく。門を抜けると、目の前には、草原が広がっていた。


奥の方には山が見える。地図を見ながら、どこに向かうかを考える。まっすぐ行けば町があるらしい。


誰が行くか。俺はこんな地図は頼りにしない。自分の力で、道を進めていく。それが茨の道だとしても。やっぱ俺かっこいいこと言う才能あるな。これ。とりあえず目的地は無し。モンスターを倒しながら、俺が思う立派な人間を目指そう。


「おーい」後ろから女の人の声が聞こえるでも俺に向けてじゃないよな。こんな朝っぱらからモンスターを倒している奴を俺は一人しか知らない。


「おーい」また聞こえた。でも無視。関わったらろくなことにならない。


「おーい。聞こえてるんでしょ?」しつこいな。


こういう時は、「ダッシュ!」地面を蹴り上げて推進力を得る。後は生まれた加速力でそのまま走り抜ければいい。


「コラ!待て!止まらないと魔法を撃つわよ?」


ピタっ!


「案外あっさり止まるのね!」


「そりゃそうだろ。魔法なんか当てられたら死ぬだろ」


「それより、あんた。私に内緒でどこに行くつもりなの?」


「えっ!?あ~えっと、七つの竜の球を集めに行こうかなと」突然の問いに、焦ってしまい、適当なことを言ってしまった。これだから童貞は困るぜ。


「見え見えの嘘はいい。本当のことを言って」まっすぐな眼で見られると、嘘は言えない。


「笑わないでくれよ?すげぇ人になりたいって思ったから」こちらも、まっすぐな眼で返す。


「笑うわけないでしょ。それよりさ、ブレイクの旅について行ってもいい?」


「俺と一緒でよければいつまでも」


彼女はフフッと笑うと「ありがとう。行こうか」と言い、俺の手を引っ張った。


彼女の名前はブラン。魔法使いで、俺の幼馴染。髪は赤が少し混じった、茶髪でショートヘア。紫の魔法帽が特徴的だ。正直滅茶苦茶にかわいい。隣を歩いているだけで、いい匂いがする。


こんなの、夜になったら、俺のにニンニンソードが抜刀されてしまう。


「ねぇブレイク。あんたきもいこと考えてるよね?やめた方がいいわよ」心を覗かれたッ!!??


こいつも俺と同じで魔法使いの才能が,,,ってこいつは魔法使いだった。


「本当に失礼なこと考えてるわね」


「お前との旅が始まるからな。楽しくなるに決まっているだろ」実際、ブランといるのは本当に楽しい。実はブランに告白するために、旅に出ることを決意している。嫌だろ。親のすねをしゃぶって生きているニートに告白されるのは。


このことは秘密にしとけよお前たち。


「それより、どこに行くのかは決めているの?」ブランが、上目遣いで見てくる。


「可愛い!」


{まだ決まってない。}


「ちょっと、出す方、間違えてるわよ」


「おっとあまりにも可愛かったもので」ブランの顔が真っ赤になる。


「か、か、可愛いだなんて、そんなこと言っても、何も出ないんだから!」


ポコっ。叩かれた。照れ隠しも可愛い。ブランたんは俺の嫁。


「で、本当に何も決めていないの?」


「本当に決まっていない。あっ、モンスターを倒して金は稼ぐよ」


「分かった」


「ほらちょうどモンスターが出てきたぞ」


「熊ね。ちょっとかわいい」


「俺とどっちが可愛い?」


「熊に決まっているでしょ。馬鹿な事聞かないで」


呆れたようにブランが言う。


「く、熊に負けた,,,おんぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ」


「ちょっとうるさい!長い!赤ちゃんになるな!!」ぼごぉ!腹を思いっきり殴られた。心と腹が痛い。泣きたい。


「うぐぐ,,,早く倒そう」腹をさすりながら、魔法空間から剣を出す。


「そうしましょ」ブランも、杖を構える。


グオオオオォォ!!!


熊の咆哮が戦いの合図だった。


「戦闘シーンは割愛!!何なら、解体シーンも!」


「なんかこの小説メタ発言多くない?気のせい?」


「作者も俺らが自由に動きすぎて収集が付かないらしいよ」


「それ、だいぶやばくない?もしかしたら」


「打ち切りがあるかもしれない」


「恐ろしいわね,,,」


熊の解体とキャンプの設営が終わり、夕焼けを見ながら話す。


「そういえばお前のテントが見当たらないけど、まだ魔法空間にしまっているのか?」キャンプの設営が終わったと思っていたが、テントが俺のだけしかなかった。俺のを加えたら二つか。


「持ってないわよ」oh,,,まじかよ。今日は二人で狭いテントの中で寝るっていうのかい!?俺のジュニアがアダルトになっちまうぜ!


