第56話 継母OUT
なんか、カスタネット準男爵家を帰る道すがら、サクラ姫は御満悦。
俺の父親に、俺の事を、よしなにお願い致します。と言われたのが、余っ程嬉しかったのだろう。
俺も、カスタネット準男爵家の使用人達に、おめでとうと、握手の嵐。
俺が握手すると嬉しい事を、よく分かってるのだ。
帰りも、カスタネット準男爵領の唯一ある街に行って、久しぶりに手相屋をやったら、人が来過ぎて大繁盛。
勿論、手相の他にも、手荒れやニキビやら、はたまた切り傷から、骨折まで治してやって、街の人々に喜ばれてしまった。
俺的には、スキルポイント集めに協力してくれた、お礼みたいなものなのだけどね。
何故か、当たり前のようにリーナも着いて来てたので、手相占いが終わった後、また、実家に送り届ける羽目になってしまった。
実家に戻って来ると、父親が、もう遅いから実家に泊まるように言ったが、俺は丁重に断った。
だって俺達には、ナナミさんが作った、どこでも扉があるからね。
実家の俺の部屋に、勝手に、どこでも扉を設置して、マールダンジョン31階層にあるパーティーハウスに帰って来たのだが、案の定、リーナも勝手に着いて来てしまった。
仕方が無いので、銀のカスタネットのパーティーメンバーしか開けれない31階層の牢屋の鍵を、リーナにだけは解放出来るようにしてあげる。
俺は、リーナに甘いお兄ちゃんなのである。
継母とかも、俺の部屋に設置した、どこでも扉で、マールダンジョン31階層のパーティーハウスに来れてしまうが、継母は、勿論、牢屋の鍵を開けられないので、入って来られないのだ。
まあ、1000万マール払えば入れるけど。
多分、俺の実家の部屋に、どこでも扉がある事に気付いて、使ってみたら牢屋の中で、牢屋の鍵を開ける為には、1000万必要と書いてるのを見て、キィーー!と、言うのだろう。
その様子を見てみたい気もするが、俺も暇じゃないからね。
「キィーー!!」
というか、俺達が牢屋部屋の外に出た途端、早速、継母の叫び声が聞こえて来てるし。
俺達の様子を逐一見てて、着いて来てたに違いない。
まあ、ほっといても良いのだが、一応、俺1人でマヌケ面を見に行ってみる。
リーナも連れて行っても良かったのだが、母親の変な場面を見せたくないから、リーナはサクラ姫に任せて、パーティーハウスの案内でもして貰う事にする。
「なんなの!コレ! 何で牢屋の中なのよ!?」
牢屋部屋に入ると、継母が、牢屋の鉄柵を両手で掴んで、ガンガンしてるし。
「あの……そこで何をしてるんですか?」
俺は分かってるけど、一応、継母に聞いてみる。
というか、相当、俺を見て慌ててるし。
「ええと……それは……リーナがトトさんの部屋から消えたと、使用人から連絡があったので、トトさんの部屋を調べてみたら知らない扉があったので、入ってみたのよ……」
なんか、継母が必死に言い訳してる。
どう考えても、俺達が、どこでも扉を使った後、すぐに使って来たのはバレバレなのに。
だって、俺達が、どこでも扉を使ってから、まだ、20秒も経ってないのだ。
「えっと、その牢屋を出るには、1000万マール必要ですので、払えるならいつでも自由に、その転移扉を使っても良いですよ」
多分、ナナミさんが命名した、どこでも扉と言っても分からないと思うので、分かりやすく転移扉と、継母に説明する。
「転移扉ですって!!」
流石に、継母も、転移扉と聞いて驚愕している。
そんな大層なものとは、思っていなかったのだろう。
まあ、自分の家に転移扉が設置してあったら、そりゃあ流石に驚くか……
「そう。ここは、マールダンジョンの31階層。我々、『銀のカスタネット』のパーティーハウスの牢屋部屋ですからね。
流石に、部外者に勝手、転移扉を使われてパーティーハウスの中に入れる訳には行きませんから、部外者がパーティーハウスに入るには、1000万必要と設定してるんですよ」
俺は、継母に部外者を強調して、説明してやる。
「部外者って! 私と貴方は、親子でしょ!」
「はい。血の繋がりの無い親子で、ほぼ他人ですよね?」
俺は、正論で攻める。まあ、正論というか、今までやられた事の意趣返しだけど。
「牢屋の鍵は、決して開けてくれないの?」
「自分が、俺に長年して来た事を、自分の胸に手を当てて考えて下さい」
「……」
継母は、多分に心当たりがあるのか、黙りこくってしまう。
俺として、もう話す事はない。どこでも扉の説明はしたし、継母とは、いくら話しても不毛だしね。
俺が、父親とは違って、継母を許す事は、絶対に無いのだ。
理由が無い、理不尽の仕打ちに対しては、理不尽に返すのが俺のやり方。
父親の場合は、それなりの理由があった訳で、継母の場合は、本当にタダの嫌がらせだったし。
「もう、転移扉が閉まっているみたいですけど、転移扉の鍵穴の部分に、もう一度、1万マール金貨を入れれば、元の場所に帰れますので、それでは!」
俺は、黙り込んでしまった、継母が少し可哀想な気もしたが、そのまま牢屋部屋から出てしまったのだ。
その後、大変な事件に発展するとは、思いもよらず……
ーーー
牢屋部屋から出ると、すぐに、ホームツアーをしてるリーナ達に合流する。
待たせて妹のリーナを、心配させる訳にはいかないしね。
「お兄ちゃん! この家、お城みたいだよ!」
だけれども、その心配も余計な心配だったみたい。
リーナは、『銀のカスタネット』のパーティーハウスに興奮しきりだし。
そして、踊り場にある俺達『銀のカスタネット』の肖像画を見つけて、二度ビックリしてるし。
「うわぁ~! お兄ちゃんの肖像画だ! 本物の貴族様の御屋敷みたいだよ!」
一応、リーナも貴族の娘なのに。何言ってるんだろう。
まあ、カスタネット準男爵家の場合、体裁だけ気にする貧乏貴族だから、無駄に屋敷は大きく、使用人も結構、雇ってるんだけど、家を彩る美術品とか、工芸品とか全く置いて無かったんだよね……
庭も基本、畑だし。貴族の御屋敷にありがちな、オシャレな庭園など皆無だし。
有るのは、同じような2つの井戸だけ。
しかも、一方は、水が出ないオチまで付いてるんだよね。
俺的には、可愛いリーナの為だったら、天使リーナの肖像画を増やす事は、やぶさかではないのだけどね。
ーーー
面白かったら、フォロー、☆☆☆押してね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます