第73話 昇格試験(2)

 

 サクラ姫は、やはりというか、難無く銀級冒険者に昇格した。

 これで俺達は、堂々とバツーダ帝国に入国する事が出来る。


 そして、次はアマンダさんの番。


 今日のアマンダさんの得物は、最近お気に入りの大剣バスターソードであるようだ。

 相変わらず、大剣を肩に担ぐ姿が格好良く様になっている。


「俺の相手は、エロいねーちゃんかよ」


 見た感じ、エロ親父にしか見えない試験官が、アマンダさんに話しかける。


「ふふふふふ。私はエロいだけじゃないわよ!」


 アマンダさんは、自分がエロいのを自覚してるのか、余裕綽々で言葉を返す。


「じゃあ、俺が体で確かめてやるよ!」


 エロ親父は、試験の開始の合図を無視して、アマンダさんに襲い掛かってきた。


 ズッパ~ン!!


 それを、アマンダさんは、大剣の横っ腹で思いっきりぶっ叩く。


 エロ親父は、見事にぶっ飛ばされ、壁にぶち当たって気絶してしまった。


「えっと……試験前だったけど……良かったかな……」


 アマンダさんは、昇格試験の見届け人である、受付けのお姉さんにお伺いを立てる。


「えっと……アマンダさんの実力は分かりましたから、アマンダさんも金級合格です」


「ヤッタ~!!」


 アマンダさんは、大喜び。

 今迄、バーサーカー化を恐れ、思う存分レベル上げ出来なかったのだ。

 そして、俺と出会い、バーサーカー化を止めるすべを得て、水を得た魚のようにレベル上げに勤しんで居たのだ。


 多分、俺やサクラ姫より、レベル上げを楽しんで居たと思うし。


 まあ、そもそも塔のダンジョンの62階層まで登れる冒険者が、銀級の訳無いのだけどね。


 そんでもって、俺達も晴れてバツーダ帝国に入国出来るのようになったのだが、ここで、アマンダさんが提案して来たのだ。


「どうせなら、塔のダンジョンを完全攻略しとこうよ!

 私達、『銀のカスタネット』も、何か偉業を成し遂げてた方が良いと思うし!

 なんてたって、私達のパーティーには、マール王国のお姫様のサクラちゃんまで居るんだから、将来、冒険者として活動してるサクラちゃんが正体を明かす時が来た時、あの『銀のカスタネット』の経絡秘孔突き少女が、マール王国の第2王女だったのか?!

て、ビックリさせれると思うし!」


「まあ、確かに、『銀のカスタネット』としての偉業も必要ですね。

 私の旦那様であるトトの凄さを、世の中の人達に知らしめる為にも!」


 アマンダさんだけでなく、サクラ姫までも乗って来た。


 俺としては、冒険者として名を知らしめたい欲もあるし、ダンジョン完全攻略は、全ての冒険者の夢でも有るので、やりたく無いと言えば嘘になってしまう。


「じゃあ、やるか! そして、塔のダンジョンを完全攻略したら、ついでに、サクラ姫に呪いをかけやがった、バツーダ帝国宮廷魔術師ヨセフ・アッカマンを、ぶっ殺しに行こう!」


 俺は今後の目標も、ぶち上げてやる。


「エッ? トト……バツーダ帝国の偵察じゃなくて、ヨセフ・アッカマンを、殺しに行っちゃうの?!

 私としては、暫くこのままが良いのだけど……」


 サクラ姫が、訳の分からない事を言いだした。

 サクラ姫は、呪いを早く解きかったのではないのか?

本気に、意味が分からないい。


「でも、呪いなんか早く解きたいよね?」


「あの……この呪い……結構気に入ってると言うか、私、トトと一生離れたくないの……

この、HPとMPが減り続ける呪いが解けちゃったら、私、トトに捨てられちゃうかもしれないんだもん……」


 サクラ姫が、悲しい顔をして俺に言ってくる。


「いやいやいや。俺がサクラ姫を捨てる訳ないだろ?」


「だって、トト、前に呪いが解けたら、自分以外の好きな人と結婚すればいいからな! とか、言ってたでしょ?」


「いや、それは、言葉の綾で、

でももしかして、サクラ姫はその呪いのせいで、自分の人生を諦めてしまってるんじゃないかと思って、

俺と無理に結婚しないといけなと思ってると感じて、

それで……」


「私、トトの事が大好きだよ! 呪いなんか関係ないよ!

 私は、ずっと、トトと生きていきたいの!

 今では、私に呪いを掛けてくたヨセフ・アッカマンに感謝してるぐらいだから。

 ヨセフ・アッカマンが、私の運命の人、トト・カスタネットに会わせてくれたんだもん!」


 サクラ姫は、涙目で、俺に抱きついてきた。

 なんか良く分かんないけど、俺はサクラ姫と両想いになってたみたい。


 アマンダさんは、ウンウンと嬉しそうに頷いてるし。

 このエロビキニアーマーのお姉さんも、本当に人が良い。

 サクラ姫は、一応、恋の仇だと思うのだが、その装備と一緒で、いつでも正々堂々としてるのだ。


 まあ、強敵に遭遇しても、お腹丸出しで戦うんだからね。

 普通の人には考えられないぐらいに、アマンダさんは、お腹丸出しで堂々としてるのだ。


 そして、俺は、そんなアマンダさんやサクラ姫を見て、お人好しの良い人達に愛されてるんだなと、しみじみと思ったのであった。


 ーーー


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