第67話 継母の告白(3)

 

 目撃者によると、トトが街でいつものように手相占いをしてると、突然、高位貴族の馬車と思われる家紋を隠した馬車が、トトが手相占いをしてる路上の前に、横付けしてきたのだとか。


 そして、暫くすると馬車は出発して、そこにはトトの姿が見えなくなっていたのだ。


 街の者達は、結構、慌てた。

 元々、トトの手相占いは、相当な人気だったのだ。

 その当時も、家紋を隠した馬車が来るまでは大繁盛。


 家紋を隠した馬車が来る数分前、突然、黒塗りの鎧を着た兵士が数十人現れて、並んでた者達を無理矢理、退去させたのだ。


 その後、家紋を隠した馬車が来て、トトを攫っていったので、そりゃあ大騒ぎになる。


 誰がトトを連れて行ったのか分かるなら、こんなに大騒ぎにはならない。

 だけれども、家紋を隠してる馬車がトトを連れて行ったのだ。


 しかも黒塗りの鎧を着た、どこの貴族の兵士かも分からない者達を引き連れて。

 これは完全にトトの能力を利用したい高位貴族が、トトを計画的に攫っていったとしか考えられない事態であったのである。


 それを聞いた私は、動揺した。

 やっとトトが、立ち直り自由を手に入れた矢先だったのに。


 私は、すぐさま夫に頼んで、トトを捜索してくれるようにお願いしたのだ。


 トトの捜索は、2日間にも及んだ。

 しかしながら、よっぽど用意周到だったのか、全く足取りを掴めない。


 しかも、怪情報まで出る始末。

 計画的に、トトの居場所を分からないようにするように、攫った貴族がなんらかの工作をしてるようであったのだ。


「これは、我らの力ではトトを探し出すことは無理のようだ。どうやら侯爵家以上の高位貴族、はたまたトトのスキルを狙った他国の者達の犯行と思われる。

 もし、我々がトトを探しだせたとしても、まず我々の力では助け出す事はできないだろう」


 夫は、現実的な言葉を突き付ける。

 だけれども、私はトトの捜索を諦めきれない。トトに懐いてた娘のリーナも、捜索止めないでと、エンエン号泣してる。


 私は、王都に行って、直接王様にトトを探してくれるようにお願いしに行こうとしたのだが、夫に止められてしまった。


 準男爵の夫人程度の者が、王様に直接懇願しに行くなんて恐れ多いと。


 それでも諦めきれずに、私は、少しでもトトの足取りを掴もうと、リーナと2人で街で聴き込みなどを行っていたのだが、数日後、フルート侯爵家の者が、カスタネット準男爵家の屋敷に訪れて、事件の内容が明らかになったのだ。


 なんでも、フルート侯爵の奥様が、お忍びでカスタネット領まで、トトの手相占いをしにやってきて、その余りの占いの精度と、手荒れや、肌荒れまで治す能力に感動し、思わず攫ってしまったとか。

 そして、旦那であるフルート侯爵も、トトの能力に惚れ込んでしまい、トトをフルート侯爵家の養子にしてはどうかという連絡が来たのである。


 そして、ゆくゆくは、フルート侯爵家の娘のうちの誰かと結婚させる予定だという話であった。


 トトにはとても良い話だと思ったが、それにしてもフルート侯爵が許せない。

 例え、自分がこの国の宰相で、高位貴族であったとしても、私の大事な息子を黙って攫うなんて、人としてどうかしてる。

 そんな家の者などに、私の大事な息子のトトを預ける事なんて出来ない!


 私は、王都にあるフルート侯爵の家に、1つでも文句を言ってやろうと、怒鳴り込みに行こうと思ったが、夫に一喝されてトトに会いに行く事はかなわなかった。


 それからも事件は、度々起こる。

 またもや、フルート侯爵の使いが来て、次男のニコルをマール王立学園に編入させる事が出来るなど、トトが子爵様になったとか、はたまた、この国の第2王女であるサクラ・フォン・マールの騎士になったなど、色々驚かされ事が連続して起こるのだ。


 もうこの頃になると、トトは私の自慢の息子である。

 トトを、あれほど虐め抜いていて今更なのだが、私はトトに幸せになって欲しいのだ。


 そして、今迄の事を心から謝りたいと思っている。

 例え、トトが私の事を許してくれなかったとしても、謝る事が、トトに対するケジメだと思うから。

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