なんてな。俺はそこら辺の区別はついている。焚火の前で、毛布に包まって寝る。


「そうか、ならお前がテントで寝ていいぞ。ていうか、新しいのが帰るまで俺は外で寝るからよ」流石は主人公の俺。機転が利きまくり。


「あんたに申し訳ないから、私が外で寝るわ」


「いやいや、女性にそんなことできるわけないだろ」間髪入れずにブランに言う。もし、俺だけがテントで寝ていたら、男どころか、主人公失格だ。ここはお前らのためにも、男を見せてやるぜ。


「そんなにいうなら、今日はテントで寝るわ。気遣ってくれてありがとね」


「くっっっっそ可愛いーーーー!!!!!」


{当然のことさ}


「あんたまた心の声と逆になってるわよ」


「仕方ないだろ。可愛いんだから!」ブランの顔を見てはっきりと、俺の意思が伝わるように喋る。


「何回もいうと価値が薄れるわよ」耳を赤くしながら、呆れたように言われた。なるほど。言葉には価値があるのか。価値が上がるように、あまり言わないようにしよう。


心の中で俺は誓った。立派になるまではこの言葉をあまり使わないと。


「寝るところは決まったから、飯にするか」熊の肉を見ながら、どう調理するか考える。


「熊の肉って臭いわよね」ブランが嫌な顔をしながら呟く。匂いが気になるのか。


「スパイスステーキなんてどうだ?そうすれば匂いは気にならなくなると思う」ブランに提案をする。


「その案いいわね。手伝うことがあれば教えてね」


「今日は疲れてるだろ?俺に任せて休んでてくれ」この言葉、言ってみたかったんだよな。かっこいいから。


「なんかブレイクに任せっきりで申し訳ないわね」ブランが見るからに落ち込んでいる!


ブレイクはどうする?


1:フォローの言葉をかける


2:そっとしておく


3:ブランのことを責める


この選択次第で、好感度が大きく変わるな。


3は論外だな。1と2どっちにしようか。


乙女心を理解していない俺にとって1は厳しいが、2にすると後悔する気がする。男を見せるかブレイク!よし。1で行くぞ!


「そんな落ち込むことは無いって。さっきの熊との戦闘も、お前の魔法が無ければもっと苦戦していたし。あと、水が足りないんだけど、魔法で出せるか?」この声掛けは完璧なはずだ。褒めているし、頼み事もしている。死角は無い!


「そうなのかな。そうよね。ブレイクが言うなら間違いないわね!水はどのくらいいるの?」ブランは嬉しそうに指示を待っている。ナイス俺。神プレー。お前らの目も変わっているだろ?


「そこの入れ物に満タンになるまで入れてくれ。明日まで持つはずだから」中くらいのバケツに指をさして指示をする。


一人旅でもいいと思っていたが、誰かと気ままに旅を挑戦するのも悪くはない。向こうが魔法で水を作っている間に、俺は料理でもするか。俺は魔法空間から、調理器具を取り出す。


どこにでもあるようなフライパンだが、俺らの旅の仲間だ、丁寧に使っていこう。焚火の上にフライパンを乗せ、油を敷く。そして、魔法空間から、ニンニクやハーブなどを出して入れていく。正直何が正解なのかは分からないが、美味しければいいだろう。


油に香りが移ったら、熊の肉を入れていく。大きさは俺の顔くらい。お前らは俺のことを想像することしかできないと思うから、巨大な肉だと思ってくれ。肉を入れたら、焦げが付かないように、何回も回していく。全体を焼いたら、少しだけ肉を休ませて、中まで火を通していく。


この工程を、中まで火が通るまで繰り返す。辺りがハーブとニンニクの香り。そして、肉のいい香りが立ち込める。これだけで、白米かパンが食べれるくらいだ。


白米が食いたいな。ここら辺だと、たまに来る行商人から買うくらいしか方法が無いからな。この際、極東を目指すのもありかも知れないな。


なんて思っていると、香ばしい匂いがした。もう焼けているな。


「おーいブラン。肉が焼けたぞ食べに来い」いまだに魔法を使っているブランに、飯の用意が出来たこと伝える。


「分かったわ。今行くわね」とてとてと歩いてこちらの方の来る。可愛い。


ブランの前に切り分けた肉と、パンを置く。もう我慢できない。


「「いただきます」」


同時に言うと、パンの上に肉を乗せ、大きく口を開けて頬張る。口の中に広がるパンチの効いたニンニクの匂い。それを包みこむかのような優しいハーブの香り。極めつけは、嚙むたびに出てくる肉汁だ。これがパンに染みていて、とてもうまい。熊の肉特有の獣臭さも一切無い。


