斎藤元彦氏が兵庫県知事に再選、兵庫県民の選択は正しかったのか?

@tataneko

第1話 斎藤元彦氏が兵庫県知事に再選、兵庫県民の選択は正しかったのか?

斎藤元彦氏が兵庫県知事に再選を果たした。


選挙が始まる前は、元県民局長の告発文書問題で、斎藤氏はメディアで袋叩きの状態だった。テレビでは、パワハラやおねだり疑惑を繰り返し報じていたが、選挙期間中は報道しないのが暗黙のルールとなっている。


おそらく、テレビ関係者たちは「まさか再選するとは!」と驚いたことだろう。


そして、「大手メディアの敗北」や「オールドメディアの敗北」という言葉が、テレビ番組でよく使われた。テレビや新聞などの従来のメディアが、SNSなどの新しいメディアに負けたというのである。


リベンジを成し遂げた斎藤氏だったが、再び、公職選挙法に抵触するかどうかで、オールドメディアが騒いでいる。


兵庫県西宮市のPR会社「merchu(メルチュ)」の折田楓代表が、「note」で公開した記事「兵庫県知事選挙における戦略的広報」は、公職選挙法に抵触していることを自供するような内容になっていたからだ。


折田代表によれば、知事選挙で斎藤元彦氏の「広報全般を任せていただいた」としている。

総務省は、業者が報酬を受けて、主体的に選挙活動にかかわることは「公職選挙法に抵触する可能性がある」としている。


折田代表の記事には、知事と打ち合わせする様子や、選挙カーに乗り込み、ライブ配信をする姿も掲載されていた。


これに対して、斎藤知事の代理人弁護士は、 PR会社社長の発信は「盛っておられる」と説明した。


「note」は、社長自身がPR会社のPRのために発信している。自分たちの手柄を大々的に宣伝するために、多かれ少なかれ「盛っておられる」ことは間違いないだろう。斎藤陣営のチェックを受けずに公開したことは、今となっては取り返しがつかないが、少なくとも選挙に関する法律を勉強しておくべきだった。


実は、折田代表は、SNS戦略における「プロ中のプロ」として知られている。

merchu社は過去4年間で、三重県四日市市、広島県、高知県で「SNS等を利用したシティプロモーション業務委託」や「SNS運用支援業務」を随意契約などで受注している。3件の合計額は約1,855万円にもなる。


兵庫県でも、2022年にアプリのリニューアルを担当したと自らPRしており、プロの手腕を発揮していたといえる。また、兵庫県の重要会議の委員でもあり、行政とは浅からぬ関係で、たとえ選挙活動はボランティアだったとしても、見返りがないとは言い切れない。


折田代表は11月末の時点で、記事についての説明はしていない。弁護士が止めているようだ。どのように言い訳すれば、公職選挙法に抵触しないのかを話し合っているのだろう。


折田代表が「記事は盛っていました、斎藤知事再選の一番の立役者は私ですと言いたかったんです」と釈明すれば、斎藤知事は逃げ切れるかもしれない。


しかし、折田代表には問題が残ってしまう。折田代表自身はボランティアで選挙活動をしていたとしても、PR会社の従業員が業務時間中に選挙活動をしていたのなら、折田代表は罪に問われる可能性がある。



さて、斎藤知事は失職前、告発文書は噓八百が書かれており、誹謗中傷性の高い文書で、うわさ話であり、公益通報に当たるとは思っていなかったと主張していた。


元県民局長の告発文書は、公益通報窓口に通報されている。内容の真偽を調査する必要はあっても、公益通報には当たらないと判断することはあってはならない。


しかも、公益通報者保護法が適用されるべきであるのに、犯人を捜し出し、懲戒処分でつるし上げて、その上、自殺に追い込んでいる。それを「手続きに瑕疵はない」と突っぱねて「法的に問題はない」「道義的責任についても問題ない、ちゃんとやってきた」と主張している。


そして、再選後、折田代表の記事は「盛っておられる」と、斎藤知事の代理人弁護士は主張している。


斎藤知事は保身のために、自身に法的な問題はなく、適切にやっているのだから、問題があるとすれば折田代表の記事であると、逃げ切る算段をしている。構図としては告発文書のときと同じといえる。このような人が、本当に知事にふさわしい人物といえるのだろうか?


実際のところ、SNS戦略、運用は折田代表に任せていたのではないだろうか。プロ中のプロの戦略だからこそ、SNSを見た多くの有権者が、オールドメディアの偏向報道にだまされていたと感じ、斎藤元彦氏の知事としての実績を評価して投票したに違いない。


SNSは、斎藤氏のパワハラ、おねだり疑惑のイメージを、既得権益を手放したくない古い体制と戦って、数々の実績を残してきた素晴らしい知事というイメージへ、うまく変換させた。


熱狂ともいえる斎藤フィーバーが巻き起こり、浮動票を取り込んだ斎藤氏が、圧倒的な勝利で知事に返り咲いた。この選択が正しいかどうかは、兵庫県民が今後の県政を見て判断することになる。


ただし、圧倒的な勝利とは書いたが、実はそうとも言えない。

選挙結果を見ると

1位の斎藤元彦氏の得票数は、111万3,911票(得票率:45.21%)

2位の稲村和美氏の得票数は、97万6,637票(得票率:39.64%)


たしかに、10万票以上の差をつけた圧勝といえるが、

3位の清水貴之氏の得票数は、25万8,388票(得票率:10.49%)で、稲村氏と清水氏の得票数を足すと、123万5,025票となり、得票率は50%を超える。


3人とも無所属で立候補したので組織票が機能せず、斎藤氏を支持しない票がまとまらなかった可能性がある。もちろん結果論なので、斎藤知事のトップ当選、圧倒的な勝利は揺るがない。



さて、冒頭で紹介した「大手メディアの敗北」や「オールドメディアの敗北」という言葉に、私は納得していない。特にテレビは、負けて当然だ。


かなり前から、テレビは報道の第一線を自ら退いている。

テレビ番組の編成を見れば、それは明らかだ。今や、報道とワイドショー、バラエティ番組に垣根がなくなっている。伝える内容も、新聞や週刊誌の後追い報道ばかりで、どの放送局でも同じようなことを伝えている。


視聴者にとって、テレビはネットのまとめ記事と大して変わらない。

実際に、ニュースはネット記事を見れば十分だと考えている人が多い。


テレビでは、東京都知事選挙と兵庫県知事選挙において、SNSやインターネットの持つ力を見せつけられた、報道の仕方を見直す必要がある、という議論がある。


はっきり言って、もう手遅れだ。ネットでバズっている動画や、話題になっていることを取り上げて、安易な番組を作っている時点で負けているのだ。学校や職場で、昨日のテレビ番組が話題になることは、もう想像できない。


「大手メディアの敗北」や「オールドメディアの敗北」という言葉は、テレビ関係者の思い上がりでしかない。

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