第14話 国家魔術官試験ー7
血継魔術? なんだろう。
俺が読んだ本にはそんなこと書いてなかったな。
「人類は
そういうと千歳さんは俺に背を向けながら語り始まる。
なんか普通のサラリーマン的なおじさんだったけど雰囲気あるんだよな。
「そんなある日、特に濃い血を持った歴史の深い五つの家の子に宿ったのです。誰も見たことがない特別な魔術……血継魔術が。のちの五大貴族と呼ばれるその家はその特別で強力な魔術で
「すごいんですね、血継魔術」
「ええ。ですが……失われました」
「え?」
「100年前、この国に現れた
「そうだったんですか……だから落ちた紫電なんて」
「ええ、そして当時最も才能のある魔術師が紫電家を継いだ。それが今の御屋形様の祖父に当たる方です」
父さんや土田さんが悔しそうに言ってたのは、そういうことだったのか。
アジア全土を守護していたと言っていたが、今では日本の守護だけという意味もなんとなくわかった。
「頭の良い君のことです。もう説明せずともわかるでしょうが、それから日本の凋落は始まりました。それでも他国にこの国を渡すわけにはいかないと我々も奮闘してきましたが、強力な
父さんが毎日奮闘していた理由がわかった。
日本の守護のためにと頑張っていた理由は、それが出来なければ他の貴族たちにこの国を守護してもらわなければならないからだ。
それはきっと、この国を奪われると同義なのだろう。
「…………話が逸れましたね。世界の広さというもの、そして最強が背負うものを私なりに伝えれればと思い話しました。少し難しかったかな?」
「いえ、でも……その言葉の重さ? っていうのがわかりました。僕はまだ何も知らなすぎます」
すると千歳さんはにこっと笑う。
「無知の知です。本当に賢い子だ。君は知らないということを自覚することができた。きっとここから多くのことを学べるでしょう」
俺は頷く。
言葉では何とでも言える。言うは易く行うは難し。
俺はまだこの世界を知らなさすぎる。
「では、夜虎君の面接を終了します。そして……魔術局局長、並びに十二天将家の長である貴人家当主――貴人千歳の名において、白虎夜虎の上級魔術官面接試験合格を認めます」
「貴人家当主?」
「ふふ、普通のおじさんですよ。ちょっと由緒正しい家に生まれただけのね」
どうやらこのおじさんは、貴人家という十二天将家の長である家の当主らしい。
魔術局局長ってめちゃくちゃ偉いんじゃないか? すごく親しみやすかったけど。
「僕、合格……でいいんですか? 何も知らないのに」
「とても悩みました。まだ合格させない方がいいのではないか、まだ小学生ですよと。でも先ほどの君の答えを聞いて、決めました。環境こそが人を成長させる。君の成長のためにはこれが一番良いと思いました。何も知らないからこそ、その環境に身を置いて、そこから世界を違う角度から見てください。大丈夫、我々大人が精いっぱいサポートします。それに若い芽を潰してしまうのは、老害の始まりですからね」
そういって千歳さんは俺の前まで来て俺の頭を撫でた。
「……今はまだ答えを出す必要はありません。心身共に成長し、命の重さも責任も、すべてがもう少し大きくなったとき。もう一度君の答えを聞かせてください。それでも一つだけ……私は君を応援してますよ、日本の若き虎」
「はい!!」
最後まで優しかった千歳さんに頭を下げて、俺は面接会場を出た。
◇
「よかったのですか? 千歳さん。さすがに小学生を面接で通したと世間に知れれば叩かれる恐れが」
「…………シンクロニシティという言葉をご存じですか?」
夜虎が出た後の面接部屋で千歳と部下が会話する。
「え? えーっと……偶然の一致。という意味でしたか?」
「少し違います。意味のある偶然の一致……という意味です」
「意味のある?」
千歳は目を閉じて、思い出す。
「先ほど私が言った五大貴族、紫電家を除くすべてに夜虎君と同じ年の子供が生まれています。えぇ、まったく同じ年にです」
「それは……すごい偶然ですね。ですがたまたまでは?」
「そしてそのいずれの子供たちも、血継魔術を受け継ぐことに成功し、さらにその才覚は過去最高で過去最強だともいわれています。全員がです。才能というのは波があるのに……まるで狙ったように、示し合わせたように。今、あの世代に人類史上最強が揃いつつある」
「…………それはなんと心強い!
「いえ、私の考えすぎであればいいのですが……」
千歳は、窓から外を見る。
そこには、夜虎が二人の両親と手を繋ぎながら嬉しそうに帰っている背中が見えた。
「そうでもしなければ人類にとって乗り越えられない大きな脅威が迫っているように思えてならないのです」
あとがき
各貴族の支配範囲は以下を参考に
https://www.teikokushoin.co.jp/statistics/country/
アメリカは北アメリカと南アメリカを合わせています。
オセアニアはアジアの一部とします。
日本だけが紫電家です。
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