至高の一品に出来上がっている。


「上手いなこれ。ブランはどうだ?」食べながら、ブランに感想を求める。


「獣の匂いもしないし、とてもおいしいわよ」口いっぱい入れている辺り、気に入っているのだろう。


「明日からは担当を決めて作業しないか?ブランもそのあたりを気にしてるし」肉を頬張りながら、提案する。


「いいわね。しっかり分けられるなら、効率も上がるだろうから」快く受け入れてくれた。やっぱ、美味しいものを食べていると、話し合いもスムーズに進むな。言い合いが無いのは寂しいが。


「ブラン。お前の魔法空間に、あの熊肉全部入るか?」魔法空間は生まれながらに総量が決まっている。俺の場合は一人旅するくらいなら困らないくらいの大きさだ。


「あのくらいなら余裕よ」ブランが熊肉に手をかざすと、一瞬にして消えた。


「今ので全部入ったのか。凄いな。」思わず口にしてしまう。ここまでの魔法は見たことが無い。いつも見ているのはじわぁ~と消えていく感じだから、すぐに入るというのは珍しい。


「見た感じあんたのは小さそうだから。、今度から私のに入れることにしましょ」


「了解です」あんなもの見せられたら、頷くことしかできない。おとなしく負けを認める。これで負け癖着いたらどうしよう。背中に寒気が走る。気を引き締めていかねば。俺にMの気はないんだ。


「あんたまた変なこと考えてるわね」ジト目でこっちを見るな!俺が限界を迎える!


「きょ、きょ、今日はも、もう寝よう!」目覚める前に逃げないと本当にやばい。俺は外に置いてある毛布に包まる。


「お前ももう寝た方がいいぞ?な?」


「そこまで言うなら寝るわよ」あくびをしながら、テントに向かっていく。


「「お休み」」この言葉を皮切りに、話し声が無くなった。外にいるからだろうか。木々がざわめく音。虫が奏でる音がはっきりと聞こえる。上を見れば、俺のことを照らしてくれる月が。いろいろな形を作れる星が見える。綺麗だ。世界はこんなにも美しいものだったのか。


「ブランと旅を始めて二日目だぞ!うれしいな!」早く起きた俺は、迷惑というものを考えずに叫ぶ。理由は特にない。あるとすれば、この旅が楽しくなってきたということくらいだ。


「朝から騒がしいわね」目をこすりながら、テントから出てきながら目をこすっている。


「仕方無いだろ!お前との旅が楽しいんだから!」ありのままの言葉をブランにぶつける。


「当たり前でしょ。私といればどんな時でも楽しくなるわよ」あまりない胸を張りながら、誇らしげにしている。


「それなら、俺とずっと旅をしような。俺も退屈させないから」負けじとアピールする。


「よくそんな恥ずかしいこと言えるわね」呆れたように、ブランが言う。


「ふっ。俺はこの小説の主人公だからな」


「あんたが主人公?,,,」顎に手を当てて、考えるような仕草をしている。


あれ?この物語の主人公って俺じゃないの?作者さん教えてくださーーい!!


【何とも言えません。変わるかもしれないです】


嘘やろ,,,俺が主人公じゃないと嫌だ!


【そういわれても、お前自由に動きすぎだから。作者に話しかけてきてるし】


自重するんで。勘弁してください。


【考えときます】


神様。感謝します。


「ブレイク。あんた誰と話していたの?」


「あぁ。作者様」


「当然の様に言っているけど、普通はありえないからね。で、何話していたの?」


「自由に動きすぎだから、自重してって」


「当然のことだわね」納得したように頷いている。


「まぁ、そこらへんは棚に置いて、今日の目標を発表します」


大きく息を吸い込んで「ゴホッゴホ。カハッ」思いっきりむせた。恥ずかしい。


「町に行って、日用品を買います」地図で近くの町を指さしながら話す。初めのほうで地図はいらないと言ったな。あれは嘘だ。これが無かったら死ぬやん。


「そうね。必要なものが多いから今のうちに買っておいた方がいいわね」ブランも賛成してくれているみたいだ。


「それで移動はどうするの?」


「いいことを聞くね。もちろんカット」


~いい感じの町~


「本当にカットしたわね!しかも町の名前も適当だし!」


「仕方ないだろ。作者が面倒だって」


「面倒でも書くのが作者でしょ!やり直し!


【すみません。修正します】


「分かればいいのよ分かれば」


「ブラン。お前も大概だからな」


呆れたように言うとブランは、「あんたのとは規模と格が違うのよ」と、反論された。ぐうの音も出ない。


【ここから書き直します】


ブレイクとブランは広々とした草原を歩き、街を目指した。道中、戦闘をしている音が聞こえたので、見に行ったが、すぐに終わったのか、モンスターの残骸だけが残っていた。不審に思いながらも、目的を達成するためにその場を後にした。


太陽が真上を過ぎようとしたところで、街を大きく覆う壁が見えた。今回赴く街の名前は、ガーランというところだ。


特徴は、町全体を覆う巨大な壁。中には、ガーランの後ろから流れる川が、通っている。大陸の中心からは、やや離れているが、交易が盛んに行われており、賑わっている。規制は少し強いが、二人は冒険者として活動をしているため、すんなりと入ることが出来る。今は検問を待っているところだ。


【こんな感じでどうでしょうか?】


「最低ラインギリギリね。でも、情景描写がある分想像しやすいわね」


「お前な。俺らの前にはあるんだから、そんなこと言わなくても,,,」


「読者が困るのよ!」まさかの気迫にぞくっとした。


「そうやってメタ発言するから、作者も困るんだぞ」


「なら、こうならないように、初めから真面目に書けばいいのよ」


【その通りです】


あぁ、作者が土下座しているところが見える。気の毒だな。


「よし。気を取り直して、街を探索するわよ」


「切り替え早いな!作者もほどほどに書いてくれよ!」


そして、俺たちは、壁を越えて町の中に入っていく。


超えた先に俺たちを迎えてくれたのは、とても美しい景色,,,ではなく、騒がしくも賑やかな、たくさんの出店と人々だった。


「思っていたよりも賑わっているわね」周りを見ながら話しかけてくる。


「そうだな。これだけ賑わっていると、前に進むのも一苦労だな」俺たちの目的は日用品を買うことだ。買えるところは二つあって、一つはここにあるような出店。もう一つは、異世界でおなじみのギルドだ。


「ブラン。出店とギルド、どっちのほうで買いたい?」


「そうね。質が安定しているギルドだわね。素材の買取もできるし」


「了解。なら、ギルドに向かいますか」俺たちは人の波を掻き分けながら、前へ、前へと進んでいく。

ただひたすら、一つの場所を目指して。あぁ、こういうこと言っている時が、一番気持ちがいい。


「おっ!そこの赤髪同士のお似合いカップル!アクセサリーはどうだい?」強面で禿頭、隻眼の俺よりもキャラが立っている店主が声をかけてきた。なかなか見る目のある人だ。未来のカップルを見抜くなんて。


こいつは十中八九童貞だな。なんて思っていると、奥の方から、それはそれは美人なお姉さんが、出てきた。童貞,,,じゃない,,,だと,,,俺の童貞センサーが、人の多さに誤作動をしていたようだ。


それにしても美人だ。すっと通った鼻筋に、優しそうな目に、碧眼。青の髪は腰のあたりまで、波を打って伸びている。このおっちゃん、羨ましいぜ。ま、ブランほうが、良いけどな。


「ちょっと。何見惚れているのよ」尻を思いっ切り叩かれた。痛い。横を見ると、頬を膨らませているブランがいた。拗ねている姿も可愛い。


「見惚れているわけじゃないです。アクセサリーを見ているだけです」これ以上怒らせるのはまずいから、すぐに訂正をする。


「ならいいけど。でもあんなに黙ってみているなら、買うのはもう決まっているわよね?」恐ろしいほどの圧が俺を襲う!!気のせいか後ろに鬼が見えるぜ。


「あー、えーと、これが似合うと思っていたんだよ」咄嗟に適当なものを、ブランの目の前に出す。


「あんた。これ,,,」何を出したんだ。俺,,,恐る恐る目を開けると、ブランが大好きな猫のアクセサリーだった。しかも色は彼女と同じ赤みの掛かった茶色だ。


「最高じゃないの!ありがとう!」手を握られて、感謝された。適当に出したものがここまで喜ばれるとは。ま、結果オーライということで。


値段は聞かないでくれ。ヒントは、俺の持ち物はほぼ無いということだ。アクセサリーを貰ってウキウキな彼女と、予想外の出費に肩を落としている俺。傍から見れば、騙された人だ。


でも、幸せならOKです。


こんなことがありながらも、ギルドに向かっていく。出店から遠ざかれば、人の通りも少なくなってきた。やはり、あの辺りが一番賑やかなのだろう。


「ブレイク。見えてきたわよ」彼女の声で、顔を上げると、大きな建物が目に入った。石で作られた重厚感のある堅牢な建物。高さは十数メートルで、上に行くにつれて、細くなっている。


一番上には、自由を象徴とする、青の鳩の旗が靡いている。ちなみに、設定だと俺の髪の色は、この旗の色と同じなんだぜ。


自由に動きすぎたせいで、持ってかれたぜ!チクショウ!!このあたりの話は番外編で。あるかどうかは分らんが。


「よし、行こうか」

俺らはドアを開けてギルドの中に入っていくのだった。

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